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自由研究「海と船とぼく」

子供の「水の世界をジオラマにしたい」という思い、
そして身近なものを使って試行錯誤した自由研究。
島の自然を意識して、こだわりぬいた作品ができました。

1、憧れのジオラマ

子供が小さい頃、夏休みに鉄道博物館に行くのが好きだった。
島には電車がないので、巨大でどこまでも長く連なる車体が動くのが不思議でたまらない様子だった。博物館では、地面に顔を近づけ、下から列車を見上げることをよくやっていた。

特にジオラマコーナーに行くと、見学時間が長かった。その隣で本が読めるくらい。子供はいろんな角度からジオラマを観察し、その世界に、まるで自分がいるかのような想像をしていた。

だから昔からジオラマに憧れを抱いていた。いつか作ってみたいと。小学校の高学年になり、「今年の自由研究は何をやるの?」と聞くと、「ジオラマを作ってみたいんだ」とのこと。試行錯誤の日々が始まった。

2、材料

島には、ほしい物はほとんど売っていない。ほしい物があったら、ネットで購入している。それも、ポチってから14日間も届かないこともある。「今、作りたい!」という時は、材料がないと「それはできないね」と諦めるしかない。そうならないように、大人は、計画的に作りたい日を決めて、それまでに2週間の余裕を見て、ネットで購入する。しかし子供には、突然のひらめきがあり、計画的に準備することは難しい。

こんな島だから、何かを作りたい時のために、日頃から素材集めは念入りにしている。弁当の蓋やダンボール、ビニール、空き箱、流木、石などなど。
しかし、ジオラマにはどんな材料が使えるのか?わからない。島を1周して、ありとあらゆる自然素材を収集し、洗浄や冷凍、乾燥処理をした。「これしかないから、これしか作れない」と残念に思うことがないようにと願った。

3、企画

子供にどんなものを作りたいの?と聞くと、
「タイタニック号に載っていた救命ボートがかっこいいから、それがカナダの湖に浮いていたら、いいなあと思うんだ」とのこと。目が点になった。
子供が考えた風景を、古びた自分の経験から記憶を掘り起こして、なんとかつぎはぎをして、理解してあげたい。その一心で頭をフル活動。
何回か瞬きをしてから、「なるほどねー。いい感じだね。ところで、救命ボートってどんな感じ?」と聞くと、参考文献を本棚から出してきた。

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4、船を作る

本には、船の構造が詳しく書かれていた。素人には、どんな組み立てなのかはわからない。とにかく、骨組みがあって、それに板を貼っていく感じ。
子供は、ダンボールを切り始めた。セロテープで貼っていくけれど、動いてしまう。それをホッチキスで止めることにした。カーブにそってダンボールが足りない。「止めればいいや」といってつぎ足していく。

昔から、いつもプラレールの電車や宇宙戦艦ヤマトの模型を、さまざまな角度から何度も何度も見ていた。今回も同じように、骨組みをあらゆる角度から何度も見ながら、ぎゅうっと指でならして方向を変えていく。なんとか船になった。

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机からコピー用紙を出してきて、細く切り、バットにのりと水を入れて浸した。それを外から貼った。しかし、たよりない。どうすればじょうぶになるのか?悩んでいた。私が、ティッシュならあるよ。貼ってみたら?というと、ティッシュを何枚も重ねて内側に貼っていった。厚みが出たので、こんどは、外側と同じようにコピー用紙を内側にも貼っていった。そして、船の中心の外側に、水切りの山を作った。最後に、枠を縁取るように紙を貼り、一段落。一晩乾かすことにした。どうなるのか、わくわくしていた。

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5、陸を作る

次の日、船は厚みがあり、しっかりした感じになった。喜んでいる中、
「どんな感じの陸を作るの?」と聞くと、「小さい木や草を作って、さしていくような山を、発泡スチロールで作りたいんだ」とのこと。
ちょうど、入港日だったので、商店に配達用の発泡スチロール箱があるかを見に行った。沢山あったので、2枚もらってきた。

「船が大きく見えるようにしたいから、陸はちょっとでいいんだ。」
「だけど高さがあるほうがいい」
「発泡スチロール1枚の高さだと、なんか違う。」
「長方形に切って重ねてみよう」
「2枚、3枚、4枚・・・4枚でいいかな」試行錯誤していた。そして、
「何でくっつけたらいいかな?」と聞いてきた。

本当は、発泡スチロール用のボンドが必要だけれど、家にあるのはセメダイン。発泡スチロールが溶けてしまう。キッチンから楊枝を出してきて、これでくっつかないかな?と渡してみた。子供は、いろいろな方向に刺したり、はさみで長さを切ったりして、「大丈夫そう」との声。ホッとした。4段の発泡スチロールをカッターで削っていく。辺りは、発泡スチロールのくずが飛び散る。見かねて、水で濡らしたぞうきんを渡した。「形ができた!」と満足げ。

