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アンチ・バレンタイン・レギオン【短編小説】

 「我々ABRこと、アンチ・バレンタイン・レギオンは、この電波をジャックした。時間は限られているので重要なことから言う………」


  「我々と共にバレンタインを潰そう。」


 2月14日の朝、我が家の朝の食卓は凍りついた。普段通りテレビを見ていたら、突然画面が乱れ、束の間砂嵐になり、何か映ったかと思ったら謎の男が机越しにこちらを見ていたのだった。男は続ける。


「我々は名前の如く、バレンタインを亡き者にするために活動してきた。今となっては250人ほどメンバーがいるが設立当初、私は孤独だったのだ。だからバレンタインがBでなくVだ、ということを教えてくれる人もいなかっt……それは良いのだ。で、世間では知られていないが我々が行ってきたことは沢山ある。バレンタイン前にチョコレートの輸送を妨害したり、ガーナやコートジボワールのカカオ農園でストライキを煽っ……」
「失礼いたしました。只今の放送は電波が乗っ取られたものと思われます。繰り返します……」 

 

こうして彼の演説は一瞬で終わった。




 学校はABRのことで持ち切りだった。
「いきなり砂嵐になってさ……」
「チョコ貰ったことなさそうだよね~あのおじさん……」
「普通にダサすぎだろ……」
「バレンタインにムキになるおっさんってさぁ……」

 何と言うことだ。このクラスでABRは気違い扱いされているではないか。許せん。俺は声を張り上げた。



「彼は英雄だよ。世間が浮つくこの時期に一人で演説したんだぜ?俺はバレンタインを無くすべきだとは思わない。でも彼の行動は称賛に値すると思う。」

 ここまで一息に言ってのけた。クラスメートは皆こちらを見て、固まっている。暫く沈黙が続いたが、それを破ったのは女子の声だった。


「非モテが何か言ってるwww」
「目立ってもチョコは貰えないよwww」
「あんたバレンタイン関係無いでしょ、どうせ何も貰えないんだからwww」


 どっと笑いが起こった。俺は顔を赤くして席に座り、心に誓った。




 ABRに入団して、バレンタインをぶっ潰す。




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【あとがき】チョコ下さい。
       男でもいい、
        チョコ下さい。


 

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