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東京〜大阪 はじめての自転車旅4(〜浜名湖)

まだいける!

3/20 午前4時
天気予報とナビの走行ルートと睨めっこのここ数日
日に日に変わる予報に今後の行程に関してひとつの決断をする
「雨の中の移動はやめよう」
ここまでのことを振り返るとともに
連日脚への負担も気になっていたところ
そして朝晩の寒さを思うとまだ遭遇していないとはいえ雨の中進むことは
身体への負担も気になる
やはり無理するところではないと
予報では明日は一日中雨
今日どこまで行けるかわからないけれど雨雲レーダーを確認しながら
進めるところまで進んでみよう
それでもまだ身体は動けるって
行ってみよう!いけるところまで

黄色の朝に包まれて

掛川を出て1時間くらい
真っ暗だった空ももうすぐ夜明け東の空が色づいてきた
とにかく前を向いて走っていたけどふと左に気になる景色が
通りすぐたけど戻り向かってみる
たどり着くとこんなに素敵な景色があるのだろうか?
目の前いっぱいに広がる黄色の菜の花畑
ただただその景色にしばらく動けなかった
まだまだ見たことのない景色
知らないこと たくさんの花 そして笑顔
この度の意味をもう一度噛み締めた
「さぁ行こう!」寒さで出てきた鼻かんでまた目的地へ向けてこぎ出した

つぎはうなぎ
菜の花畑に別れを告げて天竜川を渡る
すると携帯に着信が「おひさしぶり!面白いことやってるね」
ほんとお久しぶりの声は”笑顔の花飾り”の旅でもお世話になった
マルキョーの榑林さんだったこの旅の中で静岡の魅力を
ラジオで伝えて欲しいってご依頼だったのだけどもう静岡も残りわずかで
スケジュール合わずで今回は断念することに
ただみんなこのできるかどうかもわからない旅に興味を持ってくれていることが
嬉しくてまたペダルをこぐ力になった
誰にも会わないけれど誰かが知っててくれる
そしてもうすぐ浜名湖だもんね!ちょっと早いお昼?朝?をうなぎでなんて
贅沢な旅だなぁ〜なんてニヤニヤしながら進んだ
途中また脚の冷却スプレーを買い今日の行程に少し不安を抱えてもいた
あっ!うなぎのお店

中学生の自分に
弁天島を通り抜け浜名湖が見渡せるところを探していた
ナビで見ると鷲津駅の奥が浜名湖だ
部活の練習の声を聞きながら湖畔の堤防に腰掛ける
風は強いけれど日も差し込み気持ちよかった
荷物を下ろすと急にお腹が減ってきた
「うなぎ...」そう思ったけれどひとまず”まるしま”のお母さんが持たせてくれた干し芋をパクッ
食べ始めたら止まらない美味しさ

ぼくらの大冒険
浜名湖を眺めていたらふと思い出した
中学生の頃に来た卒業旅行
同級生の仲良し3人で企画した電車に乗っての旅
その目的地が浜名湖だった
今思い出してもなんとなく寂れた雰囲気の旅館の入り口と
夕食に出たエビを半分に切って卵の黄身だったか?マヨネーズだったか?
みたいな料理と旅館の裏手に出るとすぐ湖で誰もいなくて貸しボートが積み上げられていたことなんだけど
なかでも帰り道の大冒険は印象に残っている

誰かが「ここまで歩けば電車賃節約できるよね?」と言い出した
「そしたらお土産いっぱい買えるかな?」そんな言葉が続いた
今思い返すと浜名湖の北側の宿に泊まった三人は”天竜浜名湖鉄道”を使わずに
JR新居町駅あたりまで歩くつもりでいた
「浜名湖半分くらい歩けるよ」「楽勝!楽勝!」
こんなやりとりだったと思う
そんな根拠のない自信と無謀な計画のまま湖畔を歩き始めた
初めてみる景色に興奮したり 馬鹿な話をしてわらったり 石を蹴りながら進んでみたり道の草を引っこ抜いては戯れあったり
まぁまだまだ子供だいたいやりそうなことは想像できると思う

Mr.ダンディー
11時...12時...13時...
歩いても歩いても左には大きな浜名湖が
地図を片手に進むけどゴールはまだまだ見えてこない
リュックをおろして自販機で缶ジュースを買う
汗を拭きながら誰かが「ヒッチハイクできるかなぁ?」と
「なんかアメリカみたいじゃん!かっこいい」と乗っかる声
「どんな人か分からないからちょっと心配だけど」と気弱な自分は言ったような気がする
それでも三人の意見は多数決でヒッチハイクに挑戦に決まるのであった
「映画なんかでみるのは大きなトラックだよな」
「よしトラック狙ってみよう」
今思えばなんと平和な子供の浅知恵か
とぼとぼ歩きながらトラックが来るとみんなで見様見真似の親指を立ててみた
もちろんとまってくれるトラックなど一台もなく
次の駅まで歩くとしてもまだまだ先
どのくらい続けたろう?一台の白い車が少し先でウインカーを点けてとまった
「あれは?」「いってみよう!」
リュックを揺らしながらみんなで走った
黒いサングラスをかけた男性が一人「こんなとこでだれもとまらないだろ?みんなどこまで行くんだ?」
一見怖そうだったけど話したら優しそうな雰囲気にホッとして
みんなで嬉しくって聞かれていないことまでマシンガンのように話したっけ
「俺も昔はお前たちと同じようにヒッチハイクして助けてもらったことがあったんだ」とそのことを思い出してとまってくれたらしい
目的地を伝えると「そんなとこまで歩こうと思ったのか?」「まぁいいつれっててやるよ」そんな感じだったと思う
その時代だからツイードのジャケットなんか着ていて
大人のかっこよさがあったまぁ車に乗せてもらえたからきっとその相乗効果もあったかも
「昼飯食ったか?」「...まだです」
そう言えば旅館で朝ごはん食べてからずっと歩きっぱなしで腹ペコだった
白い外観の喫茶店みたいなところでみんなでハンバーグを食べた
「お金どうしよう?」「聞いてみるしかないよ」「足りるかなぁ?」
こそこそと相談をしている自分たちを横目にお会計を済ませたお兄さんは
子供たちの動揺に気が付いたのか「今日は俺の奢りだよ」と笑ってる
「それはダメです」車に乗せてもらった身分も忘れて申し出てみた
「じゃ次はお前たちが同じような場面に出会った時助けてあげてくれ」
カッコ良すぎます!
名前も聞けずじまいのまま駅まで送ってもらい颯爽と車で走り去ってしまった
僕らは彼のことを”Mr.ダンディー”と帰りの電車で呼んで口々にこの貴重な経験を語りあったっけ

そんな思い出に浸りながらとっておくはずの
干し芋はひとつ残らずお腹の中へ消えていった


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