キャスターと天使
4日前、わたしは天使とお話をして、たくさん泣いた。
「ひとりで生きられるように、ってがんばってきたけど、ずっと心の中はさびしくて、やっぱりだめだった」
「泣きたいときは泣いてもいいんだよ
月だってひとりでよく泣いてるもん」
わたしが涙を流すと、それに合わせてきみは笑った。
「赤ちゃんみたいだね」
わたしは天使の名前を呼んだ。
「月、ありがとね」
それからわたしは天使に依存した。
赤い薔薇は重いというから、わたしのことを知っているのかと思って驚いた。きいてもきみは濁すだけだった。
天使はなかなか既読をつけない。
わたしは天使から離れようとしたけど、消えようとする度にきみは手を掴んで顔を近づけた。
ひとりの時間が今までよりも息苦しくなった。きみから離れることができないわたしは惨めだと思った。
わたしは天使のことを全然知らない。年齢と、住んでいるところと、通ってる学校。あと、白のキャスターを吸ってること、それくらいしか知らない。
天使は幼いのにわたしよりたくさんの世界を見てきて、わたしと同じところに来たらしかった。わたしにはそれが理解しがたかった。
どうしてこんなところにまで来て、わたしにやさしくしてくれるのか。醜いわたしを掬おうとしてくれるのか。
きみは「遊び」だと言うけど、この世界から掬ってくれればなんでもよかった。
「ねえ、助けてよ、おねがいだから、わたしと一緒に逃げようよ。」
なんて言っても、きみは体が軽い天使だから、ひょいっとかわしてなかったことにしてしまうんだろうな。
今日も、きみが吸っていたキャスターを真似して吸っている。
ぜんぜんおいしくない。
深く吸い込んで、細く吐き出した瞬間だけがきもちいい。
すぐに気持ち悪くなって火を消した。
まるで天使の差しのべた手のようだった。
2022.11.23
あしたが来ませんように
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