元・須磨海浜水族園で飼育員歴25年、神戸の海を愛す大鹿達弥さんにインタビュー!監修動画の見所を聞いてみた
海のそなえ推進プロジェクトでは今年初の試みとして、海の危険生物にスポットを当てた動画を制作しました。その動画を監修してくださったのが、元神戸市立須磨海浜水族園で25年間勤務された大鹿達弥さん。
大鹿さん監修の動画は、体感5分。サクサクっと海の生物を学べて笑えて、2本見ても体感10分です(※感じ方には個人差があります)。
▼「記事を読む前に動画を見たい!」という方はこちらから!
事務局磯野がインタビューをさせていただくと、知識量が豊富なだけでなく、水族館一筋のアツイ人だということも判明。おもしろくって、海の生物が好きで、水族館の事を考えていて。そんな大鹿さんの人物像に迫るインタビュー記事にしたいなと思って、記事をまとめました。
ぜひ最後までお読みください!
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(プロフィール)
大鹿達弥さん
1972年神戸市生まれ、神戸市育ち。18歳のときに神戸市の水族専門職に採用された。運営者の変更に伴い、神戸市立須磨海浜水族園を2020年3月で退園。現在は株式会社アクアメントにて、四国水族館などのトータルマネジメントを行う他、イベントなどにも出演中。
倍率140倍!若き大鹿さんが水族館職員になったきっかけ
―25年間勤務された須磨海浜水族園(以下、スマスイ)を、2020年3月に退職されたとお聞きしました。まずはスマスイで働くことになったきっかけを教えてください。
大鹿:
18歳のとき、生物に関する仕事に就きたいと思っていて、畜産関係の大学に進学したんです。でもふと「本当に畜産業でいいのか?」という思いが頭をよぎり、中退という道を選びました。大学生活は5日間でしたね。中退といってもいいものか…(笑)。
その後一般企業に就職したんですけど、どうしてもしっくり来ない。たまたま神戸市で水族園の職員を募集していたのを見つけました。生物全般に興味がありましたし、「地元の水族園やし」と思って受けてみたら、受かったんです。タイミングも良かったと思いますが、それがきっかけです。
▲神戸市立須磨水族園(通称スマスイ)外観、大きな三角屋根が目印
―水族館職員の試験はかなりの倍率だったとのことですが…。
大鹿:
そうですね、受験者数は140人くらいいたと聞いてます。その中で採用されたのは僕一人。後から聞いて分かったんですが、当時の職員さんの高年齢化が進んでいて、「とにかく若いヤツを採用しろ!」という狙いだったらしいんですね。
いろんなタイミングが重なってのスタートになりましたが、そこからは天職だと思えるほどハマりました。「飼育員って楽しそう」ってイメージがありますよね。まったくその通りで、仕事内容はとにかく楽しいことだらけ!
今でも思いますが、本当に楽しくやりがいあるしごとでしたよ。
尽きない海洋生物への興味!「知らん生物、うじゃうじゃいます」
―大鹿さんは、どういったところに海の生物の魅力を感じるのですか?
大鹿:
海洋生物って、とにかく種類が多いじゃないですか。25年水族館に勤めようが、多分触れられているのってほんの一握りです。もうね、キリがない。
魚、貝、無脊椎動物、海藻…、星の数ほど種類が多いんですよ。淡水にも視野を広げれば、さらにたくさんの生物がいる。図鑑などの書籍を見てもらえば分かりますが、段違いに冊数や厚さがあります。
興味が尽きない。それが魅力ですね。今でも初めてみる種類の生物がうじゃうじゃいますから。
ふと「この種は、生物循環において何かの役に立つのか?」と疑問に思うときもありますけど、新種発見のニュースを聞くと「面白いな〜」って興味を持っちゃうんですよね。とんでもない世界に足を突っ込んでしまったなとは思っています(笑)。
▲2018年12月31日のカウントダウン年越しイベントで行なわれたイルカライブ
大鹿さんだけが知っている、大阪湾の中のこと
―大鹿さんをもっと知りたいので、「海」にまつわるエピソードをひとつ教えてください!
大鹿:
そうですねえ。
仕事の一環で、大阪湾に20年弱くらい潜っていました。海の中の装置をメンテナンスする業務があって、若手の僕が担当だったんです。でもただ潜るだけじゃつまらんなと思って、一緒に動画の撮影もしていました。
潜る前、大阪湾は「汚い」とか「生き物なんておらん」って周りの職員からも言われていたんですけど、そんなことはなくて、最終的な記録では190種ほどの生物が確認できました。結構いろんな生物がおったんですよ。
25年の間には阪神淡路大震災があったんですけど、そのときの海が印象的でしたね。地震で装置が壊れてしまったのもあって、震災後1週間くらい後に潜ったんですが、
いろんな変化が起きていました。まず地形が変わっていて、そして、まったく海の生物がいなくて音がしなかった。不気味でした。どこに行ったのか、死んでしまったのか、何も解明はされていないんですけど、当時はほんま、どうなるんやろかと思いましたね。数年かかって、やっと生物が戻ってきました。
―生き物たちは、死んでしまったんですかね…?
