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新聞社を辞めて、noteを始めました。 「働く上での5つのルール」が見えたから


先月末、28年間勤めた新聞社を早期退職しました。
いわゆる、選択定年です。

「新聞社を辞めるなんて、もったいない」。
私が入社した1992年なら、そう言われたでしょう。
でも今、メディアをめぐる環境は大きく変わり、そう思う人もいるかもしれないけれど、今回、「いよいよですね」「次は何をやるんですか?」という声も多かった。驚きはしても、そういう選択肢はあるだろうなという感じかもしれません。

自分がやっている仕事とお給料を考えたとき、なんと恵まれている会社か、と常々思っていました。
そういう意味では、「辞めるのはもったいない」。

でも、自分を社会資源として捉えたとき、新聞社だから得られた人脈や経験、コンテンツを作ったり、人に物を伝えたりするというスキルを、もう少し広く世の中で使ってもらえる自分でいたいなあと考えました。
特に、自分より若い世代や、新しいチャレンジをしている会社、起業家のためにもっと時間を使いたいなあと思うようになりました。
50歳の「大人」にしては、甘っちょろい考えです。

そんなことを考えるようになったのは、キャリアの折り返しの45歳のとき、立ち上げフェーズにあったNewsPicksに”留職”させてもらったことが大きかったように思います。

その時点ですでに、「大企業で”イノベーション”を期待されて、あがいている自分」が何者なのか、何のために”戦って”いるのか分からなくなっていました。
予算を獲得するため、人をとるため、既存のやり方を変えるため、私の仕事は時に、誰かとの「戦い」になっていました。「戦いは望んでいないのに…」と。

私の社会人人生はすでに20年を超えていました。でも、自分が何のために働いていているのか、見失いつつありました。

だから、一時的であっても、とにかく大企業を飛び出しました。
そうして、News Picksに行って次の5つのことが見えてきました。

自分の中の「働く上での5つのルール」

1)私は自分が「何者か」(有名になる、事業を成すなど)でありたいわけではない
2)自分の知恵やスキルや人脈を、進んで活用してくれる人がいるのは何よりの喜び
3)戦う相手は社内にはいない。いるべきでもない。戦う相手は「人」ではなく、「世の中の解決すべき問題」。一緒にたたかう仲間がいることが幸せ
4)老若男女、経験年数などに関係なく、仕事への情熱などリスペクトできる仲間がいれば、仕事は楽しい
5)自分の資産や時間を投じて事業を起こす「起業家」は、どんなに有能なサラリーマン社長よりも、私が「応援したい」魅力的な存在である

訳あって、NewsPicksでの”留職”を半年間で終えたあと、新聞社に戻り、再び新規事業の立ち上げというミッションを担うことになりました。

その時に、「新規事業は3年で芽も出なかったら難しい。3年は必死にやろう。結果を出そう。そこでもう一度、自分の人生を5つの視点で考えよう」。そう決意しました。

結果的に4年半。立ち上げた事業や手がけたことはいくつかあったものの、失敗して閉じた事業も複数ありました。
なんとか生き残った事業は一つだけ。新規事業というよりは、社内構造改革を狙ったものでした。軌道に乗れば飛躍する可能性があるけれど、既存のビジネスや部門がどう進めるか、会社全体の組織のあり方やカルチャーが問われています。事業としてはまだ3合目。むしろ、ここから「本丸」をどう変えていくかが大事な場面だったかもしれません。

とはいえ、一つの商品が確立し、「新しいこと」をしなくても売れるようになりつつありました。このままだと次の飛躍は難しいと感じていました。
だからこそ自分が踏ん張るべきなのか、それとも、思い切って手放し、他の人に次を任せるべきか。1年ほど悩みました。結果的に、私はこれを手放すことに決めました。

今年ちょうど50歳。人生100年というなら折り返し地点。

まだまだ会社にいるからこそやれることがあるような気もするし、会社でやれることは、もう目一杯やったと思える。逆に、これまで以上に何かできるのか、自分の限界も感じる。そんな年頃です。

5年前に”留職”した時に見えた、自分の中の「5つのルール」を振り返りました。
そして、やはり、新しい人生にチャレンジしてみたい。と思うに至りました。

今、これまでになく、「組織より個人」「大企業より分散型ネットワーク」に追い風が吹いていると思います。
だからというわけではないけれど、組織人のキャリアから、広く社会の中に身を置く自分へ。人生の軸足を移すことにしました。

私の周りを見ても、この数年、組織を離れて起業する人は急速に増えた。
新聞社の後輩たちで、新しいメディアに転職し活躍する人も、嬉しいことに増えてきた。社外の20、30代の知り合いには、パラレルワークを飄々とこなす人もいる。同じ年代の仲間たちも、社外で「もう一つの仕事」をする人が増えています。
私自身が、新聞社を休職して、他社メディアに勝手に”留職”できたのも、そうした時代の流れの一端だったのだと思います。
会社という組織に縛られずに眺めると、社会の中に「仲間」「同志」がいるとも感じます。

コロナで、今、世界各国が「閉じる」政策を打っています。
でも、コロナ問題はむしろ、私たちが大事にしなければならないことを考えさせる機会になったのだと思います。
ゆっくりと押し寄せるはずだった新しい価値観は、この先、一気に浸透していくのでしょう。
「孤立」ではなく「個」を生かすこと、囲い込みでなく「シェア」、自律的に「つながること」の流れを、さらに加速せよ。そうしないと問題は解決できないと言われているのだな、とも思います。

時代が本格的に変わりつつある。
排他的なナショナリズムやローカリズムや会社イズムではなく、自律分散、自家消費型でありながら、開かれた社会、繋がる自分、「シェア」を基本としたネットワーク社会。
そうした社会になることを前提に、私自身も、自分の新しい居場所を探していきたいと思っています。

ブログや情報発信は、自分が言いたいことを言う場ではなく、周りの人はどう考えているかを「感じ取る」ための貴重な場だと思います。
ブログの第一次ブームは2000年代半ばにあり、収束したかに見えたけれど、「個の時代」を迎え、ここ1、2年、noteが成長した。そのことも、とてもしっくりきます。

だから私も、遅ればせながら、新聞社を辞めて、noteを始めました。

新聞記者をしていた割に、筆が遅く、ブログ的な「開かれた文章」は苦手ですが、それも少しずつ、慣れていこうと思います。

サポートを考えていただき、ありがとうございます! 記事を通じて、つながり、共感し、書き手と読み手が互いに一歩踏み出せる。 そんなきっかけづくりを目指したいと思っています。