heldioリスナーに届けるしおのはなし#10 令和6年5月25日 うみしおの理念について

 先日のheldio#1088「企業の対外的メッセージ」において、Manaさんから企業の対外的メッセージについて2,000字以内でまとめよ、という課題が出た?ので上記リンクのnote記事でうみしおの理念をご紹介したが、その理念の背景について述べていなかったのでここで述べさせていただく。このシリーズとも同じ内容っぽいのでいいっしょね。
 うみしおの理念を再掲すると、「日本の食文化を守り、伝える」。なぜこの理念を掲げたのか?その理由は次の三つ。①日本人の米を主食とする食事のあり様から、②日本の伝統食の要・発酵食の特性から、③日本人のミネラルの供給源が塩であることから。
 以下、手短かに述べてみよう。

①米を主食(穀物中心の食事)とするから
 日本には主食という概念があるように、食事の中心を米に置き、その米をいかに美味しく食べるか?という視点で副食を作り出してきた。これはカリウムの多量摂取(穀類、野菜、果物類には多くのカリウムが含まれる)を意味しており、その量に見合うだけのナトリウム摂取が求められることになる。(カリウムとナトリウムがお互いを排出し合う「拮抗関係」にあるため)よって、日本人は肉を多く食べる西欧人よりもたくさんの塩分を必要としてきた。言い換えれば、日本人の食を支えてきたのは塩。これが一つの理由である。

 関連する回のリンクをば。

②発酵食において塩が欠かせないから
 日本の伝統食といえば、味噌、醤油、納豆などの発酵食である。日本は高温多湿ゆえに発酵のための微生物の繁殖が盛んであると同時に、腐敗をもたらす微生物も大いに繁殖する。この腐敗の原因となる微生物の繁殖を抑えかつ、発酵を進めるために不可欠なのが塩。幸い発酵をもたらす微生物は塩に強いものが多い。つまり、日本の発酵食文化を支えてきたのは塩である。ちなみに、ヨーロッパなどの低湿地帯では微生物が繁殖しにくいので発酵食(ヨーグルトなど)で塩はほとんど使用されない。

③日本人のミネラルの供給源が塩であることから
 人間が生きていく上でミネラル(鉱物)の摂取は必須である。そのミネラルをどこから摂るか?大陸の場合は水、ミネラルを豊富に含む硬水から摂取できる。しかし、日本の水は軟水である、ミネラルが非常に少ない。よって、海水を蒸発させた海水塩から必要なミネラルを摂ってきた。ちなみに、大陸で取れる岩塩の成分は99%塩化ナトリウム(その理由はいつかまた)。塩から必要なミネラルを摂ることは期待できない。食文化というものは全体を見なければわからない。
 追って、各々について述べていきたい。


(参考図書)
小泉武夫「発酵」(中公新書)
小倉ヒラク「発酵文化人類学」
樋口清之「梅干と日本刀」


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