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映画感想 誰を選ぶかが要。育児~介護まで


昨日映画を観た。


暴力と権力+それを遂行する人たち

観たのは『SHE SAID』。2017年にニューヨーク・タイムズ紙が、超大物映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの性的暴行事件の告発記事を出し、そこから誰もが知る#Me Too運動が世界中に飛び火した。その実話が2022年に映画化されたのだ。

ご覧になった方も多かったろう。


それは思った以上の衝撃で、昨日はその記事を書けなかった。

一晩おいて、ようやく書いてみようと思えた。

とはいえ、書きたいのは性的暴力ではない。

もちろん、このテーマについては、女性に限らず、男性側も知っておかなければならない。権力と暴力はセットなことが多い。さらにはそれをもみ消すためにナイーブに命令に従う人が多いことに驚く。戦争と同じだ。そんな組織の圧を受けた被害者がどれほどの犠牲を払うか。

そんなことが、自由に発言できるはずのアメリカで長年起こっていた。どこにでもあるということだ。だからこそ恐ろしい。



ジェネラリスト

ただ、この映画で気になったことが他にもあったのだ。それは働く女性と家族の関係。

告発記事を形にしたのはニューヨーク・タイムズ紙で働く2人の女性記者。彼女たちはエリートサラリーマンだけれど、結婚し出産もしている。

欧米の働き方を単純にジョブ型というと勘違いが起こる。欧米ではこうした職務別の働き方に入らない特別枠がある。それがジェネラリストだ。彼らは狭き門をくぐり抜け採用される超エリート。2人の女性記者もその枠内の人だ。

彼らにはそれをチョイスする権利があるのだけれど、残業も、出張だってある。映画の彼女たちは、その仕事が形になるまで深夜まで働き、調査のために遠い地まで出張に出かけた。


出産・子育て

そこで気になったのが家族だ。どちらも子あり。一人はまだほんの赤ちゃん。けれど、2人はそのプロジェクトが終わるまで早くは帰れない。しかも数年のプロジェクトだと思う。

その間、子どもたちの面倒をみるのはパートナーだ。それはもう当然のように彼らは子育てをする。詳しく描かれてはいないけれど、それでも夫婦が外部を頼りながら暮らしているようには見えなかった。妻が深夜に帰っても夫は普通に妻を受け入れ、子どもそれを受け入れる。

きっと逆のパターンもあるはずだ。どちらかが忙しい時には、相手がカバーする、そんな暮らしが垣間見えた。

以前、アメリカで最高裁判事の候補に挙がった女性が、不法移民を家政婦として使っていたことが明るみに出て世間を騒がせた。

米国でも働き続ける女性には、試練多き時代があったのだ。自然に家事育児をする男性が出現するまでに時間がかかったのだ。


家事育児と介護

映画には、夫が親の介護に行くシーンが実に自然に描かれている。日本では男性が介護をすると気の毒がる人が少なくない。きょうだいでも女性に介護がまわってくる。

けれど映画では、夫が親の介護に行くシーンが日常の一コマとして描かれている。

わたしは常々、子どもが生まれた際、夫婦は同じように動くのがいいと思っている。それは女性のためだけではなく、男性のためでもある。

子どもが家の手伝いをすると、グッと子供が成長するのを多くの親が知っている。たとえば母親がすべてを完璧にする家では子どもは、ゴミが溜まっていても、洗濯物が山のようになっていても、冷蔵庫が空っぽでも、夕飯の支度をする人がいなくても気づかない。けれど手伝いをする子は、小さなことに気づくし、自分がどう動くべきかが見えている。

男性だって同じだ。

家事や育児をすると、より多くの情報が受け取れるようになる。生きていくための基本情報が身に着けられる。それは仕事にも現れる。これは女には無理だろうとか、これは女の仕事だ、なんて見えない差別意識だってなくなっていくだろう。そして家事育児を夫婦でやっていると、介護だって二人で考えるようになる。それが自然にできる。



そんな人を探す

今や恋人探しや結婚相手探しはマッチングアプリで、というのは世界でも普通担ってきているのだという。それなら話は早い。働き続けたい女性は家事育児を協力しますよという男性は考えた方がいい。

ちょっと厳しそうだけれど、特に日本の場合、協力しますという男性の言葉は甘すぎる。なぜなら協力できないことが多い社会だからだ。今でも長時間労働社会で、在宅も徐々に消え、通勤が強制の会社も増えてきた。

だからこそ、協力ではなく、一緒にやりますと自然に言える人を探すのがいい。

人は変わらない。どんなに変えようと思っても変わらない。変われるのは自分だけだとよく言われるけれど、あれは本当だ。仕方ないだろう、と男性側が言い訳している間に子どもは育ち、女性はくたびれて働き続けられなくなる。

だから、働き続けたい女性は最初からそんな人を探すのがいい。まあ、これはわたしの勝手な意見だけれど。


おわりに

深刻な映画を観て、その内容がなかなか頭から離れなかった。

けれど、今朝、それとは別に、エリートサラリーマン女性たちの夫と子どもたちの様子が印象に残っているのに気づいた。女性でも働けることを見せてくれていた。これは理想だ。夫婦で共に成長していく。素敵だ。

そしてもう一つ、エリートサラリーマンの2人の記者の魂の美しさも感じた。多くを手にした人だけれど、彼女たちは恐ろしく優しい。それは見せかけではない。だからこそ恐怖に震える女性たちが口を開いたのだ。一見すると弱そうに見えても強い人たち。それが勇気のある人なのだと思う。

そんな素敵な女性を理解するパートナーがいることがなんとも素敵だった。


※最後までお読みくださりありがとうございました。


※スタエフでも話しています。

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