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【エッセイ】母のおむすび

 夏になると、母が作ってくれたおむすびのことを思い出す。私や弟が小学生の頃、夏休みになると母は三角の塩むすびに海苔を巻いたものを良く作ってくれた。そのおむすびが、味付けは塩だけなのに何故かものすごくおいしかった。私がおなかすいたなと思って台所に行くとテーブルの上に置いてあることもあったし、お昼ご飯の時に母が作ってくれたこともあった。おかずは卵焼きとかシンプルなもので、だからこそおむすびのおいしさが良く分かった。

 私と弟は海苔がぱりっとしているものが好きだったので、母は私達がおむすびを食べる直前に海苔を巻いてくれることも嬉しかった。市民プールに行く時も、母が作ってくれたおむすびを持って行った。海苔は母がビニール袋に入れてくれたので、おむすびを食べる直前に巻くことが出来た。その時はおむすびとは別に梅干しが添えてあることが多かった。おむすびを一口食べて、梅を少し食べる。これがとてもおいしかった。

 私は子供時代を終えて、大人になった。最近、思い出を良く思い返す。そのひとつに、母のおむすびがある。大人になって自分でおむすびを作ってみても、母の作ったおむすびと同じ味にはならなかった。シンプルな塩と海苔のおむすびなのに。不思議だ。

 また、おむすびを作ってみよう。

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