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ビートたけしはダウンタウンの漫才をどう見ていたか?


ダウンタウンの漫才、少しずつ分析していきます。マンザイブームが1980年に起こって、2年間続くんだけれども、ダウンタウンはこの1982年にします。ということは、このふたつの流れは同時代のものであり、並立していたということになるんじゃないかな。

マンザイブームの漫才って、「ハイスピード」が特徴。
ダウンタウンの漫才は、「スローテンポ」で有名。
 
漫才の表現方法は、同時代のものでありながら、全然違うわけだ。このことはもちろん、多くの人が感じている。とくに、ビートたけしが松本人志との対談で次のように語っている。いろんな本で引用されているから、有名な発言だよね。

たけし:おいらの時に漫才ブームがあって、ネタ的にはもっと身近なことというか、それまであんまりネタにしていないような話をやりだした。あの当時としては新しいことをやってたんだけど、かなり荒いんだよね。その時代のあとに出てきたダウンタウンはもっときめ細かい。おいらの2、4、6、8というネタの切り取り方が、1、2、3、4でとってきたという感じ。乗った時は、0.1とか0.2の刻みでとり出したという感じがある。スピード的には2、4、6と飛んでいくから、B&Bとかおいらの漫才のほうが早いんだけど、ダウンタウンは0.1をじっくりもたせちゃうというところがある。おいらの5分ネタを30分ぐらいやれる細かさで、その感じをよくわからせたのがダウンタウンの漫才だ。それは進化だと思う。

松本:やすし師匠には、あんなもの漫才じゃないって言われました。(笑)
たけし:たしかにやす・きよがやっている漫才を漫才というなら他はみんな漫才じゃないのは当たり前だよな。ヤッさんが0.1に気がつかないというのは、気がついたらヤッさんっていうのはなくなってしまうから。年表でいえば、日本の通史じゃなく、ダウンタウンの漫才は時々鎌倉時代の十年間ということだけでやるじゃない。それの違いだと思う。われわれの上の世代はとても理解できないんじゃないかな。

北野武、『新潮45 2月号 コマネチ! ビートたけし全記録』、新潮社、1998、p. 33

実はこの対談まで、松本とたけしの関係って微妙だったはず。もともと接点がほとんどなかったし、たけしが交通事故で顔をけがして、復帰するときに、松本がたけしについてかなんか書いたはずなんだよな。
 
それがたけしには気に食わなかったみたいで、「やかましいわ」みたいなことになってた。で、この対談でようやく打ち解けた状況だったと記憶している。
 
それはまあどうでもいいんだけど、とにかく対談のなかで、たけしはダウンタウンの漫才のことを「進化だ」といって褒めている。だから、ダウンタウンはすごいっていう根拠として、みんなこの発言を引用しているんだ。
 
でも、ただそれだけを取り上げて、ダウンタウンの漫才は進化したんだな、すごいなって言ってしまうのは、ここでは避けたい。もうちょっと細かく見ていきたいっていうわけです。とにかく、ダウンタウンの漫才を分析する出発点としては、この対談は重要だっていうことには変わりない。
 
では、また次回。(梅)

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