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グアテマラ SHB 中深煎; Tシャツをローストする

重さがあるけど引っ掛かりのない香り。豆の香りの奥にかすかな焙煎香。しっとりとしていてマットで、後半に曇り空の夕暮れの直前に日が差すように透明な一瞬がある。クリアな酸味があって、切れた後はすこし締まって、土のニュアンスで落ち着く。静かだけどドラマチックな味わいだ。少し冷めると、コクが深まる。とくに後口の奥行きの深さが心にくる。

SHBとは strictly hard beanの意味。標高1,200m以上の土地で栽培された豆のことで、ゆっくりと育つためより高い栄養分が蓄積される。味わいや香りも豊かになる。SHG = strictly hight grown とも呼ばれる。

グアテマラのコーヒーを飲むと、1990年代の後半に数週間グアテマラに滞在したことを思い出す。かつての首都アンティグア・グアテマラに逗留しながら、山に登ったり湖のなかの温泉を訪れたりしたものだ。

市内で元ヒッピーの米国人が経営するコーヒーショップがたいそう気に入って、通った。ここで本格的にコーヒーの味を覚えた。アンティグア・グアテマラを離れる前に挨拶に立ち寄ったとき、ずっと気になっていたマヤ文字のTシャツを求めた。店主は白いTシャツを出してきたので、「いや、壁にかかっているアイボリーの色がほしいんだ」と頼むも、「これは焙煎器から出る煙の色がついてるんだよ」との回答。どうしてもこの色がほしかったので、「ではこの白いTシャツも焙煎してくださいな」とお願いしたら、店にいた皆が笑った。

2021年1月 カフェ・デ・コラソン(京都)にて

参考文献


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