掌編小説「何も出来ない自分へ」
夜に君がいつまでも泣いているから、僕は助けたいと思った。君は「私はいなくなるしかない」と言うから。
君は幼い頃、いつも無邪気だった。
何にだって目を輝かせて、憧れて。新しいことに恐れず、何もかもを楽しんでいた。
目に映る全てのものが、輝いていた。
対して、
僕は何もかもを怖がった。未来も今も。
やりたいことだって言えない。やりたいことなどなかったから。見つからなかったから。
思い叫べば、誰か傷つけるから。それなら、僕は何も言わない方がいいのだと。
なのに、僕は君が羨ましかった。
僕は、誰かを傷つけようとも、思い叫びたかったんだ。君がいつもそうしていたように。
だから、僕はいつか君のようになるため。
僕が君に憧れて、救われたように。
今、自分がやりたいことを必死に探した。
なのに、君は気づくと何もかもを諦めていた。
どうせ、何をやっても叶わない。
どうせ、自分がいても変わらない。
やりたいことも叶わない。夢は叶わない。
だって、私より素晴らしい人はいくらでもいる。私じゃなくていい。
何を願っても叶わない。何も願えなくなった。
何も出来なくなった。
何も出来ないなら。
…何も出来ない私は、いなくなるしかない。
いなくなればいいんだ。でもそれだって出来ない。
そう言いながら、君はいつも夜に泣いていた。
それでも僕は、何も出来なくなった君に、いつか願いは叶う、と。
それでも、いなくなれないのは、まだ諦めてないからだろう?と。
僕はまだ、将来、やりたいことなどない。それでも、いつか見つけたい。
見つけること、それが今、僕のやりたいことだ。
怖い。怖くてしょうがない。だって、酷いことを言われるかもしれない。辛いかもしれない。逆に誰かを傷つけるかもしれない。死ぬことだってきっと怖くて出来ない。
それでも、今生きているなら、やりたいことをしようと。
だから、ねえ、君も一緒に見つけてみようよ。
何も出来ないことはないんだよ。
だって、君は過去に出来ていたのだから。
いなくなりたいなんて、言わないで。
君がやってみたいことは?
僕も一緒に考えるから、ゆっくりと見つけていこうよ。