「ここではないどこか」じゃダメなんだ

 Jリーグというプロのリーグが高知でも近い将来触れ合えるものになってきた。俺たちの高知ユナイテッドSCはJリーグ入りを目指してそのプロリーグがすぐそこまで来ている現在地に立っている。
 俺たちは地域リーグで勝ち続けるも、全国の壁に阻まれていた頃に思いを馳せ、JFLというさらなる壁の高さに打ちのめされたりしながらも、全国で戦うチームを応援している。
 しかし、JFLはJリーグではない。高知ユナイテッドSCは言う「おらんくの街にJリーグを」JFLは彼らにとってどういう場所なのだろうか…アマチュアリーグ?登竜門?昇格のための障害?
 選手の気持ちを慮れば、上昇志向を尊重して、彼らのキャリアのためにも「Jリーグで戦う高知ユナイテッドSC」を願い、そのために応援するのは自然なことだろうと思う。しかし、俺にはそのためだけに応援するというのは少し疑問を感じずにはいられない。JFLは彼らにとってどんな場所なんだろうか?「ここではないどこか」なのだろうか。きっとそうだろう。ここで昇格したい。と強く願っている選手もいることは知っている。彼らの思いにチームは応えるべきだし、俺たちもそうなるように応援していきたいと思っている。だから、さっさとここを出てJリーグに…
 だが俺たちは思う。JFLで夢は見れないのだろうか?と。昇降格という過酷な世界が俺たちに見せる夢は時に悪夢だったり、素晴らしい夢の世界だったりする。俺たちは夢を見る。JFLというこの場所でも夢を見ることができている。Jリーグに上がれなかったらこの夢は見れないと思っていた夢が今は毎日見ることができる。地域リーグに身を置いていた頃は昇格することだけを夢見ていた。まさしく「ここではないどこか」を夢見ていた。
 しかし、JFLは俺たちにとって本当に「ここではないどこか」なのだろうか?選手にとってはそうでも俺たちにとってここが単なる登竜門なわけがない。そう思う。全国リーグという高みに立ち、プロリーグ所属のチームをも倒してしまう強さを持つ企業チームがいる。Jリーグを目指し風のように駆け抜けたチームもいる。疲弊しながらも何年もこの場所で戦い続けているアマチュアチームもいる一方で、疲弊しチームそのものが消えてしまったり、維持ができずにリーグから去ってしまったチームもいる。だからこそJFLは面白い。海千山千の強者達がひしめき合うこの場所が俺たちは好きだ。ここを1年間勝ち抜いただけではJリーグに昇格できないというラスボス感が好きだ。プロもアマもいるこのリーグじゃないとできないことを探し出したい。「ここではないどこか」を探すのではなく、ここじゃないとできないことを探したい。
 それを見つけ出した時に初めてJリーグという重い扉の鍵は開くと思うから。

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