福山市研究のための資料まとめ

1 はじめに

 雑談で地域調査の話になった時、「なぜわざわざ縁もゆかりもない土地の調査をするのか。"地元"の調査をしないのはなぜか。その熱意を"地元"に注げば良いのではないか」(大意)ということを言われたことがある。
 この言葉を真に受けるなら、実家周辺の調査を開始しても良いのではないか、という気がしている。それから、実家に強制送還されたときに自分に何ができるか、ということも多少考えている。
 そもそも研究における問いの方が何よりも重要で、土地ありきで何か調べ物をする、ということは自分の関わっている研究分野ではあまり喜ばしく思われていないのかもしれない。件の発言はいわゆる研究に携わってはいない方からのものであったが。進行中で頓挫している調査が頓挫した理由もまさしく問いの所在の不明さにあるように思う。
 それは置いておいて、ここでは小生が眠れない夜にたまに巡回している福山市関連のwebサイトのいくつか、そして(さすがにそれだけでは内容が……と思い慌てて調べなおした)福山市周辺をフィールドとした研究書のいくつかをまとめておきたい。
 例によって情報を集めるだけ集めて満足する(特に内容を掘り下げない)パターンだがご寛恕いただければと思う。

2 福山市関連のwebサイト

・「寮管理人の呟き」
https://blog.goo.ne.jp/tanezaka

 建設中、解体中の家屋建物、商業施設の様子が逐一アップロードされている。ここで実家周辺の様子を探ったりしている。

・「福山自動車時計博物館」(ブログ)
http://blognews.facm.net/

 菊屋マンションが母体の文化財団によって運営されている博物館。ブログで紹介されていたが、実家近所の自動車販売店の歴史が意外に古く驚いた。当時の貴重な写真も見ることができる。

・「15年前の福山市上空から見た写真のページ」(株式会社電子機器)
http://www.densikiki.co.jp/koukindx.htm

 「15年前」とあるが現時点から15年前ではなく、実際は1987年の福山市の航空写真を掲載している。航空写真で言えば、福山駅前商店街の以下のwebページも参考になる(http://sannomaru.com/?page_id=4801)。

・「福山駅前商店会」
http://sannomaru.com/

 「ご案内」のページ(http://sannomaru.com/?page_id=124/#2)にある「商店街ヒストリー」は概史としてわかりやすい。ここ10年は閉店や取り壊しの記述が多い。

・『Wink福山/備後版』
http://wink-jaken.com/category/magazine/wink-fukuyama/

 地域情報誌(webサイトではないがご容赦)。1985年の創刊。母親がたまに買って読んでいた(今は知らない)。

3 福山市関連の研究書

・張楓編著,2020,『備後福山の社会経済史――地域がつくる産業・産業がつくる地域』日本経済評論社.

地方都市に花ひらく多様な企業の成功と蹉跌を、戦前・戦後を貫く視角から鋭く描きだす。地域で技術や資源を継承し発展する中小商工業から、東京一極集中を問い直す野心作。(日本経済評論社の紹介より)
http://www.nikkeihyo.co.jp/books/view/2549

 未読。ちょうど刊行されたばかりの研究書である。書籍情報を見た瞬間「うわ、やられた」と率直に思った。もう自分が手を出す余地は特に無い気がしている。

・藤井正夫,1974,『備後福山社会経済史――瀬戸内型貨幣商品経済の成立・その発展と停滞』児島書店.

 『備後福山の社会経済史』とタイトルが似ており迷う。内容が未知数すぎる。同名著者による藤井正夫,1977,『福山市の成立と発展』という書籍もあるが、売り物なのかがよくわからない(出版社が「藤井正夫」になっている)。著者の藤井正夫の来歴もよくわからない。1947年から1955年まで福山市長を務めた藤井正男と混同しそうになった。

・森久聡,2016,『〈鞆の浦〉の歴史保存とまちづくり――環境と記憶のローカル・ポリティクス』新曜社.

風光明媚な瀬戸内海の港町〈鞆の浦〉。道路建設か歴史遺産の保存か,長年まちを揺るがしてきた鞆港保存問題の全容を初めて解明。鞆の浦の歴史文化,産業と社会構造,政治的伝統を背景に,歴史的環境が守る人々の紐帯,裁判終結後のまちづくりの方向性を示す。(新曜社の紹介より)
https://www.shin-yo-sha.co.jp/book/b455519.html

 これも恥ずかしながら未読。『社会学評論』『環境社会学研究』『日本都市社会学会年報』『ソシオロジ』に書評が出ている。地域社会学会奨励賞、環境社会学会奨励賞を受賞している。『社会学評論』の書評を以下で読むことができる。

片桐新自,2017,「森久聡著『〈鞆の浦〉の歴史保存とまちづくり――環境と記憶のローカル・ポリティクス』」『社会学評論』68(2): 311-313.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsr/68/2/68_311/_pdf/-char/ja

・似田貝香門・蓮見音彦編,1993,『都市政策と市民生活――福山市を対象に』東京大学出版会.
・蓮見音彦編,1983,『地方自治体と市民生活』東京大学出版会.

広島県第2の都市,福山市を対象とする地域社会学の実証研究.1970‐80年代の「転換期」における都市自治体の都市政策・都市計画・地域政策の特質を,「地方財政危機」の克服過程(財政再建)に焦点を据えながら,詳細に究明する.(東京大学出版会の『都市政策と市民生活』の紹介より)
http://www.utp.or.jp/book/b301594.html

 「調査地としての福山市」と言えばこの調査になるのだろうか。修士1年の時に少し読んでみたが、研究史であったり、アプローチであったり、財政の話であったり、全然読むことができなかった思い出がある(それももうn年前で進歩が感じられない……)。
 蓮見音彦・似田貝香門・矢澤澄子編,1990,『都市政策と地域形成――神戸市を対象に』東京大学出版会.は姉妹編。門外漢から見れば若干ややこしいのは、似田貝・蓮見編(1993)は「第2次福山調査」(1989年~1990年)の成果であり、「第1次福山調査」が1976年から1980年にかけて実施されている(この成果は蓮見音彦編,1983,『地方自治体と市民生活』東京大学出版会.)。なお、このあたりの年譜については、小内(1995)を参考にした。

4 おわりに

 特にオチはない。自宅に『人間 渋谷昇』という地元の名士の伝記があるが、このような本も地道に買い集めていきたい(渋谷昇は福山通運の創業者)。進捗がもしあれば適宜アップしていくことにしたい。

(余談)新日本DEEP案内にも福山市の歓楽街を中心にした記事がアップされている。

・参考文献
片桐新自,2017,「森久聡著『〈鞆の浦〉の歴史保存とまちづくり――環境と記憶のローカル・ポリティクス』」『社会学評論』68(2): 311-313.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsr/68/2/68_311/_pdf/-char/ja
小内純子,1995,「地域社会学における総合的実証研究の意義と今日的課題」『北海道大学教育学部紀要』65: 167-81.
https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/29449/1/65_P167-181.pdf

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