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創作品集

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童話 ショートショート 短編 詩 など書いたものをまとめました。
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2021年7月の記事一覧

童話 野良猫トラと黒猫ルナ

トラが大好きな公園に大きな切り株があります。 この切り株の上で昼寝するのがトラの日課です。 いつものように気持ちよく寝ていると声が聞こえてきました。 「ちょっとそこどいてくれない」 寝ぼけ眼で声のする方に顔を向けると、ピンと真上にしっぽを立てた真っ黒い猫がツンと澄まして立っていました。 「ねえ、早くどいてよ」 「なんだよせっかく気持ちよく寝ていたのに」と不機嫌そうに答えたものの、 トラは一目でその黒猫に恋をしてしまいました。 「君の名前はなんていうの?」 「ルナ」

トラとジョージ 不思議な村

月夜の晩 いつものようにトラがジョージの荷台で ウトウトしていると ジョージが話しかけました 「ねえトラちゃん。君を乗せてあげるから いっしょに旅に出ないかい」 びっくりしてトラは飛び起きました 「えっ、本当に?それは楽しいだろうなぁ」 いつも閉まっている窓ガラスが その日は少し開いていて ぴょんとそこから運転席に滑り込みました 「わぁ、運転席ってカッコイイなぁ。僕が運転してもいいのかい?」 「うんいいよ。」 トラは運転席に座ってハンドルに手をかけました ブルルン

創作童話 王様とレイラ

昔ある国に、レイラという名の、貧しいけれどいつも希望を持っている、心の優しい娘がいました。レイラはお城のお庭係のおじいさんと二人で暮らしていました。 ある日、レイラがいつものように、美しい声で歌を歌いながらバラの手入れをしていると、王様とお妃様がバラの庭園を散歩されました。レイラの歌声をたいそうお気に入られたお二人は、毎日それを楽しみにしていました。王様はお妃様をまるで宝物のように大切にされて、幸せに暮らしていました。レイラも嬉しくてたまりません。大好きな王様が幸せで国中の

ショート ショート 「しゃべる家」

俺の住むアパートのすぐ近くに住宅展示場とやらが出来た。 まあ、結婚どころか、一生彼女も出来ないだろう俺にはマイホームなんて、夢物語に過ぎない。 日曜日の午後、何処にも行く宛もないので暇つぶしに覗きに行った。 どのモデルハウスも最新の電化製品が配置され、そんな豊かな生活をしているような気分に錯覚させられる。結局、35年とか超長いローンに追われることになるんだろうな。俺には関係ないけどね。 「いかがですか、お気に入りのモデルハウスは見つかりましたか?」 住宅販売会社の社員が

青い空の写真を見た。雲がさっさと流れている。私はいつ、本当の空を見上げたのかも忘れた。