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たった一人の人

いつだったか
何かのバラエティ番組で
俳優さんたちに「木」の絵を描いてください
という心理テストをしていたことがあった


精神分析の専門家は
俳優さんたちの描いた絵を見て
見事にその人の考え方の特徴や人柄
性格を言い当てていた


「木」の絵には
大きさ、高さ、太さから
葉、枝、幹、根、実
紙の中央に書くのか端に書くのかに至るまで
その人の内面が事細かく表れる


それゆえ
心理分析の分野ではその人の状態を知るために
よく使われる手法のようだ

心理学に興味があった私は
そのバラエティ番組を興味深く見た



根が深く太いほど木は倒れない
反対に根が細くて弱ければ簡単に倒れてしまう

それでも支えになるものが側にあれば
弱った木でも倒れることはない

そんな話を母から聞いたことがある



もし春馬くんなら、どんな木を描いたのだろう

ふとそう考える時がある


枝と葉は瑞々しく、木を覆うように繁り
強い日差しを柔らかい木漏れ日に変えて
大地に届ける

大きく太い幹はその根元で強く冷たい風から
そこに集まってくる者たちを守ってくれる

秋にはたくさんの実をつけて
その命のエネルギーを周りに分け与えてくれる

枝の先は天を突くように上へ上へと伸びていく


春馬くんを木に表すとしたら
そんな風だろうか


春馬くんはどんな場所に根を張っていただろう
3年前のあの時
根を潤す水分と養分は足りていただろうか



30代
一般の会社なら中堅と呼ばれる年頃だろう
後輩に頼られる存在
会社を引っ張っていく存在

春馬くんの場合
撮影現場や舞台では座長を務めることも
年々増えて来ていただろう

誇りを感じると共に
責任も重く緊張感は強くなっていったと思う

そして俳優という職業柄
いつも皆の希望となる存在でいなければならない

人一倍優しくて真面目で努力家な春馬くんは
そんな役割を当たり前のように
果たしていたと思う

「太陽の子」の海辺での撮影の帰りの船で
柳楽くんの背中を抱えるようにして
温めていた春馬くん
その瞬間を捉えた一場面を見ただけでも
彼の慈愛の深さがうかがえた


コロナ禍の中でも
人の心に敏感で、いち早く場の空気を感じ取ることのできる春馬くんは

世間の重苦しい雰囲気や
悲鳴を上げる人々の声を
痛いほど感じ取っていただろう

そしていつものように
みんなの希望と癒しの存在になり続けていようと
してくれていたと思う

でももし、いつしか
いちばん希望と癒しを必要としていたのが、
悲鳴を上げていたのが春馬くん自身だったとしたら

春馬くん自身も気付かないうちに
そんな状態になっていたとしたら


どんな思いで暗闇の中を歩いていたんだろう
一分の隙もなく
魂の底からとめどなく溢れる
優しさと笑顔を纏いながら

どんな思いで
生と死の境界線を
歩いていたのだろう
一人で




先輩として
座長として
俳優として
その役割をぜんぶ捨てたとしても
2度と会えないのだとしても
存在してくれているだけで
それだけでよかったのに

かっこよくなくても
輝いていなくても
三浦春馬はこの世にたった1人しかいない
この世のどんな宝物よりも
その命は唯一無二で、大切なものだった

それを伝えたかった



今は全てから解放されて
生命力も回復して
きっと自由に世界を旅していると思う


いつか
この地上に帰って来たら

ほんの少しでいいから
その魂を支えられるような力になりたい

それが叶うなら
もう会えなくても
声が聞けなくてもいい

だからどうか
どうか春馬くんに幸せと安らぎを

そう祈っています

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