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青春を言語化したらこんな感じ

坂木司さんの『夜の光』を読んだ。

もともと坂木司さんの本は中学生の頃からよく読んでいたが、学生が主人公の話は珍しいような気がする。

ゆるく活動している天文学部の同期4人それぞれの視点からの短編と、卒業後の短編で構成されていてとても読みやすかった。

読み終えて不思議と懐かしい気持ちになった。高校生ならではの進路に関する迷いや、親との衝突で抱えたモヤモヤ、あの頃にしかなかった放課後の景色は私自身も経験してきたことで、あれらを言葉で表すとこうなるのか、と感心さえしてしまった。

さらに、作中で4人はスパイに扮してお互いをコードネームで呼び合う。なんというか、少し大人になったら恥ずかしくなることも平気で出来ちゃうような……

"無敵感"とでもいうのだろうか。そう、無敵感。自分も持っていたなあ。高校の放課後に友達とだらだら喋っているとき、なんの根拠もないのになんでもできるような気がしていたし、どこに行っても大丈夫な気がしていた。

今考えるとものすごく狭い世界のことでずっと悩んでいたし、いまだに私は何者にもなれていないのだけど、友達と笑い転げたり、ひたすら愚痴を言い合ったり、部活の人間関係で悩んだりした日々は間違いなくとても愛おしい日々だった。いつまでも続くと思っていたし、終わってくれるなと願っていたけどあっけなく終わってしまった日々は今でも私の中に美しい記憶として残っている。

-光に満ちた、黄金色の時間。気持ちいい。すべての沈黙が、こんな風であったらいいのに-

ここにすべてが詰まっている。私の青春は決して派手でも孤独でもなく、いたって普通だったけど光に満ちていたんだなあと今さら気づいた。

あの時代特有のなんともいえない感情を綺麗に言葉で表現されていて、もう一度青春を体験できたような気がした。

青春を絶賛謳歌中の人も、青春がもう手の届かないものになってしまった人もぜひ読んでほしい。



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