エンブレスドリームス 創作大賞2024 漫画原作部門 第2話

#創作大賞2024 #漫画原作部門

第2話 ブラフ

    チップを各自に配布する。

加藤あかり「大橋先輩、この円形のチップって何に使うんですか?」

大橋佳織里「チップはポーカーゲーム内での使用される重要な要素。基本的にチップの量はハンドの強さを示し、自分のハンドが強い勝てると思えばチップを増やしたり、他のプレイヤーが増やしたチップを見て、自分の方が強いと思えば同額、またはそれ以上の額にしてみたり、逆に弱いと思えば勝負を降りることができるの、その場合、勝負したチップは戻らないから気をつけて慎重に判断して」

    部室のドアが勢いよくバタンッと開き、男が入ってきた。

木ノ内哲太「ちょっと待ったーーー」

大橋佳織里「哲太、うるさい!!そして、来るの遅い!!」

木ノ内哲太「佳織里ちゃん、勘弁してや。そんなにワイに会いたかった?」

加藤あかり「明石先輩、あの人は誰ですか?」

明石誠志郎「木ノ内哲太で僕のライバルかな?」

木ノ内哲太「おう、明石!!今日こそ決着つけてやるからかかってこいや!ヘッズアップで勝負や!」

明石誠志郎「すまない、いまから新入生たちと練習試合するところだっただけど哲太もどうだ?やらないか?」

木ノ内哲太「ふん、明石!ワイのことライバルだと思っててくれたんか?」

大橋佳織里「え?そこ!!ちょっと違うでしょう!練習試合やるの?やらないの?どっち?」

木ノ内哲太「よっしゃ!今日遅れて来てしもた、ワイがアホで悪かったわ!ええで、お前ら全員倒してやる!ワイの名前は木ノ内哲太!ポーカーの王者になる男!ポーカーの真髄を見せてやる!覚悟しろや」

大橋佳織里「はいはい、哲太。どうでもいいからやるならさっさと席についてくれる?」

    皆が席に着き、大橋佳織里は華麗な手つきでカードをシャッフルし始めた。
    最初に、カードをテーブルに置いて手際良くワッシュ(混ぜる)し、カードの順番を完全にランダムに入れ替えた。
    次に、リフル(折り返し)駆使してカードを半分に分け、巧みにカードを重ねた。
    そして、ストリッピング(カードの面の剥がし)を行い、デック内のカードを一枚ずつ取り出し、再度組み合わせた。
    最後に、デックカット(カードの断面を切る)を行い、さらなるランダム性を加えた。
    彼女のシャッフルは完璧なものであり、見ている者たちの目を釘付けにした。

加藤あかり「大橋先輩、すごくかっこいいです。また今度私にもやり方教えてください」

大橋佳織里「ありがとう、加藤さん。もちろん、いつでも教えるよ。私もポーカーを楽しみたいから、ディーラーの仕事も覚えてもらえたらありがたいかな」

加藤あかり「わかりました。ディーラーも私、頑張ります!」

大橋佳織里「今回は練習試合だから声を出しながらやりましょう!では、ブラインドを設定します。SBが望月くん、BBが明石くん最初のブラインド出して」 

望月一也「………はい」

明石誠志郎「じゃあ、BBも出すよ!」

    ディーラーは手際よく、SBから順番にプレイヤーに1枚ずつカードを配り始めた。
    一周目が終わり、再びSBから始めて二周目もスムーズに配られた。
    手にしたカードを静かに受け取り、自分のハンドを確認しながら備えていた。
    テーブル上には各プレイヤーが並んでおり、SBとBB以外にはUTGという最も不利なポジションに座る木ノ内哲太は、最初にプリフロップでアクションを行うため、みんなから銃口を向けられているような視線を感じていた。
    しかし、彼は微笑みながら自信を見せた。

