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日々是好日への道は険しい

4歳から15歳まで一緒で部活も一緒だった同級生が亡くなった。ひょんなことから集って、「何かの縁だしまた会おうね。来月の出産頑張ってね!」
なんて最後に彼女に声をかけた半年後、悲しすぎる連絡を受けた。

ご家族の手前、ここに私の想いを記載すべきではないのかもしれないが、それでも綴らせてほしい。これは私への戒めでもあるのだ。

お互いに学校卒業後、田舎特有の「どこどこさんの誰々は〜」の話で彼女が何をしていたか、Instagramのストーリーで彼女が何を楽しんで生きているのか、手のひらの中で少しだけ彼女の人生を覗き込ませてもらっていた。
無事に出産して、母として強く・慈愛に満ちた女性へと変わっていくストーリーが上がっていく様子を見て、「どんな風に大きく育っていくのかなぁ」なんて見る度に思っていたものだった。

11年の全てをひっくるめて、私は彼女の癖のある明るい笑い声が好きだった。
どんな東京の雑踏にいたとしてもあの笑い声があればすぐに見つけられるくらいには特徴的で、釣られて笑ってしまうことも多かった。

彼女自身、学校生活の初めから終わりまで善人として生きてきたわけではなく、周りにもしっかりと迷惑をかけ、時にはわたし自身も嫌になることもあった。
お互いなんだかんだゆっくりと時間をかけて、そんな嫌だった気持ちを消化して、再会をした矢先の出来事だった。

訃報を電話で受けた時、信じられなかった。
人は本当に信じられない時、息を漏らして笑うらしい。不謹慎にも程がある。嬉しさと悲しさの驚きの反応が同じように見えるのは気持ちのいいものではない。

ずっと信じられなかったが、馴染みのあるお悔やみ情報欄に彼女の名前が載った時、初めて涙が出た。受け入れざるを得ないものとして認識した瞬間であったように思う。

そこで同時に、彼女が強い女性へとストーリーを辿ることのできたであろうInstagramのアカウントが更新されることは今後一切ないと気づいた。
LINEもいつかは電話番号が誰かの手に渡り、アカウントの紐付けが更新されて、彼女は部活のグループから突如消えてしまう。
なんて無常だろうか。終わりは突然だ。

頻繁に会っていたわけでもないのに、私は訃報を聞いて、とっさにLINEグループのメンバー画面を写真にして記録にした。ネット上から彼女の存在が消えてしまうことが恐ろしかったのだ。
彼女のInstagramが最近更新されていないこともにも気づいていなかったというのに。
ストーリーにリアクションしかしない希薄な関係性を選んでいたのは自分だというのに。

つくづく、自分勝手だ。突如消えると分かってからしか動くことのできない自分に虚しさを感じた。
大切にしようと思う気持ちと、今現在の怠惰な気持ちを天秤にかけた時、何かと理由をつけて後者を優先している結果なのだ。
毎日を満足したものにしようとしているが、本当の意味での満足にしている訳ではない。毎日をいい日にするための努力を怠ったのだとも思う。

彼女の寝顔との再会が葬儀になるのは大変心苦しい。部活の遠征帰りに車の中、口をつむいで静かにスースー寝ていた彼女が懐かしい。寝起きがすこぶる良かった彼女は、声をかけるとケロッと起きていた。
寝起きの悪い彼女に会うのは、なんだか彼女であるようで彼女ではない気がする。

余命を宣告されてから、彼女が1つでも残したかったもの、やりたかったことができていることを密かに願いたい。
どうか遺された家族が、1つでも何か心に光を灯して今後も生きていってくれることを心から願いたい。

Umi

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