大鹿:
それが今でも全然、分かっていないんです。海の中って、普段見えないので、本当に分からないことだらけなんですよね。
そんな事もあったりして、透明度はそんなに高くない海ですけど、生物の移り変わりも含め、同じ海をずっと見続けられたのは貴重で面白い経験でした。
厳選!大鹿さんが好きな&気になる海の生物
―ありとあらゆる海の生物に触れてきたであろう大鹿さんが「好き、気になる」と感じる海の生物を教えてください。
<気になる生物1・ウミガメ>
大好き…という訳ではないんですけど、若い頃にウミガメの調査をしていたので、愛着があります。好きではないけど、なんとなく離れられない(笑)。
<気になる生物2・ウミケムシ>
ほとんどの人が「ウミケムシ気持ち悪い」って反応なので、可哀相になって逆に気になる存在です。自然環境の循環の中では役立っているんでしょうけど、なぜあの姿なのかと。でもウミケムシって、ほんまに見た目が毛虫で、動きが独特で、見ていて本当に飽きないんですよ。
▲「海の危険生物 水族館編対処法マニュアル」より、動く姿は必見!
僕らが楽しいと思える「未来の水族館」を考え続けたい
―今後の活動の展望をお聞かせください。
大鹿:
まだ新しい仕事に就いて数ヶ月なのでしっかり固まっている訳ではないですけど、水族館を退職した仲間たちと一緒に、僕らが楽しいと思える「新しい水族館の形」を模索中です。
水族館は今、二極化しています。学びの要素があるところ、エンターテイメント要素の強いところ。正直、似たり寄ったりやなあと思うんで、次の世代へ向け時代に合った水族館、若い世代に望まれるような水族館を考え始めたいなと水族館退職組で話しています。
展示方法以外にも、環境や展示できる生物の問題も出てきているので、全てを鑑み、長年水族館に勤務した僕たちだからこそできる事をやっていきたいですね。
日本は世界的に見ても、人口に対する水族館数の割合がぶっちぎりで高いらしいんです。子どもの頃の社会科見学や家族での行楽とか、生活の中で何かしら関わってきている。だから、子どもの頃から海の生物や海に興味をもってもらい、目を向けてもらえるような水族館、企画、仕掛けを考え続けていきたいです。
お医者さんといっしょに、徹底的に対処方法を教えてもらうイベントなんかもいいかもな〜。実際、お医者さんも、海の生物については詳しくない方も多いんで、一緒に勉強しながらとか(笑)。
▲スマスイを舞台にした映画「スマスイ」公開記念イベントにて(中央右側あたりにいるのが大鹿さん)
動画の見どころ&読者の方へメッセージ
―大鹿さんに監修いただいた動画は、海へ行ったときに役に立つ情報が満載です。改めて、海の危険生物と関わる際に心掛けていた方が良いことはなんでしょうか?
大鹿:
危険生物は絶対にいるし、対策をしていても事故は起きてしまうので、各自が知識を持っておくことが本当に重要です。
「トゲがある、毒があるので危険」というアナウンスはあっても、その先の対処方法まで知っている人は意外と少ない。もちろん、刺されたり噛まれたりしないようにするのも大事なので、とにかく正しい知識を頭に入れて欲しいと思いますね。
動画ではできるだけ内容をかみ砕いて、お子さんにも分かりやすいように言葉を選んで説明しています。動画は入門編という意識を持っていただき、見ているだけで学べる動画から、知識を入れていってください。多分知らないことだらけだと思うんで、まずはお子さんと一緒に観てください。勿論、お子さんにだけで観てもらっても構いません(笑)。
―親子で一緒に、見て欲しいですよね!
大鹿:
いやもう、子どもだけで良いです(笑)。
というのは半分冗談ですけど、おそらく「海の危険生物」というテーマは、大人以上に子どもの方が興味を持ちやすいと思うんです。なので、できるだけ多くの子どもたちに見てもらって、眠っていた海への関心を呼び起こせたらなと思ってます。
お待ちかね、大鹿さん監修動画はこちら!
フィールド編
(大鹿さんコメント)
ほとんどの方が磯へ行ったことがないと思うので、「磯へ行ってみたいな〜」と思えるように仕上げてあります。撮影日の雨嵐が嘘のように編集されているのも見どころ。
水族館編
(大鹿さんコメント)
水族館には必ずといっていいほど、危険生物も展示しているので、ぜひ水族館へ行った際は、目を向けてみてほしいです。
マニュアル編(沖編、磯編、砂浜編)
(大鹿さんコメント)
磯、沖、砂浜と、危険生物は意外と色んなところにいるんですよ。なかなか遭遇しないレアなヤツもいますが、一度見てみてください。
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みっちり1時間のインタビュー、ありがとうございました!
未来の水族館のお話や、飼育員時代に大阪湾に潜り続けたお話など、知られざるエピソードをたくさん聞かせていただきました。
丁寧に言葉を選び、真摯に語ってくれる大鹿さんは、動画でのギャグを軽快に繰り出していた様子とはまた違い、子どもたちへ海の魅力を伝えていきたいという気持ちに溢れていました。未来の水族館って、どういう形なのでしょうか。
それでは皆さん、ぜひ動画を観てください!お子さんがいる方は、お子さんと一緒に!執筆担当は動画&インタビューを経て、大鹿さんファンになっている磯野でした。
<紹介記事も書いています!ご一読を>
トゲを触っちゃダメな理由が分かる、「海の危険生物 砂浜&磯場編」ムービー完成
さわるとキケン!をさわってみるムービー、「海の危険生物 毒・武器・毒&トゲ編」紹介
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