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【US旅日記02】UBERドライバーのアメリカンドリーム

こんにちは、UMA(ゆま)です。寒くなってきましたね。きょうは、10 月に手製本の展示でアメリカに行ったときのことを少し書きます。よろしければおつきあいください。


帰りの飛行機は朝6時発。宿泊していたプロビデンスからT・F・グリーン空港までは約10キロ。近いとはいえ、一応2時間前にチェックインしようと思うと、4時前にはUBERを呼ばなくてはならない。

この旅のあいだ、UBERは本当に便利だった。事前に聞いて通りだが、アプリで簡単に呼べる。近くにいるドライバーが来てくれるので待つこともないし、親切なことに「あと何分で着きます」という通知も入ってくる。事前に料金がわかるのもいい。そして料金は一般のタクシーより安い。支払いは登録したカードですませられる。またアプリではドライバーの評価も公開されていて、評価が低いと選んでもらえないので、ドライバーはみんなきちんとしていてフレンドリー。車もきれいにしている。

朝3時45分にホテルの前に来てくれたUBERのドライバーはクレイトンさん。アイルランド出身だという。UBERは滞在中5回利用したが、いつも外国人だった。出身を聞くと、日本なら県名や地方名が返ってくるところで、どこかの国の名があがる。ロードアイランドは外国人の割合が一番高い州だというのも納得がいく。

アイルランドから来ている人も多いらしい。国ごとのコミュニティみたいなものはあるのかと聞くと「あるけど、僕はあんまり関わっていないんだ。もう、仲間と騒ぐ年でもないし」との答え。でも、それほど年にも見えない。聞くと31歳とのことだった。アメリカに来て10年。UBERドライバー歴は4年。

こんな時間に来てくれたので、どんな時間帯で働いているのかと思ったら、UBERドライバーの仕事は夜中から朝方が中心だという。昼間は青果店に勤めているらしい。「きょうもこれが終わったら帰って寝て、3時間したらまた起きて仕事にいく」

「とにかくアメリカは金がかかる」

やれやれという感じでクレイトンさんはいう。それは短い滞在中でもつくづく感じていた。私自身もぜいたくができる身ではない。できるだけ安く済ませようと、朝食はスーパーでサンドイッチとジュースを買ったりしていたが、それでも10 ドルを超える。1500円以上。どんなに節約して過ごしても、アメリカで日本と同じ生活をしようとしたら、どれだけかかるのだろう。

「仕事を2つしていたら、スマホも2台。その電話料金だけでたいへんだよ」

外国人が多いとはいえ、自国に帰る人も増えているという。あなたは考えたことはないの?考えることはあるよ、でもね。

「アイルランドを出る時、親に『10年頑張れ』って言われたんだ。それ以来、ずっと働きづめで、ダブルワークまで始めて、稼いでも稼いでも、物価がどんどん上がって出ていくばかり。ちょっと手元に残ったら税金に取られる。でも、ここでやめても、次にどうしたらいいかわからない」

日本の給料はどれくらいなのかと聞くので、知っているかぎりで答えたらそれで生きていけるのかとびっくりされる。「いい国だ」

いい国なんだろうか? コロナによる制限がなくなって、日本には観光客があふれている。みんな、口を揃えて「日本はなんでも安い」と言う。でも、日本人はみな「物価が高くなってしんどい」と疲弊している。どこかで何かがねじれている。 

にわかに立ち込めた沈黙の霧の間から、空港行きのグリーンの表示が浮かび上がる。日本まで時間はどれくらいかかるんだい?シカゴまで2時間、そこから東京まで13時間。

「ほんとうに遠いんだね。僕はアイルランドからここまでの6時間より長く飛行機に乗ったことなんてないよ」

飛行機で6時間の遠いアメリカ。アメリカンドリームという言葉を思い出す。「ドリーム」という言葉のつかみどころのなさ。ただ今日も、それぞれの場所で生きていかなければいけないわたしたち。

空港で手を振って別れた。「気をつけて」と言うと、彼も「あなたも」と言う。

そう、おたがいに。どちらもまだ長い旅だから。

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