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わたしのナースのお仕事人生。

「あーさーくーらーーーーーー!!!」
「せーんぱーーーーい!」

たらららん、たらららん、たらららっらっらら〜ら〜♪

なんてやりとりを覚えているひとはいるのでしょうか・・・。
わたしが看護師になったわけ。それはずばり、ドラマ「ナースのお仕事」がきっかけです。

観月ありさ演じる主人公の新人ナース、朝倉いずみが繰り広げるドタバタナースコメディドラマ。先輩の松下由樹が朝倉いずみがやらかしたドジに「あさくらーーーー!!!」と言って怒るのが定番シーン。

そんなドラマを見て、すっごく楽しそう! とおもったのが看護師になりたいとおもったきっかけです。

それで、祖父が肺がんの末期で亡くなり、そのときに読んだ『僕のホスピス1200日』という本に感銘を受けて、ターミナルではたらきたい、とおもったのです。だから、看護師になりたいとおもったきっかけは、ドラマ、というなんともふざけた理由なのです。

とはいえ、現実はあんなに楽しい現場はひとつもなく、ただただ厳しかった・・・。新人の頃は、先輩に怒られる恐怖とこなさなきゃならない業務の多さとで、しょっちゅう鼻血を出して、トイレに立てこもっていました。

ゴールデンウィークには、大学の先生に電話して「先生、もうやめたい。向いてない。ダメかも・・・」と泣きついたのを今でも覚えています。笑

だけど、なぜだか看護をやりたい、究めていきたいという想いは強く、そのためにはひとつの病院しか経験しないなんてありえない、という考えでした。ひとつの病院にずっといると、そこでのやりかたしかわからない。そこの常識に染まってしまう、と。

そこで3年経験したら次に行こう、と思って着々と転職活動をし、心臓カテーテルを専門でやっている病院への転職が決まったのでした。

が。

その冬、仕事をやめたともだちに影響を受け、『仕事をしない時期もあってもいいかもしれない』と決まっていた転職先を辞退し、沖縄へ行き先を決めない旅をすることにしたのでした。

今考えると、突拍子もない。なさすぎる。

だけど、大学で学んできた『理想の看護』と『現実』との差がはげしくて、ほんとうにやりたいのはこの仕事なんだろうか、と考えたかったんですね。

大学では、薬を使わなくてもできることがある、それが看護の強みである、みたいなことを学んできたわけです。からだをあたためたり、話を聴いたり。

『手で見るから《 看護 》なんだよ』

目をむけて、声を聴いて、話を聴いて、手で触れて。

そうしてそのひとに寄り添ってできることをするのが看護なんだ、そうおもって放たれた大海原で、目にしたのは『不眠に眠剤、便秘に下剤』の日々。
なんだこれ・・・。
なんだか、なんのためにやっているのかわからなくなることもしょっちゅうありました。
ほんとうにやりたいのは、患者さんのそばにいて、声を聞いて、手で触れて、そのひとに、そのひとの心に寄り添うこと。・・・なはずなのに、それがまったくできない日々。

一度看護から離れてみよう。
そうおもって、出た旅でした。与那国島のおじぃの家というおじいがやっているゲストハウスを最初の宿に決め、それから先は、流れに身をまかせようと、なにも決めずに行きました。

そして、与那国から石垣へと渡る船のなかで、目の前に広がる水平線を見ながらおもったのは、やっぱり患者さんたちのことでした。

元気にしてるかな。
どうしてるかな。

しぜんに患者さんたちのことを思い出したとき、ああやっぱり看護がすきなんだなぁ、と思いました。

まだまだ生きたいいのちがある。怖いけれど乗り越えたい、と骨髄移植に踏み切って、無菌室で脳出血を起こし亡くなってしまった患者さん。
「外界はお祭りだね」と年末年始を病棟で過ごすさみしさを皮肉でしか表現できなかった患者さん。
そんな患者さんたちと過ごした、『天国に一番ちかい病棟』。

「はやくノルアド持ってきて! 早く! 早く!」と煽られる。
運ばれてきた患者さんの瞳孔をチェックしようと、まぶたを開いた瞬間に目ん玉が飛び出てきて、びっくりした救命センター。
(これは義眼で、ほんものの目玉を抜き取ったわけではありません! でもほんとうにびっくりした。)

認知症がほとんどで、骨折後などで自宅退院にむけてリハビリをがんばっているひとがたくさんいた回復期病棟。
他職種としょっちゅう行われるカンファは、わたしにとってはとっても楽しかった。チーム医療はむずかしいけれど、他のプロフェッショナルからの視点を聞けるって、患者さんにできることが増えるってことだからとっても楽しい。

とつぜん叫びだしたり、同年代の看護師をともだちだとおもって話しかけたりするひとがいる重度認知症デイケア。認知症のひとの家での暮らしを、ほんの少しだけのぞかせてもらうことができた、とっても貴重な時間でした。

ずっと臨床ではたらく、とおもっていたのに、運命のいたずらか、特別養護老人ホームではたらくことになり、ひたすら衝撃を受けていた1年前。

どの分野も、とてもおもしろく、とても楽しい。
絶対に働きたくないとおもっていた、高齢者施設でさえ、住めば都というみたいに、働いてみたらとっても楽しいんですよね。
おじいちゃんやおばあちゃんはかわいいし、元気をもらう。

そして、分野が変われば必要な知識も変わってくる。
まだまだやれることがあるかもしれない、とおもえるのは、看護師を続けているわたしにとっての希望かもしれません。

「これ以上できません。」

そんなこと、思わない。
だって世界は日々進化しているし、まだまだ知らないことばかり。
探せばきっと、もっといいケアはできるはず。

だから、まだまだあきらめたくないとおもうのです。

いつもありがとうございます! いただいたお気持ちをパワーに変えて、どんどんまわしていきます!