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運転士小川君がこわいもの_20180909京成杯AH

「まもなく、にいつー、にいつです」
小川君はこの夏休み、両親の実家である新潟県新津に遊びに行ってきた。
そして東京に帰り、電車ごっこをしていた。
僕と小川君はランドセルで帰る児童センターに通っていた、小学3年の同級生。
その小川君は大の鉄道ファン。
いつも児童センターでは机と椅子を並べて電車の運転士と車掌をやっていた。
特に好きなのが上越線「特急とき号」で、上野駅から新潟駅までひとりで「出発しんこー!」とやっていた。

小川君は友達も少なく、ひとり遊びが得意だった。
僕といえば、小川君同様、夏休みには両親の実家である岩手県へ東北本線や常磐線を使って帰るので鉄道は好きだったが、それ以上に身体を動かすことのほうが好きだったので、いつも暴れまわっていた。
それでもたまに僕が、運転士小川君の後ろに乗客として椅子に座ると、小川君はたれ目を一層垂れて「特急とき、まもなく発車いたしまーす!」とうれしそうに声を張り上げた。
運転の合間に小川君は新潟自慢を話してくれ、故郷で遊んだことを語ってくれた。
故郷が大好きな僕は小川君の話を聞くのが好きだった。

小川君は、新潟帰りのおみやげに名物笹だんごを持ってきた。
児童センターのみんなはそれをおいしくいただいた。
じつは、おみやげに小川君が持ってきたのは笹だんごだけではなかった。
赤紫色したアケビの実をたくさん持ってきたのだった。
果物として食べるそうだが、こちらは食べたことがないのか、みんな敬遠していた。

ドッチボールで汗をかいて、運動室から集会室へ戻ってきた僕は、異様な光景を目の当たりにした。
小川君が泣かされていたのだ。
先生もいなかった集会室で、2,3人の男子と女子がアケビを小川君に投げつけていたのだ。
ところどころ壁が赤く染まった集会室を泣き叫びながら逃げ惑う小川君。
それをおもしろがって、アケビを投げつける仲間。
「こわいよー、アケビがこわいよー」と叫べば叫ぶほど、アケビ投げがエスカレートする。
たしかにちょっとグロテスクなアケビだが、なにも泣かなくても・・・。しかも虫のように動くわけでもないのに。

そういえば、昨年2年生のときも小川君は夏休みの終わりにアケビを持ってきて泣かされていたのを思い出した。
怖いんだったら、アケビを持ってくんなよー。

正義感の人一倍強い僕は、アケビを投げつけて喜んでいた奴らに向かっていった。
そこに置いてあったたくさんのアケビの中からひとつを手に取った。
そして、アケビを投げつけた。



小川君に。

ごめん、小川君。
だって、投げられたいからアケビ持ってきてるんだろ?
また特急ときの乗客になってやるからさ。許して。


(写真はフリー画像)

◇◇

さて、本日は京成杯AH。
新潟で活躍した⑭ワントゥワンを狙う。
新潟競馬の関屋記念で2着し、この中山競馬に戻ってきた。
中山1600m外枠は大変不利だが、騎手戸崎はこれを見事に覆し、大外追い込む印象がある。
さあ、特急ときが新潟から上り調子で、マイルCSへ出発進行!

(勝馬投票は自己責任でお願いします)
[今年の当たり]
〇新潟記念 メートルダール 6人気2着 ←New
〇エルムS ドリームキラリ 3人気2着 
◯安田記念 アエロリット 5人気2着
◯高松宮記念 ナックビーナス 10人気3着
◯阪神大賞典 サトノクロニクル 4人気2着
◯弥生賞 ワグネリアン 2人気2着
◯京成杯 コズミックフォース 2人気2着

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