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無重力の式へ

先日、友人の結婚式に参列してきた。たくさんの人を大切にし、それゆえに愛されてきた2人であることが伝わるとても良い式だった。
式中のある一幕がとても印象的で、のちほどご夫婦本人たちにその旨を伝えたところ、「あの催しは夫が主役としてみんなに注目してもらえるようにと妻が希望したもの」と聞き、わたしは新郎側の友人として参列したので新婦のことはよく知らなかったのだけれど、まあなんと、爪の垢を煎じて飲みたい&飲ませたい人間多数なほどに愛情の方なのだった。大切な友人が、自分を第一に思ってくれる人と結婚したというのは、とても嬉しいことである。

翻って、数年前におこなった自分の式。あの時点でできるベストを尽くしたとは思うものの、やはり後悔は残るよなあ。
式場のテンプレートから選んだペーパーアイテムがダサかったから手作りや持ち込み含めて広く情報収集すべきだったとか、装花をもっと細かく指定すべきだったとか、そもそも式場見学の準備が足りなかったとか、挙げていけばいくらでもあるけれど、飛び抜けているのはCOVID-19関連で、招待客に関すること。当時、式の一ヶ月前には終わるはずだった緊急事態宣言の期間が二度の延長を重ね、二度目の延長で式の日程が被ってしまうことが決定した。これが式の二週間前。そして緊急事態宣言下では式場の取り組みとして人数をはじめ各種の制限がかかることがわかり(そんな大事な話はもっと早く言ってくれよということで、式場とは揉めた。まあ、わたしたちも、確認が甘すぎたよ)、こちらから招待しておきながらこちらから参列をおことわりする、しかもまあまあ直前に、という、どう考えても・まったくもって・ウルトラ・ありえない事態が発生したのである。結局、親族、および物理的に距離の近い友人数名のみに参列いただき、新幹線で来られる方を含む友人グループにはおことわりを入れることになった。該当の方たちには謝罪の連絡をしたのち、詫び状を作って送った。時節柄というべきか、同様のニーズは多かったようで、詫び状のフォーマットは簡単に見つかった。

いわゆるコロナ禍は結婚式のあとも2年続き、その間にわたしは妊娠出産でなかなか外に出られなくなり、直接謝る機会もないうちに、詫び状を送った友人のひとりは亡くなってしまった。一度、文字どおりわたしの命を救ってくれたことのある人だった。
あの時彼に会えたらなんの話をしただろう。かつての迷惑の数々を笑い話にしてくれただろうか、いや、まっとうに気を使う人だったから、親族に憚って何も言わなかっただろうな。一歩外に出て左右を見渡したあとには言っただろうけど。
「もしも」の世界には光も音も温度もない。でも重力だけはあって、頭はどこまでも深く落ちていく。

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