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片想いの時間


さて。
今日も 出掛け先での 喫茶店探し。

昔 馴染みのある地域だったので
行きたい喫茶店には
だいたいのあたりをつけていたのだけれど。

なぜか
地図で目に止まった
かわいらしい名前の本屋さんが気になって。
コーヒーも飲めるカフェスペースもあるらしいので
そちらに足を向けてみることにした。



いい本屋さんでは
涼しい顔をしながらも
内心 浮き浮きして仕方がない。
初めての本屋さんなので
ひと通り棚の前を通り 眺める。
あれも、これも、と気になって
手に取って そっと覗いてみる。
たくさん連れ帰るわけにはいかない。
本屋さんの魔法で 魅力的に見えてはいるものの
自分とは合わない場合もあるんだぞ、と
言い聞かせてみるものの
そんなのは読んでみないとわからない、という
当たり前の反論にやられてしまう。

1時間以上 浮遊していたのではないだろうか。

この時間も 悩ましき素敵な時間で
さりげなく ただ居てくれたスタッフさんや空間に
ありがとう、と 心の中で感謝する。

2冊の本を選んで購入し
カフェスペースでコーヒーを頼む。

ハンドドリップされた
ブレンドコーヒーが届く。
ホッと ひと息。

さて。
本を開こうか。

いや。
だけど。

もうちょっと 待とう。


本は 読み始める前
このときが 
いちばん最高かもしれないからだ。

まだ 片想いの時間。

開いてみたら
実は 文体が合わなくて読みにくかったり
思ったよりは おもしろくなかったり
さらっと 通り過ぎてしまったり
難しくて なかなか読み進められなかったり
そんなことも あるかもしれない。

もちろん
素晴らしくて
自分のために存在してくれたんじゃないか
と思えるような言葉に出逢えたり
人生を変えるような瞬間も 待っているかもしれない。
それを 求めて 本を開くのだけど。


そんな 理想的な両想いは 奇跡だ。

片想いの時間は 裏切らない。



カフェスペースは 道路に面していて
テラス席もあり 外に開けていた。
人通りも わりと多く
自転車や車、車椅子も通り過ぎる。

人の往来を 脚元だけの視界で見ていると
なかなか おもしろいな、と 
しばらく ぼんやり眺めている。

扉を開け放しているので 蝉の鳴き声が よく響く。
木の葉が サワサワ揺れている。
小さな虫が さっきから 目の前をウロウロしている。


本は 目の前に重ねたまま。


テーブルの端に
1時間程度の利用で、と
お願いの文章が書かれている。

今日 買った本を開くことは やめることにした。


片想いの時間は続く。

たまに
片想いだけで 満足してしまって
いつまでも開かないままの本がある。
そうならないように。


いい喫茶店を探して、本を読もう。



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