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色をつけたいというので、布用の絵の具を渡した。

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「水彩色鉛筆の絵をぼかした時に使った棒と綿をかして」というので、
脱脂綿+ガーゼ+割り箸+針金
を出して、作り方を伝えた。

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それを作って、絵の具をつけて、ポンポンっと色をつけていく。顔は真剣。「ちょっと明るいな」「もうちょっと緑だな」・・・と。
しかし、気に入る緑色にならない。黄色と青を混ぜて・・・黒を少し・・・
私が持っているのは、日本の伝統色。なかなか混ぜても思いどおりの色にならない。これしかないので仕方ない。沢山色を重ね、なんとか納得。

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6、海を作る

「ボートは、水の中に入っているの?」それとも、「水の上に乗っているの?」と聞くと、子供は、「浮いているようにしたいんだ」とのこと。どうやって水に浮いた状態を作るのか?私にはわからなかった。あるもので、いろいろ試してみようということになった。

1,絵の具
2,絵の具+ビニール
3,折り紙+ビニール+ボンド
4,折り紙+クリアフォルダ
5,銀紙+青マジック
6,銀紙+クリアファイル+(ボンド+絵の具)

子供の反応は、
1,筆のあとが気になる
2,ちょっとは水って感じだけど、なんか違う
3,ボンドが透明でいいね!だけど、青の色がちょっと・・
4,色がちょっと濃い
5,銀紙は光がきれい、でも青マジックの描いたあとがなあ・・
6,ボンド+絵の具は水がゆれている感じでいいね、でも透明じゃないなあ

「じゃあ、どの組み合わせもだめなの?」と聞くと、机からガサガサと何やら探している。セロファンだった。去年、ランタンを作った時のセロファンが余っていた。青と水色は使っていなかったため、きれいなまま残っている。水色を取り出して、いろいろ重ねてみる。

結論は、銀紙+セロファン。
銀紙のしわが、水面の揺れに見えて、それにセロファンを重ねたら、水面の感じが出せたから。色はこれでいいのかとじっくり考えた結果、「やっぱり、湖ではなくて海にしようと思う」「南島の海の色って感じじゃない?」と聞いてくるので、「確かに!こうゆう色をしているよね」と言い、島の自然に目をむけてくれたことに喜びを感じた。

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しかし、「浮くについてはどうする?」と聞くと、またThinking time。
私が「穴をあけるの?」と聞くと、「セロファンに穴をあけたら、はじっこが切れちゃうよ」と言われ撃沈。透明なもので船をささえるものは・・・。
ペットボトルを切った輪っかを見て、「これでいけるかも」とのこと。輪っかを2つ。切り込みを入れて、銀紙→輪っか→セロファン→船と置いてみた。あらゆる角度から見ている。「これでいいや」と納得の顔。

「Help!」という声が聞こえてきたのは、陸が水面から出るように、セロファンを切るところ。ここは手助けをした。カッターボードの1cmのマス目の上に陸を置き、上から見て、水面から出る部分の等高線を方眼用紙に書き写していく。できた線を3mmくらい余白ができるように切り取り、セロファンをあてて切り抜く。そして、セロファンをはめながら、微調整して余分な部分を切り取っていく。

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7、細々とした道具をつくる

ここからは、ルンルン気分で鼻歌を歌いながら、作業をしていた。
オール作りは、割り箸をカッターで削り、古い感じに色をつけ、ブレードは、切ったダンボールに黄色をつけて、オールとつなげた。
工具箱から金具を出して、オールをはめる輪をつくり、
船を接岸する時に使うロープは、タコ糸に色をつけ、金具は針金で作った。
船の内側を色づけし、座る場所を作って完成。

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8、収納する箱をつくる

「ジオラマは、来年も作るから、使い回せる箱にしよう。」とのこと。
そうなるように、A4サイズのダンボール5枚で底と壁を作り、その中に作ったジオラマ作品を配置し、両面テープで固定した。
その内箱が入るように、掛け時計を買った時の箱を内箱の大きさに合わせて切り、ちょっと切るのを失敗したようだったので、黒色紙を貼るのを手伝った。完成!

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来年は、本土に買い物に行って、お小遣いでレジンをGETするらしい。そして、水面や水の深さを完璧に表現する超大作にするという。夢は壮大。私は、「ありあわせの材料で作った作品も素敵だと思うよ」と伝えた。これで夏休みの宿題が全て終わった。




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