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【埼玉県東秩父村】和紙の里で楮の刈り取り体験

 もともと紙が好きです。とくに和紙が好きで、写真のプリントや写真集など、作品づくりにも使っています。今年は紙漉きにも挑戦しました。そうして、その奥深さを知り、ますます興味を深めていたところに「楮の刈り取り、やってみますか?」という嬉しいお誘いが舞い込みました。「行きます!」もちろん即答です。

 うかがった先は埼玉県の東秩父村。外秩父の山々に囲まれた、自然豊かな村です。東秩父村は、隣接する小川町ともども、1300年以上の歴史を持つ和紙の里で、この地域で古典的な技法で漉かれた紙は「細川紙」として知られています。昭和53(1978)年には国の重要無形文化財、平成26(2014)年にはその技術がユネスコ無形文化遺産に登録されました。(ちなみにトップ画像は東秩父村のゆるキャラ「わしの」ちゃんです)

 楮は地元では「かず」と読むそうです。「楮切り(かずきり)」が行われるのは、葉っぱが落ちた11月から1月の間。案内していただいた畑では、低い株から枝がびゅんびゅん放射状に伸びていました。株も枝も黒褐色。1本の枝の長さは2メートルくらいで、太さは2センチから3センチくらいでしょうか。

膝下くらいの高さの株から枝がビュンビュン伸びています

 「せっかくの体験ですから、伝統的な方法で」と鎌を渡されました。新興住宅地で生まれ育った軟弱者の私は鎌を持つのも初めて。持ち方から教わります。しなっている方向に枝を倒すようにして脇の下に抱え、鎌を斜めに引き上げるようにして一気にザクッ!……と説明通りにはなかなかいかず、とりあえず細い枝からトライ。現代は大きな枝切り鋏を使うこともあるそうですが、慣れると鎌のほうが早いとのこと。地元の方の作業を見ていると本当に早い!

地元の皆さんは鎌でさくさく作業

 休憩中にお話をうかがうと、今年は鹿の害がひどかったそうです。楮の芽は鹿の大好物だとか。畑に出入りする時に、大きな体で他の枝も折ってしまうのも困りものだと。一方、隣の小川町では鹿の害はないそうで、それは槻川(つきかわ)を渡れないからだと聞きました。

 楮は、草刈り、間引き、芽かき(脇芽を取ること、これをしないと枝だらけになって、1本の枝が細くなってしまう)など、1年の間にもたびたび手入れが必要だそうです。でも今日、楮の専業農家さんはいらっしゃらず、楮の畑は村か保存会が管理しており、なかなか行き届かないのが悩みの種とうかがいました。文化として守るのは大切でも、もともと農家の冬の副業であり、産業としては成り立ちにくい。お邪魔した楮畑で刈り取りをしていた方々も地元の有志の方でした。外から「紙が好きです」と単純に言っているのが申し訳ない気持ちになります。

 さて、刈り取った楮は束ねて、東秩父村の場合は、村が運営する「和紙の里」に運びます。ここで翌日、遅くとも数日以内に大きな釜で蒸して、そこからすぐに皮むき(「楮かしき」というそうです)の作業があります。それまで生かしておくために切った楮は水につけておきます。

刈った楮はしっかり束ねます
「和紙の里」に運び込まれます
翌日、蒸すまで水に浸けて生かしておきます

 今回はここまでの見学・体験でしたが、来月は次の作業も見せていただく予定です。知れば知るほど、和紙づくりの作業は手間と時間がかかるものだということがわかってきます。その一端だけでも、またお伝えできたらと思います。

 東秩父村、今回初めてうかがいましたが、四季折々の花が楽しめたり、長閑な牧場があったりして、のんびりするには最高の場所のようです。「和紙の里」では紙すき体験もできます。写真を撮る方にもおすすめ!絵になる場所がいっぱいあります。私も機会をあらためて、ちゃんと写真を撮る目的で行きたいと思っています。


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