クロス・ロードで悪魔に魂を売り渡したギタリスト

 そんなに頻繁に聴くわけじゃないけど、時々無性に聴きたくなるアルバムがある。僕の場合、そんなミュージシャンの1人がロバート・ジョンソンだ。

 1911年にアメリカミシシッピ州で生まれた彼は、アコースティック・ギターを片手にアメリカ大陸を渡り歩いた流しのブルース・ミュージシャンだった。エリック・クラプトンが尊敬するギタリストとして彼の名前を挙げている。クラプトンがカバーしたロバート・ジョンソンの曲の1つが「クロス・ロード」だ。今ではクラプトンのオリジナル曲のような印象もあるが、この曲のオリジナルはロバート・ジョンソンである。

 彼には「クロスロード伝説」というものがある。あまりに巧みなギターテクニックに驚いた聴衆の中から、「十字路(クロス・ロード)で、悪魔に魂を売り渡して、それと引き換えにギターテクニックを身に着けた」というものである。

 そのせいかどうかは分からないが、彼は1938年に27歳で謎の死を遂げている。残されたレコーディングは29曲(42テイク)。写真も数枚しか残っていないらしい。まさに伝説のミュージシャンである。

 僕がロバート・ジョンソンに興味を持ったのは、やはりエリック・クラプトンを通じてである。彼のお気に入りのミュージシャンとして名前は知っていたが、そのギタープレイや歌声は聴いたことがなかった。

 2011年に、彼のレコーディングした全曲を集めた「The Centennial  Collection」というCDが発売された。

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 初めて聴いた彼のギタープレイや歌声は、クラプトンの演奏に慣れた僕にとって、すごくシンプルに響いた。

 現代のギタリストに比べれば、テクニック的に特別すごいとは思わない彼のプレイだが、1930年代には最先端のプレイだったんだろうなと思う。

 プチプチ・ノイズの向こうから聞こえてくる彼の歌声は、エネルギッシュというよりは、渋い。

 42曲を通して聴くのは正直しんどいし、夢中になって毎日聴きましたというアルバムではない。

 でも、ふとした時に、彼の歌声を、彼のギターを無性に聴きたくなることがある。でも5~6曲聴くと満足してしまい、今でも全曲を通して聴いたことはない。なんとも不思議なアルバムである。

 今ではアップル・ミュージックなどのサブスクでも聴けるので、興味を持たれた方はぜひ聴いてみてください。

 クロス・ロードで悪魔に魂を売り渡したギタリストのプレイを。

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