松下くんの作文
やっぱり文章を書いていると、小学校で同じクラスだった松下くんが書いた、マラソン大会の作文を思い出す。
小学生の作文といえば、「マラソン大会の練習はとても大変だったけど、努力してよかった」とか「走っているときはつらかったけど、最後まで走りきることができた」みたいな感想がメインだと思うかもしれない。
だけど、松下くんの作文は違かった。
私の記憶では、走っている最中に自分がどんなことを考えていたのかを、小学生とは思えない描写で書き綴っていたのだ。
まずは、「僕は走っているときにマラソンのマの字からマゼランを思い出した。」という展開。そんなこと考えながら走ったこと、今でもない。
松下くんは、マラソン大会をトップで走る自分の孤独や心の葛藤を、船で世界一周を果たしたマゼランに重ねていた。
そして、「ゴールという名の港に着いた。」という、綺麗なオチ。
当時、本当に衝撃を受けたし、20年以上経った今でもこの文章を記憶している。
発表を聞きながら、内心「いや、絶対に親が書いたやろ」と思っていたけど、航海中のマゼランとマラソン中の自分を重ねる描写が瑞々しく、松下くんの心の動きがありありと想像できたのだ。
みんな等しく経験したできごとなのに、人によって、まったく異なる表現でアウトプットされることを知った原体験なのではないだろうか。
文章を書くのが苦手な私だけど、最近は仕事で文章を書くことも増えた。(そして、今もこんな風にテキストを打っている📱)
書いていてツラいなーと思うとき。そんなときは、このできごとを思い出して、松下くんやマラソンやマゼランに想いを馳せている。
思えば、文章もひとりで書くのだから、マラソンと一緒なのかもしれない。
もしかしたら松下くんも、小学生のころに同じようなことを考えながら作文を書いていたかもしれない。
そんなことを考えていると、あとちょっとだけ頑張ろうと思えるのだ。
松下くんと松下くんのご両親は元気にしているのかな。元気だといいなと思う。
おやすみなさい。