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聴くことの役割

1.聴こえることが生活の質を高める
日常生活は手足の動きに問題がなくて「見る」「きく」ことができれば大部分、問題なく生活を送ることができます。
社会生活で人との会話は大事で難聴になって初めて不自由さを感じてしまうのではないでしょうか。それくらい健康なときは『きこえない』ということに対し実感がないものだと思います。

2.難聴が心理面に与える影響 
きこえが悪いという症状は、他人にはもちろんですが本人もしばしばわかりにくい症状です。きこえが悪くても外観上はわかりません。
そのため 最近 口数が減った高齢者の場合、きこえが悪くなっているということに気がつく家族は少ないのではないでしょうか。当の本人も聴力が落ちたことに気がついていない場合もあります。
そして徐々に聴力は悪化し、家族が大声を張り上げないと きこえない状態に陥ることも。そうなると大声を出す側は会話が面倒になり、徐々に高齢者に話しかけなくなる。高齢者は ますます人との会話が減るという悪循環になることもあります。

3.難聴と認知症の関係
においに気が付かない、味覚がおかしくなったは認知症の初期症状といわれています(実は記憶障害が出始める頃にはもっと認知症は進んでいることがあります)。同じように難聴があると認知症になりやすいことが報告されるようになってきました。
2017 年7月、国際アルツハイマー病会議(AAIC)において「認知症の症例の約35%は潜在的に修正可能な9つの危険因子に起因する」と発表しました。「難聴」は「高血圧」「肥満」「糖尿病」などとともに9つの危険因子の一つに挙げられました。その際「予防できる要因の中で、難聴は認知症の最も大きな危険因子である」という指摘がなされたのです。
難聴のために環境音や言葉など脳に伝わる情報が少ない状態にさらされてしまうと、神経の連絡は弱まり ますます脳に情報が入らなくなると脳の萎縮が始まります。それが認知症の発症に大きく影響することが明らかになってきました。
また、難聴のためにコミュニケーションがうまくいかなくなると、人との会話をつい避けるようになってしまいます。そうすると、次第に抑うつ状態に陥ったり、社会的に孤立してしまう危険もあります。実はそれらもまた、認知症の危険因子として考えられています。だから、「難聴が最も大きな危険因子」だと言われているのです。

ヘレン・ケラーの言葉
「耳がきこえないということは 眼が見えないということより重大だ とまではいわないまでも、より深刻で複雑だ。耳がきこえないほうが ずっと不幸だ。かけがえのない刺激である人間の声―言葉をもたらし、思考のきっかけとなり、人間同士の知的な付き合いを可能にする声―が伝わってこないからだ。生まれ変われるものなら、私は耳がきこえない人のために、これまで以上に尽力しなければならない。耳がきこえないことが眼が見えないことよりもはるかに困難な障害だと痛感しているからだ。」(ダイアン・アッカーマン著「感覚の博物誌」河出書房新社 p241,1996)

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