妻とお金の話
「お金持ちを目指すのをやめようと思う」
なんといきなり脱線するが、こんな風に台詞から文章が始まるのってなんかお洒落でいいね。これからは、ここぞという時には使っていこうと思う。
本題に戻る。そう、あれはまだ暑い日が続く夏の夜のことだった。寝苦しくて目を覚ましてしまった僕は、妙な音を耳にする。リビングの方からのようだ。
嫌な予感を感じつつリビングに向かい、思い切って扉を開けるとなんとそこには
いや、何の話?お金持ちを目指すのをやめた話はどうなったの?
そういう小ボケをいちいち挟まなくていいから真面目にやって。もういい大人だから。
ゴホン、改めて。
お金を貯めるのが大好きな妻が、いきなりそんなことを言い出すものだから驚いた。
小学生の頃、姉の漫画(姫ちゃんのリボン)を勝手にBOOKOFFで売り飛ばして自分のお小遣いにしていた妻が。
僕がスマホを買ったときに付いてきたイヤホンを「一応残しておいて」と言ったにも関わらず「どうせ、使わないだろ」と勝手にメルカリで売り払って私腹を肥していたあの妻が。
もし1億円が手に入ったら、僕にも100万円くれると言っていたあの妻が、そんなことを言うなんて。
この間、娘にドケチってどういう意味?と聞かれたときに思わず「ママみたいな人だよ。」と言ってしまったのを速やかにお詫びして訂正しなければならない。
それにしても、これは我が家にとって異常事態だ。
理由を聞いてみると、詐欺でお金を取られちゃうのが怖いとのことだった。
そういう事件は、度々耳にする。大事に貯めたお金を詐欺で取られてしまうなんてそんな悲しいことはない。
それと、お金持ちになると殺されちゃうから。とも言っていた。
確かに資産家が殺害されたなんてニュースはよく耳にする。
恐ろしい事件だけど、お金持ちだからといってみんながみんな殺されているわけじゃない。それは心配し過ぎでは?
というか、妻は一体いくら貯めるつもりだったのだろう?
一般的なサラリーマン家庭である我が家がどんなに頑張ってお金を貯めたことろで資産家なんてレベルには到底なれない。せいぜいお金の不安なく生活できるくらいのものだろう。
とても狙われるほどの資産にはならないと思うから、なにとぞ安心して欲しい。
我が家の場合、家のお金と妻のお金は同義なので妻がガッツリ貯めたいならそうするし、使うなら使うで問題ない。
ただ、本当に妻がこの先お金を使えるのかは疑問だ。
習慣というものは恐ろしいもので、しばらくしたらまたいつもの貯める妻に戻っていそうな気もする。
そして「貯める」にも沢山のお金がいるし「使う」にも沢山のお金がいる。結局どちらを選んだところで僕が馬車馬の様に働くというのは、悲しいかな確定しているわけだ。
資本主義とはかくも恐ろしいものだったとは。
まあ僕の馬車馬コースは避けようのない運命なので受け入れるとして、息子がもう少し大きくなったら妻も働く予定だ。
そして、その日のために資格を取ろうと子どもを寝かしつけたあと毎日勉強している。
子育てで大変なのに毎日コツコツ勉強するなんて凄いね、と僕が言うと
「1日たった5分だとしても毎日参考書を開くことが大事だから」とのことだった。
うちの妻さん、偉くないですか?しかも、偉いうえに可愛いんですよ。
僕なんてそんな妻を横目にヘッドホンしながら、毒にも薬にもならないようなアニメをただボーっと眺めてるだけですからね。
そのくせ「やっぱりこれからの時代は、資格とか持ってると強いよね」とかわかった風なこと言っている。
今さら気付いたが普通に嫌なヤツじゃないか。いい加減にしろ。
そんな風に一生懸命勉強しているが、合格した暁には「教科書をパラパラーっと読んだ程度なんだけどね」と友達には言うのだと、とても良い笑顔で話してくれた。
そして妻としては資格を取ったら、大きい会社で働いてそこでノウハウを覚えて、そこを踏み台(言い方)にして独立!なんてことまで考えているようだ。
じゃあ、そうなったら僕を事務員として雇ってよ。事務所は実家の離れでいいかな?なんて話でひとしきり盛り上がったところで、実際のところ手応えがどうか尋ねてみた。
「参考書を一応最後までやって、今2周目に入ったとこだけど、全然わからないね」
えっと、全然というのは
「今のところ正解率1割くらいかな。」
ちなみに合格は7割以上だ。
遠い。合格までが果てしなく遠い。
でも、きっと妻は一発で合格する気がする。
再試験の代金を払うのを良しとするような妻ではない。きっとここからもの凄い巻き返しを見せ、何として合格するはずだ。
という様なことを、勉強してる妻の向かいに座り、呑気にビールを飲みながら考えていた僕に言いたい。
うるせぇ、馬鹿野郎。
始めて企画に参加してみました。
勉強してる妻を見て、よし自分も何かに挑戦してみようと思って書いたのだけど、努力の方向性はこれで本当に良かったのか自信はありません。
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