それでも母のすごいところ

こんにちは。ゆりりうすです。
朝晩、涼しくなってきて、いよいよ秋がやってきた!今年ほど、待ち焦がれたことはありません。
さて、10月は「ああ、声優③」をやります、と予告しました。勿論するのですが、その前に1つ話を挟ませてください。最近、母の事をやたら考えてしまうので、お付き合い願います。
今日のテーマは「それでも母のすごいところ」です。
前にも書いた通り、すごい癖を持っていて、亭主も子供達もしばしば驚くようなことをする母でしたが、母としては―200点とか割りと酷いことを書きましたが、こと仕事に関しては100点どころか、1000点をあげてもいいんじゃないかと思うくらい真剣でした。
何がすごいかと言うとですね、
エピソードその①
昔、私達子供がまだ小学1年とか4年とかの頃、よく私達が母にリクエストして見せてもらっていたノートがありました。これは元々は母が若い時分、絵本作家のわかやまけんさんが持っていた画集のようでしたが、小さな子供をモチーフにして草花や虫なんかを描いている物でした。
母は当時、本当は譲って欲しいくらいその画集が欲しかったんだけど、わかやまけんさんが「貸すだけならいいよ。」と貸してくれたので、全部鉛筆と色鉛筆だけで写したんですね。コピーもない、インスタントカメラもない、写るんですもない、勿論スマホで写メも出来ない。何十枚もありましたが全て手描きでした。
その完成度がね、子供でも驚くくらいの出来なわけです。ものすごく精密なの。あんまり可愛くて、綺麗で本当に何度も見せてもらいました。
そして、母はため息をつきながら、「あー、本物を手に入れたいなあ。」と言っていました。
私は本物も良いけれど(いや、本物は見ていないんですよ)、母の愛情と執念が入っていたので、この絵が好きでした。
きっと、若い独身の頃1人で夜にでも一生懸命描いたんだろうな、と思いました。今でも家の書庫にあるのかも知れないですね。
エピソードその②は
母がもう結構売れていたのに、なかなか出せなかった絵本です。
色の絵本でページをめくる度に、言葉と共に色が変わるのですが、どうしても編集者さんが「うん。」と言ってくれなかったページがあって、オレンジ色の夕焼けからカラスが飛んで来て、バーっと羽を広げると、真っ黒になるところです。
どうしてOKが出なかったのか、よく分からないのですが、母は「悔しい、何年掛かっても、この本出してやる!」と言っていました。
今思うと、そのオレンジから黒に変わるところはまるで映画的な手法だったんですね。なぜダメなのか不思議でした。だって母から、絵を描く前に「夢で見たの。オレンジ色の夕焼けの向こうからカラスが飛んで来てね、真っ黒な羽で景色を多い尽くすのよ。これだって思って、絶対入れたいの、素敵でしょ。」という話を聞いていたので。
今、出版された本を手に取っても私は、母から聞いたからかも知れないけど、その夕焼けから黒くなるシーンが好きです。
伊達に映画を沢山観ていない、伊達にバレエを見ていない、伊達にロシアやチェコのアニメーションを観ていない、伊達に展覧会に行っていない、伊達に本を沢山読んでいない。
母の絵は、一見ヘタウマのように見えてしまうことがあるようですが、かなり計算され尽くしています。特殊な方法で描いているので、なおさら一番効果的な見せ方を考えながら作っていたんだと、今現在の私には分かります。
その為になるべく字も少なく、しかも詩のようにリズミカルな文章で書いています。自分が同業者になったので、今更ながら凄さが分かります。
昔、ある絵本作家さんに言われたことがあります。「ゆりりうすちゃんは気がついていないかも知れないけどさー。」「うーん。」「ゆりりうすちゃんのお母さんはすごいんだよ。」「へー。」こんな会話をしました。
もう、ゆりりうすのバカバカ!その頃の私に言ってやりたい!…間抜けでした。
今日は、少し前に母を悪く言ってしまったので、しかし仕事は見事な物だったんだと、母の名誉回復を目論みました!
しかし、母親としては…、うーん、やはり少々首をひねりますね。

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