見出し画像

能 土蜘蛛から見る「鬼」の正体とは

「土蜘蛛」とは
上古の日本において朝廷・天皇に恭順しなかった各地に存在した土豪たちを示す名称であり、鬼や妖怪の名称ではない。
近世以後は、蜘蛛のすがたの妖怪であると広くみなされるようになった。
土蜘蛛は古代、大和朝廷側から異族視されていており、『日本書紀』や各国の風土記などでは「狼の性、梟の情」を持ち強暴であり、山野に石窟(いわむろ)・土窟・堡塁を築いて住み、朝命に従わず誅滅される存在として表現されている。「神武紀」では土蜘蛛を「身短くして手足長し」と形容するなど、異形の存在として描写している場合が多い。

また葛城と言う地名も、土蜘蛛を葛(かずら)を編んで作った網を使って討っており、そのことに因んで地名を葛城(かつらぎ)と改めたと日本書紀にも記されています。
「茨城」の地名も同じ理由で、奈良時代に書かれた「常陸国風土記(ひたちのくにふどき)」の中に、「黒坂命(くろさかのみこと)が、古くからこの地方に住んでいた朝廷に従わない「土蜘蛛」を茨(いばら)で城を築いて退治した。 または、その住みかを茨でふさいで退治した」という話が書かれています。

能 土蜘蛛ストーリー
謎の病で床に臥している源頼光のところへ、侍女の胡蝶が薬を持って見舞に来ます。心細くなっている頼光を慰める胡蝶でしたが、その胡蝶と入れ替わるようにいつの間にか病室の傍らに怪しげな僧が現れ、千筋の蜘蛛の糸を頼光に投げつけます。頼光は枕元にあった名刀「膝丸」で応戦し、傷を負いながらも僧は姿を消してしまいます。物音に驚き駆けつけた独武者にその時の様子と、膝丸を今日より「蜘蛛切」と名付ける由を語り、急いで退治するように命じます。下人が頼光の家来達が土蜘蛛退治に向かう旨を告げると、独武者は郎等を引き連れ葛城山の古塚を見つけ出し、塚を崩すと中から土蜘蛛が現れ糸を投げつけ激しく襲いかかりますが、最後は切り伏せ首を打ち落として都へ帰ります。
また、隠れた見どころとして、名刀「蜘蛛切」にもご注目ください。「蜘蛛切」は源氏に代々宝刀として受け継がれた二口の刀のうちの一つで、代を重ねる中でその名を変えていきました。能『土蜘蛛』にあるように、頼光は土蜘蛛を切ったことでそれまで「膝丸」と呼ばれていたその宝刀の名を「蜘蛛切」と改めました。また源為義の代には「吠丸」、さらに源義経の手に渡り「薄緑」と号を改めました。尚、諸説ありますが、現在の所在は、京都大覚寺に所蔵されている国の重要文化財「薄緑」ではないかといわれています。

ここから先は

7,520字

¥ 200

拙い記事ですがよろしければサポートをお願い致します。