見出し画像

【イタリア旅日記03】写真展&トークショー。直に話せるのはやっぱり楽しい

2022年イタリアに旅して思ったことあれこれ 〈第3回〉 

 参加した写真展 " over the edge - North South East West" が開催されたギャラリー "I. Battistella" は、観光地のヴェネツィアから45キロ離れたサン・ドナ・ディ・ピアーヴェにある。ピアーヴェ川沿いの自然豊かな文化都市といった趣の美しい街だ。

 オープニングには100人以上集まってくれた。自分の言葉で(通訳はしてもらったけれど)作品のことを話せるのは、やはりうれしい。作品は最終的にはひとり歩きするものだけれど、機会があるなら話ができるのは素敵だと思う。

(English follows below)写真展始まりました。 The exhibition started. Thank you, Colin, for this special opportunity!

Posted by Uma Kinoshita on Sunday, November 6, 2022

 それに、展示したのは、私が震災以降撮っている福島の写真の中でも比較的初期のものだったので、最近の作品をオリジナルプリントで見てもらえたのもよかった。2019年から2020年にかけて、福島第一原子力発電所が立地する大熊町で撮影した写真だ。

 イタリアは、2011年6月、福島の原発事故を受けて、原子力発電再開の是非を問う国民投票を実施、投票率57%でそのうち95%が再開に反対、政府が当時進めていた再開計画を断念させた経緯がある。チェルノブイリの記憶も消えておらず、原発問題には非常に関心が高い。

(そのシリーズの写真はこちら↓)

 この写真展に参加できたことは本当にありがたかった。キュレーターのフランチェスコは、かつて私がイタリアでやった展示を覚えていて、その後もFBでフォローしてくれていたという。落ち込んでばかりの作品づくりも、こういうことがあると続けていてよかったとしみじみ思う。参加した4人の写真家のうち、他の3人は結構有名な人たちだったのでちょっと気後れしたのも事実だけれど、そんなことは関係ない、自分がいいと思ったから選んだ、と言い切ってくれる。

 数日後には、さらにありがたいことに、トークイベントでも話をすることができた。会場だったトレヴィーゾにある"Lab27"という写真専門ギャラリーは、展示だけでなく、資料室も兼ね備え、ワークショップなども熱心に開催している民間施設だ。写真を愛してやまない実業家が私財を投じて作ったものだと聞いた。

 急遽決まったトークイベントで、私はもっと気軽なものを想像していたが、ふたを開けてみれば、立派なセミナールームに50人以上の人が来てくれていた。平日の夜の21時スタートというのは珍しくないという。むしろ、仕事が終わり、食事をしてから、ゆっくり出てこられるのでいいらしい。

 多少緊張しつつも、この10年あまり撮ってきた福島の写真のこと、和綴じで制作した写真集のことを話すと、あっというまに予定の1時間半になってしまった。終わってからも多くの人が残ってくれて、本を手に取ってくれたり、和紙をさわってくれたりして、ギャラリーを後にした時には日付が変わっていた。

(English follows...

Posted by Uma Kinoshita on Friday, November 11, 2022

 帰りの車の中で、ミケーレが「次回はハンドメイドフォトブックのワークショップができないかな」と言い出す。写真集を手製するのは、この10年くらいで世界的にも愛好者が増えていて、フォトブックのコンテストではカテゴリーの一つになっていることも多い。でも、ミケーレに言わせれば、イタリアではまだやっている人が少ないという。私自身、これからはもっと本格的に紙や本の勉強をしようと思っていたところだった。「いいね、やろうよ!」

 国外に出て気が大きくなっているというのもあるだろうけれど、自分がいつになく前のめりになっているのが可笑しい。いつのまにか心も体も縮こまっていたのかもしれない。でも、少し信じてもいい気持ちになった。どこかで見てくれている人がいる。どこかに生きていける場所がある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?