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ケモノの医者の体験談 Vol.13 就活秘話 子持ちで働く難しさ

獣医師は現在では女性に人気の職業で、20年ほど前から獣医大の男子学生と女子学生の数の逆転現象が起きはじめていました。

ただ、開業となると女性にはさまざまな理由やハードルがあるからか、まだまだ男性院長のほうが多いです。

実はY動物病院で働いていて感じたことの1つに、休診日や診療時間、あるいは手術時間について女性は独身でないと時間のやりくりが厳しいなあということがありました。

日曜日は休めない

動物病院は当時、木曜休診のところが圧倒的に多く、サービス業ということもあって日曜日休みのところはあまりありませんでした。

土日のどちらも休めないとなると、同じように平日は毎日通勤している夫に子供の世話をまるまるお願いすることになります。

夫としては土日くらい休みたいのに休めないイラ立ちが増え、妻としては夫だと十分に子供の面倒をみれていないかもしれないと(申し訳ないが)、疑心暗鬼になります。

帰宅後、たまたまのタイミングでオムツが濡れていただけかもしれないのに、なんでちゃんと交換してあげないの?!と責めてしまうとか。

ほとんどの動物病院は人間のお医者さんと同じように午前・午後にわけた診療形態をとっています。

午前の診療時間は9時~12時まで、午後は15時か16時~19時または20時までというところが多く、お昼休みが長い設定になっています。

お昼休みは手術などの時間になりますが、
予定がなければお昼休みは自由行動可能な病院もあります。

ですが多くは院内に留まる“縛り”があるため、
掃除や雑用をしたり何かしら時間をつぶします。

教育に前向きな病院だと勉強時間にあてさせてくれますが、給料払ってるのに自分の勉強をするとは何事だ!と、本を読むことさえ許されなかった病院もあります。

男性獣医師は夜がお好き

人の病院と違うのは、動物病院では小さなところでも院内で手術をするということです。簡単な手術の場合はお昼休みの時間に済ませますが、ちょっと時間がかかりそうな手術となると午後の診療時間が終わってから手術を始めることもしばしばです。ただしそれは残業にはあたらず、小さな病院ほど手当などでないところが多いです。

私が勤めたとある男性院長の動物病院では、手術を夜に行うことが多い傾向にありました。院長は手術が終わって疲れて帰宅しても奥さんが用意した温かいご飯とお風呂が待っているけれど、私たちスタッフ陣はそうはいかないのでちょっとは配慮してくれよ…と思ったものです。

私のように子持ちの場合、夜オペになると子供は前日か当日の朝に実家に預けておかないと保育先へのお迎え時間に間に合いません。私の場合は実家の両親が協力してくれましたが、それがないと通常勤務はまずできないでしょう。

雇用者側からすれば、人手が必要な肝心な時に働けないなら雇う意味がないわけで、子持ちの新人獣医師が就職難なのは当然だなということになります。

オペが終わって子供を実家に迎えに行って、子供は既にご飯を食べさせてもらっていたものの、家に戻れば夫の食事や洗濯などは帰ってからやらなければならず、そして次の日もまた家事も仕事もあるわけで。

獣医の場合は古くから男性社会の職業だったからこその習慣なのだと思いますが、他のさまざまな分野の職業でも、子持ちの女性が働くには厳しすぎる現実が今でもあると思います。

あれから20年たち、最近は木曜日以外のお休みも増え、女性院長の病院では圧倒的に日曜日休みが多いです。例え病院が年中無休でもスタッフは完全週休2日制であったり、夜勤の翌日は休暇をとらせ、個人経営でも雇用保険や社会保険などが完備されている病院も増えました。

すさんだ心で負のスパイラルに

当時は、土日に夫に子供を1人でみてもらっている後ろめたさ、しかしながら世話をしているのではなく「見てるだけ」のくせに偉そうな夫(と思ってしまう)、そして普段の育児と家事は圧倒的に私のワンオペ、たまには洗濯くらいお願いしなくてもやってくれよというイラ立ちなど、不満が徐々に増えてきました。

今思えば夫もまだ新卒、駆け出しで仕事のストレスもあった中、せっかくの休みに子供を見ることとか、平日の夜に私が遅くなることとか、そのくせ大してお給料をもらっていないこととかに納得がいかなかったのかもしれません。

私も夫に強く出られるほど経済面では対等でないことはわかっていました。でも子供は自分たちの子なんだから、夫婦ともに育てていくのが当たり前なんだから、夫も少しずつ成長してくれると信じていました。

Y動物病院で働き始めてから、土日に私が出勤している間になんと、夫が私が用意した子供のご飯を温めずに冷たいままあげていたり、自分本位の理不尽な理由でちょっとしたことで子供に暴言を吐いたり、蹴ったり手をあげたりするようになりました。

このままでは色んな状況が悪化してしまうと思い、子供を守ることが一番の目的でしたが、夫の休息も確かに必要だと感じたので、私が働きだしてかなり早い段階で土日は必ず実家に子供を預けることになりました。

お金と時間はどちらもある程度余裕がないと、心は荒んでいくんだなという現実を知った時期でした。綺麗事だけでは子育ても仕事も家庭もうまくいかない。

実家の両親も働いていましたが、父は時間の自由が利く役職でもあったので本当に助かりました。私たちが子供の頃はとても忙しい父親だったので、父も子育て(孫育て)は初めてでしたが、手をあげたりすることがない絶対の信頼をおいてみてもらうことができ、さらに子育てのプロの母にも任せられることで安心して仕事ができました。

2人目出産となり父が仕事を辞めてくれはしたものの、なかなか2人いっぺんにみるのは年寄りには大変。しかも下の子が風邪を引きがちだったこともあり、やはり自分がベストな状態で働けるよう努力するべきだと考えました。

ちなみに2022年、コロナ禍の今思えば風邪っぴきの子供を高齢の親に看てもらうのは本当はとんでもないことだったんですね。当時、両親ともにまだまだ若いシニアだったのであまり気にしていませんでした(汗)。

さて、

女性で子持ち、臨床経験もあまりない。
それでもなんとか働ける病院があるはず。

まずは日曜日に休める病院、そして夫より早く帰って来られるよう、夜の残業が少ない病院を探すことにしました。

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