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おばあちゃんが帰ってきた日、わたしたちは家の庭で焼肉をした


 この前のおばあちゃんの話の続き。

https://note.com/uminotuge/n/n61240e7bcdf4

少し時間を遡って、おばあちゃんが亡くなった時のこと。

私は三姉妹で皆、実家を出ている。いる場所もバラバラで、私はお盆などの一般的な長期休暇が休みじゃない職業なので決まって定期的に家族みんなで集まる事もなかなか難しかった。

私と夫が初夏に長期休暇を取ったタイミングで妹たちも実家に帰ってきてくれることになり、久しぶりに皆で集まることにしていた。

実家に帰る数日前、認知症があり脳梗塞も2回ほどしていて介護を受け頭がはっきりしないながらも、元気に施設で暮らしていたおばあちゃんは調子を崩した。おそらく心臓の血管が詰まってるんじゃないかと医師に言われたと母からきいた。

カテーテルの治療をすれば助かる可能性はあるが、90を超えたおばあちゃんには負担が大きく、治療をしてもまた元気になって施設に戻れるかは分からない。母は治療はせずにこのまま穏やかに過ごす選択をした。


私の家族、その次の日に帰った1番下の妹も施設で会うことができた。おばあちゃんは私たちが集まるのを知っていたかのように、そのタイミングで調子を崩した。

家族みんなが挨拶を終えた次の日の朝、付き添っていた母に看取られて祖母は亡くなった。


とここまではいい話なのだが、ちょっと普通じゃない我が家。

実はこの一家集合、もともとバーベキューをする予定にしていて、私の家族が実家に向かう道すがらお土産にいい肉を買って皆で食べるつもりにしていた。

この肉どうしよう、、となる私たち。さすがに予約していたデイキャンプ場はキャンセルしたが、おばあちゃんの自宅には庭がある。炭なども準備してある。

やろうか、焼肉。となる私たち。私の父もいいやろ、と言う。かくして、今から故人が戻ってくる家の庭で肉を焼くという常識的に考えるととんでもないことをする私たち。しかも小雨が降りだして、私の夫がタープを張って肉を焼き、縁側で私や妹たち、子どもたち、私の父親が肉を食べるというわちゃわちゃ具合だった。ただ、楽しかった。肉も美味しかった。

昔、おじいちゃんもいた頃、おばあちゃんとうちの家族で夏に庭で焼肉をしたのを思い出した。懐かしかった。

実家の庭はすごく狭いので、広い芝生のおばあちゃんの家の庭が私の家族はみんな大好きだった。

おばあちゃんより一足先に施設から母が帰ってきた。肉、食べる?と遠慮がちに訊くと母は、ほな貰おうかな、と言った。食べるんかい。

美味しいわ、と言いながら食べる母を見て、おばあちゃんが産み育てた私のお母さんは強いよ、と思った。そんな母に育てられた私もなかなか強い。

今日はそんなおばあちゃんが亡くなって2回目の命日。またあの庭でみんなでご飯を食べたい。


ちなみに怒涛の食欲で焼き肉を食べ、さすがに葬儀会社の車でおばあちゃんが家に帰ってくるときにはきれいに片付けた。が、ぬぐいきれない焼き肉臭がしたと思われ、葬儀会社の人は(もしかしたらおばあちゃんも)おや?と思ったに違いない。


ちょっと普通じゃないかもしれないけど、家族が集まってあんな風に過ごす優しい時間をおばあちゃんがくれたような、そんな気がしている。