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白い猫の話 2

これの続き。


猫の歯医者に来た。
人間の歯医者みたいに1本1本状態をみていく。いくつか動物病院は行ったことあるけど、これははじめて。血液検査の結果も見せる。見立てとしては、かかりつけの動物病院と同じ。
「うーん。私はわりと強気に手術しちゃう方なんですが、たしかにこの状態だと、難しいかもですね。ただ……」
ただ?
「1週間くらい前までは自力で食べてたんですよね? そこまで口腔内を戻すことなら、もしかしたらできるかもしれません」
え、どうやって?
「歯磨きです。結構、取れそうな歯石もあるので、ちょっとやってみますね」

歯磨きの大切さというのは、動物病院でしばしば言われる。ただ猫がとても嫌がる。嫌がられるうちにほったらかしてしまう。医者にコツを聞いたこともあったけれど「やっぱり、たいへんですよねえ。お互いに慣れるしかないんですよ笑」と言われて、そのうちあきらめてた。

コロナ禍なので、診察室には入れない。が、漏れ聞こえてくる声からすると、フニャフニャ言ってるものの、そこまで嫌がっている様子はない。何が起きているのか。
「はーい、いい子しゃんですねえ! すごい子しゃんですねえ!」
先生の猫を褒める声が聞こえる。え、コツはそこ?
しばらくして、これくらい取れました、と取れた歯石を見せてくれた。
ごっそりとは言わなくても、そこそこ取れている。
「毎日、少しずつでいいので、続けてみてください」
あらためてコツを聞いてみた。


「かわいそうなことをしている、と思わないことですね。『すぐ終わるからねー』とかは言わない方がいいです。お互い幸せな素敵な時間だと思ってください」

できるかはともかく心持ちは理解した。そしてそこから30分ほど、猫の骨格模型と病院オリジナルの歯磨き動画を見ながら、歯磨きレッスンをしてくれた。
そしてお会計。
「今いつもの病院で、毎日点滴されてるんですよね。いいですいいです、今日は初診料だけで。あ、サンプルの歯ブラシと甘い塗り薬もさしあげます。"もしも"点滴が数日おきとかになったら、もう一度、状態を見せに来てください」
ほんとお世話になりました。
と同時に、"もしも"のニュアンスが、”もしも”はないんだな、と感じる絶妙に微妙なニュアンスだったことに気がついた。家に帰って、様子を伝える。ニュアンスのところは、誇張も矮小も補足せず、可能な限りニュアンスのままに子供たちに伝えた。

そして翌日。
手術はしない、という方針をかかりつけの病院に伝える。やはり手術してそのままというのは、と伝えると
「ですよね。そのお気持ちもよくわかります。ではこのまま老衰、ということで?」
「はい」
そして気になっていたことを聞く。
「その場合、点滴ってどうなるんですか?」
現状、1日5000円弱かかっている。仮に2週間生きるとして、約7万円。1ヶ月だと15万円近くかかる。決して、安い金額ではない。それに、通院で時間もそこそこかかる。万が一、数ヶ月に渡った場合、早く死なないかな、と思わない保証もない。

「ご自分でご自宅で打ってみますか? 教えますよ」

え、そんな手があるんですか、先生?

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終わらなかったので、続く

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