木ノ内哲太「UTGのこの視線ホンマ最高やで、オールイン!!」

石田拳斗「!!!いきなり1ハンド目からオールインですか?厳しいですね。俺はここはフォールドします」

    加藤あかりはハンドを両手でしっかり持ち不安そうに眺めていた。
    テーブル上のプレイヤーたちの雰囲気に圧倒され、初心者の彼女はどうしたらいいかわからない。

加藤あかり「え、私、どうすればいいんでしょうか?このカード、強いのかな?それとも弱いのかな?」

    彼女の声は小さく震えており、自信のなさが滲み出ていた。
    周囲のプレイヤーたちは彼女の悩む姿を見つめ、微笑みながら待っていたが、一人を除いてまたあの男が仕掛ける。

木ノ内哲太「ヘッヘッヘ、おい、新入生まさかワイのオールインにビビってるのか?それともお前、ポーカーの神に挑む勇気があるのか?手加減してやるから、さっさと参加しろよ!」

大橋佳織里「コラッ!!哲太、言い過ぎ。いつになったらちゃんとポーカーのルールを理解するの?こんな煽りはマナー違反だって言ってるでしょ!ポーカーは単なる勝ち負けだけじゃないの。戦略やマナーも重要なのよ。加藤さん、ポーカーは心のゆとりが必要なの。他のプレイヤーに惑わされず、自分のプレイに集中して」

加藤あかり「うーん。どうすればいいか迷ってしまう。でも、まだ1ハンド目でポーカーに慣れていないから…すいません、フォールドします」

木ノ内哲太「ナイスフォールド、お前もなかなかいい判断や!さすがにワイに挑む勝負にはまだまだ勇気がいる。次は…おい、お前、なんかお前どこかで見たことある気がするけど、まあいいや。で、どないする?」

望月一也「………フォールド」

木ノ内哲太「チッ、明石!!ここは当然勝負だろう?まさか下りたりしねぇよな?それともただの負け犬になるのか?まあお前は逃げ出すような奴じゃねぇのはわかってる、さっさとハンドを見せろ!!」

明石誠志郎「え?普通に下りるけどハハハ。だって哲太のUTGのオールインで僕はBB無理無理勝てないよ。またそのうちやろうよ」

木ノ内哲太「どいつもこいつもあんたらホンマに笑えるわ、ワイのハンドは最弱の72oだ!ハッハッハ。さあ、どんどん行こうか」

明石誠志郎「ハハハ、やられたよ。哲太のユーモアには本当に頭が下がるよ。ナイスブラフ」

大橋佳織里「………哲太。そろそろ黙ろうか?明石くんも部長だから注意くらいしようね」

加藤あかり「あのー、ブラフって何ですか?」

大橋佳織里「えーと、ちょっと待って私が、ちょっと哲太のことを教えてあげましょうか。実は彼、相手を欺くことに長けていてアグレッシブプレイヤーだよ!周りには知られたくない秘密も多いみたい。ちなみにブラフっていうのはタイミングと使い方が本当に大事で、うまく使えば相手を惑わせることができるけど、失敗すると自分が窮地に立たされることもあるから、注意が必要だよ。だから、彼の言っていることは本当かどうか、常に疑っておいたほうがいいかも」

木ノ内哲太「佳織里ちゃん、勘弁してくれ!今はディーラーやろ!それ言ったらあかんって厳しいなホンマに!」

明石誠志郎「ハハハ、確かにな。勝負中にそんなこと言われたら困るよな」

大橋佳織里「ごめんごめん、ディーラーとして公正公平に新入生歓迎試合として許して」

加藤あかり「あはは、先輩方ありがとうございます。とても仲がいいですね!私もこれからブラフもちょっとずつ覚えていきます」

石田拳斗「あかりがブラフか。よーし、俺もみんなには負けてられないぜ!大橋先輩続きお願いします!明石先輩も木ノ内先輩にも勝つ!あかりに遅れは取らないぜ。でも、幼なじみとして成長する姿を見るのは楽しみだ。あかり頑張れよ!」

加藤あかり「ありがとう、ケンティー。私も負けないから」

望月一也「………」

【つづく】

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