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天ぷら。グルテンとからりとした美味しい衣の関係を学ぶ

実習の献立の1つで天ぷらを揚げた。

パン粉をつけたとんかつは何度か揚げたことがあるが、小麦粉を溶いた衣をつけて油で揚げたという記憶がないので、天ぷらを揚げたのは人生初だと思う。
記念すべき(?)初天ぷらになった。

天ぷらを揚げるこの日の実習の前に小麦粉の実験の授業があり、グルテンの働きを学んだ。
グルテンは名前だけは知っていた。実験でグルテンはたんぱく質の一種だと知った。
実験ではグルテンの働きを理解するために、小麦粉に水を加えて練って塊にしたドウという生地を作り、こねる回数や加える材料(使ったのは塩と重曹)を変えていくつか試料を作り、茹でた前と後のドウの弾力性や伸展性の変化を比較した。

ドウは薄く伸ばして細長く切って茹でると、塩を加えたものはうどんになって、塩と重曹を加えたものは中華麺になった。
観察した後、つゆを作って麺を試食した。
麺ってこうやって作っているんだ、へえー、と噛みしめながら味わった。

小麦粉のグルテンは、水を加えてこねると粘りが出る。そして、それを寝かせ(=時間を置く)ると粘りと弾力が増す。という実験結果だった。
だから、天ぷらの衣を作るときは小麦粉(薄力粉)はかき回してよく混ぜたりしないて、さっくりと合わせるだけにする。一所懸命混ぜてしまいそうなところだが、我慢する。ダマが残りそうだったが、具材をつけるとどこかに行ってしまったようだった。
そして、衣はつくったらすぐに揚げる。衣をゆっくりと寝かせておいては美味しくならないのだ。

天ぷらの衣は、薄力粉と水と卵で作る。
衣を作る手順に順番がある。
まず、卵と水をよく混ぜて「卵水」を作る。その卵水の中に薄力粉をふるって加える。衣は合わせるだけでよく混ぜない。よく混ぜるとグルテンが働き出して粘りが出てしまうからだ。

そして、衣を作るタイミングにも順番がある。
衣を作るのは、海老やしいたけやさつま芋といった具材の準備できて、油を火にかけてから作り始める。
油の温度が天ぷらに適温になったくらいに衣ができあがるようにする。
これも、水を加えて軽く混ぜ合わさった小麦粉のグルテンが働き出してしまう前に揚げるのが美味しい衣のコツなのだ。

美味しい天ぷらは衣にあり。そして、衣はグルテンの働きがポイントなり。

道理が分かると段取りができる。段取りがうまくいくと応用がきく(はずだ)。
これこそが私がずっと手に入れたいと熱望していたことだ。

授業は毎回こんな調子で新しい知識と発見で、ストンと何かが落ちた気になる。すっきり気持ちがいい。
それから山のような課題が出され、一週間があっという間に過ぎていく。

揚げたての天ぷらは格別だ。
さくさく。かりっ。軽い音が楽しい。
中身の具材はふっくらと水分があってジューシー。香りが鼻から抜ける。
煮出し汁でてんつゆを作ったが、つけなくても揚げた素材の味そのままで美味しい。

家で揚げる手作りの天ぷらはさらに格別だろう。
材料を準備して、油を入れた鍋を火にかけて、油の温度を見極めてから、揚げ始める。油の温度を測るのは菜箸が助けてくれる。
ごはんや汁物を先に準備しておけば、天ぷらに集中できるので安全に揚げ物ができる。
天ぷら一品の中に魚介やいろいろな野菜があるので違った味や食感を楽しめる。彩りや季節もあって目にも楽しい。
そして、揚げているときの音は気持ちを盛り上げてくれる。
天ぷらを揚げる音とは、なんと、幸せな美味しい音がするのでしょう。

天ぷらの後の片付けは大変だ。
コンロ周りは油が飛んでべたついているし、鍋や皿も油汚れを落とすのは面倒だ。だから、家では揚げないで外食したり中食してしまう。
でも、美味しい天ぷらをいただいたら、洗い物など気になりません。
私は天ぷらの調理の工程すべてが楽しかった。

年下の若いクラスメートたちは普段あまり天ぷらを食べないのでしょうか。
私と同じく天ぷらを揚げたことはなかったようで、神妙な面持ちで初天ぷらを揚げていた。そして、私と同じように、揚げたての試食では歓声を上げていた。

次の実習では茶わん蒸しを作ります。

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