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音楽ライブ配信の手引き8「カメラの配置とスイッチング」

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第8章 カメラの配置とスイッチング

8.1 構成の考え方

複数カメラを用いてスイッチングする場合は、画の構成を計画的に考える必要があります。通常、メインとして絶対に使用するのは正面から全体を捉えた画角です。

小さな箱で4カメとすると、それに加えて左右を少し寄りで、さらに望遠でリードボーカルや主役を追って抜くカメラを1つ、といったところでしょうか。
左右で少し画角を変えて非対称にするのがおすすめです。左右カメラのどちらかはステージ近くで演者を横から捉えるようなイメージにしても良いでしょう。

カメラ数に余裕があるようなら、前方広角ステージ後ろから客席、のようなインパクトのある画角はアクセントとして使えます(メインカメラに前方広角はあまりおすすめしません)。

また、マルチカメラで可動のものが多い場合はプレビューモニターの用意があると便利です。お得なことで話題のATEM MIni (Proではないもの)にはプレビューするためのマルチビュー機能がないので注意が必要です。

8.2 映像の使用

プロジェクターなどの映像を公演にて使用する場合、HDMI分配器ミラーリング機材(EZCastなど)を使用することでスイッチャーに入力し、配信にも届けられます。

なお、どうしても予算がない場合、配信用PCに動画を入れておいてOBSなどで再生し、ライブ配信されているものをプロジェクターに接続したパソコンでストリーミングし、それを流すといった離れ業も存在します。
配信メインの場合はこれもあり。また、単純にスクリーンをカメラで写す方法もありますが、基本的に暗いのでクオリティを気にする場合にはおすすめしません。

8.3 撮影特機

さらにプロフェッショナルな映像を撮影したい場合、いわゆる撮影特機を使用することもできます。三脚の下につける車輪のドリーやカメラを吊せるアーム(クレーン)、カメラを一直線上になめらかに動かせるスライダー、手ブレを抑えて自由に動けるジンバルの使用もアリです。

8.4 カメラ配置の実例

4カメ前提でカメラ配置の例を3つほど挙げておきます。

①正面後ろ・舞台前広角・左右どちらか固定・左右どちらかスタッフありズーム

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②正面後ろ・正面後ろ望遠・左or右真ん中中望遠(舞台全体〜人全体ぐらい)・舞台前ドリーつき

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③正面後ろ・舞台裏側広角・舞台前下手全体・上手真ん中望遠

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このようなスイッチング動画も参考になるかと思います。

8.5 スイッチャーとカメラオペレーターのコミュニケーション

最後に、スイッチャーと離れた場所にいるカメラのオペレーターとコミュニケーションを取る方法についてです。

一番一般的なのはインカムです。小さなパックとそれに接続したヘッドセット、BNCケーブルを用いて安価にインカムシステムが構築できます(以下の機材ではケーブル延長1kmまで)。ワイヤレスのものも存在します。
Push to talk (PTT, ボタンを押している間だけ通話でき、それ以外はミュートになっている)とLatch (ボタンを押すことでミュート、ミュート解除の操作)が選択できるので、スイッチャーはPTT、カメラオペレーターはLatchで使うことができます。

スイッチング用途以外でトランシーバーをレンタルしている場合、もともと持っている場合などは、スイッチング用に使用することも考えられます。
免許不要で使えるトランシーバーの種類としては特定小電力無線デジタル簡易無線があり、特定小電力は登録も不要、デジタル簡易は登録制ですがレンタルの場合は業者が登録しています。基本的にPTTかと思います。

以前私がレンタルした業者のウェブサイトを貼っておきます。

また、予算が少ない場合はLINE通話などに一般的なイヤホン・ヘッドフォン、場合によっては最近流行りのClubhouseのプライベートルームなども使用できそうです。どちらもLatchです。

Zelloというインカムアプリも良さそうです。基本PTTで設定によりLatchも利用可能、複数チャンネルへの参加なども出来ます。個人用のZello Freeでも十分使えますし、よりサーバーを強化したい場合はZello Workの使用もできます。

8.6 スイッチングの考え方

スイッチングの画の決め方は、様々な参考動画を見て学ぶのが速いかと思います。また、既存のマルチカメラで撮影されたライブ動画があれば、それを使って練習するのも良いでしょう。

トランジションにはスイッチャーによってディゾルブ(フェード)カットワイプなど様々なものがありますが、音楽ライブの場合にはフェードとカット主体の構成が一般的です。

例外も多くありますが、基本的にはフェード柔らかいイメージバラードなど、カット硬いイメージテンポ速目の曲に適しています。

また、フェードは曲のテンポやリズムとずれていてもあまり気にならない一方で、カット曲に合ったタイミングで切り替えないと不自然になりやすい、という見方もできます。ワンオペでスイッチングに集中できない時などはフェードを多く使用するのも1つの手です。

また、Tバーというカメラからカメラのトランジションの程度をマニュアルで調整できるものを使ってフェードの程度を自由に変えることもできます。ライブ用途で多用されやすいのは、1つのカメラ(全体やグループショット)の上に1~2人程度のショットが浮いているようなもの。ATEM Miniシリーズでは物理バーはないもののソフトウェアでTバーが使用できます。

↓こういうやつ

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スイッチングは基本的に経験がモノを言うので練習あるのみ!!です。


次回はレンタル業者についての記事です。

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