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うましき台所帖 第3回「秋田の豆腐をつなぐ。矢吹史子さんとさがす豆腐の楽しみ方」 レポート

うましき台所帖とは?

2022年7月より、秋田市文化創造館の1階キッチンスペースを拠点に開催している料理教室。毎月、講師を代えて開催しています。(2023 年3月までの全9回)
ここで学ぶのは料理の手順やコツだけではありません。ともに手を動かし、味わいながら、講師と参加者がともに語り、学び合い、この土地の魅力や生き方をあらためて考える場です。


うましき台所帖・第3回
「秋田の豆腐」をつなぐ。矢吹史子さんとさがす豆腐の楽しみ方
■ 講師:矢吹史子さん(秋田市)
■ 開催日:2022年9月2日(土)
■ 会場:秋田市文化創造館 1階キッチンスペース

講師の矢吹史子さん(秋田市在住)

現在、秋田市には豆腐屋は4軒ほど。数年後には1軒もない……そんな未来が来てもおかしくないなか、秋田の豆腐文化をつなぐべく、この春より大豆生産者、加工業者、消費者をつなぐ「豆腐百景」というプロジェクトをスタートさせた矢吹さん。じつは、ご実家が豆腐屋なんです。
豆腐屋だからこその豆腐の美味しい食べ方を教わりながら、秋田の豆腐の今を紐解き「10年後もつづく美味しい豆腐」について一緒に考えていきます。


変幻自在! 豆腐のいろいろな食べ方

前半は、豆腐がどうやって作られているのかの解説や、参加者のみなさんと
「電子レンジで作るよせ豆腐」「豆腐の麹漬け」
「とろとろ湯豆腐」「豆腐から作る厚揚げ(デモンストレーション)」
など、変幻自在な豆腐の魅力を体験していきました。



トークの時間

【豆腐を編集する?】

私は、実家が豆腐屋なんですが、これまでは豆腐には全く関係のない仕事をしてきました。とくに、この10年は秋田県のフリーマガジン「のんびり」や、ウェブマガジン「なんも大学」などの制作に携わり、秋田県内をくまなく巡って取材、編集してきました。

秋田県フリーマガジン「のんびり
秋田県ウェブマガジン「なんも大学

そんななか、昨年「なんも大学」の更新が終了となったことを機に、自分自身がこれからどう進もうか考えるタイミングがきました。そのとき一番に浮かんだのが「食にまつわる編集をしたい」という思いでした。

秋田は、いろいろなことが最下位だったり、課題とされるテーマがたくさんある県。暮らしているなかで劣等感を持つことも多いのですが、私は、こと食文化に触れるたびに、秋田ならではのものや人々の実直さを感じることができて、この土地に暮らすことを誇らしく思えたんですね。

そこからさらに「自分だからこそできることは何か?」と考えたときに見えてきたのが、小さい頃から見てきた「豆腐」のことでした。秋田県は米の代わりとして大豆の栽培を推奨し、農家さんはたくさん大豆を作っているにもかかわらず、豆腐屋がもう数軒ほどしかないという状況。そんないびつな豆腐の現状を、これまで培ってきた編集の視点から見直せないかと思ったんです。

そして、豆腐本来の魅力を伝えようとしたとき、最初にやるべきは、これまでのように文章にして発信することよりも「まずは食べてもらうこと」と考え、2022年7月に豆腐のテイクアウト店「豆腐百景」をオープンしました。

【豆腐百景というチャレンジ】

豆腐百景のメニューの一つに、秋田県産大豆で作ったできたての温かいよせ豆腐をお客様の要望に合わせて量り売りする「できたてよせ豆腐」というものがあります。

できたてよせ豆腐

いま、秋田で「豆腐を買う」という行為はほとんどがスーパーでのもの。いつでも手軽に買える豆腐があるというのは素晴らしいことです。でも、それとは違う価値を持った豆腐を提供することが、町の豆腐屋が残っていく方法の一つではないか? そう思って始めた一つが、この量り売りです。

この店を通して、できたての豆腐の美味しさを知ってもらいたいというのが一番。
そして、量り売りの際にはお客様に容器を持ってきていただくことを推奨しています。こうすることで、家族構成や用途に合わせて無駄なく購入いただけますし、容器の廃棄の問題にもひと役買えるのではないか、と。
さらに、「鍋を持って豆腐を買いに行く」という、豆腐屋のノスタルジー的なところにも訴えられるかな?とも思っています。

店頭では、ほかにも、油揚げと厚揚げの間のような食感の揚げ「よじろあげ」や、豆乳と秋田にまつわる食材を割った「トロトロ豆乳」、豆腐、あんこ、アイスクリームでできた「おとうふサンデー」など、豆腐から発展したメニューも提供しています。

よじろあげ
トロトロ豆乳ドリンク

以前、うちのスタッフが「この豆腐を食べるまで、豆腐は仕方なく食べるものだった」と言っていたことがあって、それが結構ショックで。
もしかしたら、「なんとなく体に良さそうだから」「安いから」「カサ増しになるから」というような理由だけで豆腐を選んでいる方も多いのかもしれません。

でも、今日みんなで実践したように、豆腐は素材の力がダイレクトに感じられる上に、変幻自在でアイデア次第でいろんな楽しみ方ができます。

豆腐百景の商品を通して、まずは「豆腐って美味しい、楽しい」と思ってもらえるように積み重ねていくことが、続いていくことへの一歩になるのではないかと思いながら、動き始めたところです。


参加者の声

  • 豆腐の具体的な美味しさに出会い、ときめきました。

  • 豆腐をただ摂取するだけでなく、自分の好きな豆腐の味を作りながら見つけたいと思います。

  • 矢吹さんの編集や食に対する思いが知れて、ますますこれからのお仕事に期待したくなりました。

  • 目から鱗の連続でした。豆腐料理の多岐にわたる知識を得ることができ、楽しい時間を過ごすことができました。

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