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うましき台所帖 第5回「漁師直伝! 佐々木一成さんと身につける魚のさばきかた」レポート

うましき台所帖とは?

2022年7月より、秋田市文化創造館の1階キッチンスペースを拠点に開催している料理教室。毎月、講師を代えて開催しています。(2023 年3月までの全9回)
ここで学ぶのは料理の手順やコツだけではありません。ともに手を動かし、味わいながら、講師と参加者がともに語り、学び合い、この土地の魅力や生き方をあらためて考える場です。


うましき台所帖・第5回 
漁師直伝!佐々木一成さんと身につける魚のさばきかた
■ 講師:佐々木一成さん(にかほ市) 
■ 日時:2022年11月12日(土)
■ 場所:秋田拠点センターALVE 4階 調理室


秋田県にかほ市で定置網漁船に乗る、漁師の佐々木一成さん。小さい頃から魚が大好きで、魚屋さんで働いていたときに魚のさばき方を身につけ、今では漁師として魚を獲ったり、さばいて調理する様子をYouTubeでも配信しています。
もっと魚を食べて、新鮮な魚が獲れる秋田の暮らしを楽しんでほしいとの思いを持つ一成さんと、魚のことや海のことを一緒に学びます。


プロの技を直伝! とれたてアジを捌いてみよう

前半は、一成さんによる実演を交え、細かなコツや手順を学んでいきます。
この日捌くのは、一成さん自ら獲ってきたアジ。

一成さんによるデモンストレーションと図解のもと、道具は濡らしてよく拭くこと、包丁の刃の向け方、こまめに魚の血を洗い流すころ、包丁を大きく動かすことなど、大事なポイントを確認しながら捌いていきます。

3匹、4匹……と繰り返し、だんだんと上手に捌けるようになってきたところで、一成さんお手製の鮭のアクアパッツァをいただきながら、お話を伺っていきます。



トークの時間

【昨日より今日のほうが美しく】

父が象潟で漁師をしていたこともあって、小さい頃から自分も漁師になりたいと思い続けてきました。でも、父の時代とは違って、量も獲れないし、値段も下がっている水産業。進路を考えるなかで、父から「この仕事は厳しいし、地元にいるだけでは視野が広がらないから、地元以外の場所で学んできては?」と言われたこともあり、県外に出ました。

水産系の大学に進学して、その後は神奈川の鮮魚店に就職しました。魚屋に関わればいつか漁師になったときに生かせるのではないかという思いからだったんですが、働いてみると「このあいだ勧めてもらった魚、美味しかった!」など、言ってもらえたりするんですよね。それが嬉しくて、「昨日より今日のほうが美しく」という気持ちで、毎日魚を捌きながら、基礎を身につけていきました。

【魚屋から、漁師へ】

その後、父が亡くなったこともあり地元に戻って、漁師になりました。漁師というのは、太陽とともに、自然とともにする仕事。太陽が昇る頃に仕事に出て、太陽が沈む頃に終わる。天気が悪い日は仕事に出られなかったり。「鳥海山に雪が降ったな」とか、春夏秋冬を肌で感じながら働くのはすごく楽しいですね。
最初の3年は厳しかったけれど、仕事を覚えて、親方から信頼されるようになってきた頃から、だんだんと面白くなってきました。

漁師を始めて、あらためて気づいたのが「魚屋というのは、ありがとうって言われる仕事だった」ということ。一方、漁師は、魚を獲って、市場に出したらそこで終わり。誰が食べるのかわからないし、食べる側も誰が獲った魚なのかわからないんですよね。

「きつい」「稼げない」「汚い」「臭い」「結婚できない」の5Kの職業とも言われて、従事者が減っているし、父も反対していた仕事。でも、魚屋もやってきた自分だからこそ、漁師をしながら魚を食べる人との接点を作ることができるのでは? と思うようになったんです。

【魚の楽しさを伝えるために】

そこからは、能動的に動けるようになっていきました。自分で始めたことの一つが、インターネット上で生産者や漁師から直接買い物ができる「ポケットマルシェ」への出店です。始めて3年ほどになりますが、遠くに住むお客さんからも「今年もイクラが届くのを楽しみにしています!」などとメッセージをいただけて、コミュニケーションがとれるんです。

他にも、「漁tuber(リョウチューバー)」と名乗って、自分のYouTubeチャンネルを通して、捌き方、調理法、漁業の現場などを発信したりもしています。

まずは、魚を楽しんでいただけるように発信していきたいと思っています。スーパーの切り身でもいい。魚やさんにいって注文して捌いてもらうのでもいい。
魚は、産地や季節による味の違うのも魅力。例えば、ハタハタは12月が旬と思われがちですが、あれは産卵にきたものなので、身よりもブリコが好まれます。でも、身を食べるなら6月くらいが脂がのっていて美味しいんです。
そういう魅力もどんどん伝えていきたいですね。

そして、一番やりたかったのが、今日のような教室です。みなさんの反応をダイレクトに感じることができる、それが、漁師をやっていての一番の喜びです。今日は、その新たなスタートになったと思います。


参加者の声

  • 魚捌き、めっちゃ楽しくて、魚の沼にどっぷりハマりそうです!

  • 近所にある魚屋さんにも行ってみようかなという気持ちになりました。

  • 包丁の違いで切れ方が違う! 道具の大切さもよくわかりました。

  • 今までネットで見ながら捌いても全然できませんでしたが、今日は驚くほどきれいにできて、こういう機会をもっと学生時代や若いうちに経験できたらよかったな〜と思いました。

  • 実演を見て納得しても、自分はまだやっぱり下手で、回数をこなして上手になっていきたいと思いました。

  • スーパーで秋田県産の魚をみても、自分では捌けないし、料理のレパートリーもなかったので買う機会がありませんでした。……でも食べたい!今日教わったことを生かして、チャレンジしていきたいです!


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