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日記より


日記より



 私自身はあまり制作をせぬ画家であるが描かぬのと描けぬとでは全然意味が変わる。

 常に未知の領域に挑まんとする表現者は観る時間が多くなる。
 決定するぎりぎりまであらゆる視点観点から観て、全体が壊れる一歩前で決断する。
 筆を置く時の難しさである。
 表現には常に生き死にが問われる。又、これに尽きるといってもよい。
 しなやかな集中力が必至である。これまた体得は簡単ではない。かといって不可能でもない。
 地道な歩みとおのれ自身との日々絶えざる内的戦いのみ、である。

 これは日常の生き方にも通じる事である。ただこの意識状態を貫くのが難しいにすぎない。
 特に言葉・言語表現に至っては別な諸問題がある。
 今、この雑文を書くにもこの困難さを前提として書いている。

 自在に伸縮する尺度・物指しなどあって無きがごとくであるからだ。
 よく言われる無名性とは現実社会では強力で独断的な個性を具えた個性として存在する。
 これは是非も無しと想うしかない。又、最前提ともいえる。
 かかる個性にとって一切の事物、諸概念は密に連動している。
 

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