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朝鮮人民軍の戦術 "Threat Tactics Report: North Korea versus the United States"より

この記事は、アメリカ軍TRADOCより2018年の” Threat Tactics Report: North Korea versus the United States”を仮翻訳するものです。

元資料DL

North Korea vs the United States

概要説明

  • 北朝鮮の正規歩兵師団はアメリカ軍の部隊が朝鮮半島で直面する可能性の最も高い師団です。朝鮮人民軍(KPA)野戦装甲・機械化部隊があるとはいえ、正規歩兵師団の数はその他の種類を大幅に超過しています。

  • 朝鮮人民軍の攻勢作戦は砲兵による化学弾の大規模な使用を含みます。これらは主に戦闘支援(CS)後方支援(CSS)、そして指揮統制(C2)の部隊をを攻撃することを主眼に置いています。そしてディープオペレーションが朝鮮人民軍特殊作戦群(SPF)によって行われます。

  • 朝鮮人民軍の防衛作戦は敵の戦車を砲兵の大規模な使用、大隊・連隊・師団の対戦車キルゾーンを通して倒し、そして連隊、師団、軍団のカウンターアタックで敵の攻勢を撃破してしまう事に主眼を置いています。

  • アメリカ軍は朝鮮人民軍の正規歩兵に正面の戦線で直面しますが、朝鮮人民軍の特殊作戦群は米韓軍の後方で攻勢作戦を実施し第二戦線を形成します。

  • 朝鮮人民軍の通常部隊と特殊作戦群は後方に残留し、CSCSSC2部隊が、既に主力部隊が通過した作戦区域を通行する際に伏撃を実施します。

  • 朝鮮人民軍の師団は既に今すぐ米軍や韓国軍と戦う準備が済んでいます。将来には、彼らの装備する車両や装備は異なるものが装備されるかもしれません。しかし彼らの戦術とテクニックは今日とあまり変わらないものが使用されるでしょう。

  • 2003年以来、朝鮮人民軍は7つの師団を編成し、それらは市街地や山林での活動や非正規戦のテクニックに専門化されています。これらはイラクやアフガニスタンで米韓軍に対して成功を収めたと(彼らが)思ういくつかのテクニックを使用することが期待されている為です(後述)。

この文章の目的とターゲット

TRADOC G-2 ACE Threats Integration (ACE-TI) はThe Threat Tacticsシリーズの出版者です。The Threat Tactics Report: North Korea versus the United States と、その他同列の出版物は外国の軍隊の最も一般的な戦闘師団を画一的な視点で記述するために提供されており、それらの攻勢/防勢ドクトリンはマニュアルに書かれていたものか、最近の軍事行動に依るものです。そして彼らが将来に米軍と対決した際、どのように行動するのかについて分析しています。

この書類は第一に米軍の訓練機構の為に意図されていますが、アメリカ軍の指揮官から、ASCCs、同盟国のパートナーまで広く活用されることが期待されています。

北朝鮮の紹介

国連(UN)と朝鮮民主主義人民共和国(DPRKもしくは北朝鮮)は1950年以来戦争中です。1953年に休戦条約が結ばれましたが、60年以上経った現在でも未だ平和条約が2サイドの間で結ばれていません[1]。国連に参加する1国として、アメリカは持続的な関係を韓国と維持してきました。

北朝鮮は2400万人の人口を持ち、人口の5%に当たる120万の人員を軍務に維持しており、その他に770万人の予備役がいます[2]。どんな戦争に際しても、北朝鮮の政府は自国の全ての人員を動員することに抵抗がありません。

北朝鮮は主に3つの目標を、これらを支持する副次的な目標と共に掲げています。国家の創設者である金日成から金正日、金正恩を通して北朝鮮の中心的な意思は朝鮮半島の北朝鮮政府主導での統合です。このような野望は近い将来にはほぼ確実に達成できない(米軍が朝鮮半島に残り続ける限りは)にも関わらず、金一家の支配が存続する統一朝鮮は北朝鮮の究極の目標です。2つ目の主要な目標は、独立が外部勢力、とりわけ西側に脅かされない主体性です。核兵器を保有しミサイル技術を追求する理由は外部勢力に核報復を恐れさせる事によって内政を干渉されない為です。3つ目の主要な目標は、金正恩と家族が政権内で権力を維持し続けられるように国民を思想教育することです。金一族とその支持者は、金正恩の家族が権力を維持し続けるために戦略的に必要なことはなんでも追及するでしょう[3]。

北朝鮮の戦略は朝鮮半島統一を自らによって完遂するという長期目標の為に、北朝鮮政府が金一族によって統治されることを主眼に置いています。巨大な軍隊は隣国の脅威に対抗する為だけではなく、北朝鮮の人民を支配する為にも重要な役割を果たしています。また北朝鮮は日米韓などとの交渉で外交的な譲歩を得る為、限定的な軍事的挑発を活用します。戦争の脅威を利用することで外交的譲歩だけでなく、人民への経済支援さえ得ることができます。北朝鮮政府は西側と韓国が半島で戦争を望まないことを知っており、"北朝鮮の脅威"をよく演出することで限定的な成功を外交の場で獲得してきました。北朝鮮の核戦力と核攻撃への恐怖は、しばしば敵国を北朝鮮の要求に従わせるための切り札となります[4]。

北朝鮮の指導者は、外国人の我々にとっては不思議な存在ですが、北朝鮮の人民にとっては文化として受け入れられています。金一族は宗教を否定し苛烈な弾圧を行う体制の中で、唯一神格化されて崇められています。金日成は自らの個性に基いた英雄崇拝の伝統を作り出し、その後金正日は金一族の神格化を強化しました。現在の北朝鮮の人民は金正恩を同様に畏敬の念で見ているか、もしくは見ていないことを咎められることを恐れています。政権と金一族を支持しないものは管理所(強制収容所)に送られたり更なる残酷な刑罰に直面しており、金一族のカルト的な地位は北朝鮮をまとめている重要な重心です[5]。

ここ数年、金正恩は明らかに国際法と議定書を無視しており、彼の敵と同盟国の両方を無視して科学者に核兵器の小型化を行わせてきました[6]。米国も同盟国も、北朝鮮の現政権やその後継者が体制の終焉を恐れて、大量破壊兵器を使用する可能性もある地上戦を韓国に仕掛けてくる時に備えておかなければなりません。このような攻勢が発起された場合に備えて、米軍が朝鮮半島で最も直面する可能性の高い師団を理解することは、朝鮮人民軍(Korean People’s Army KPA)を撃破することに役立ちます。

第一節 最も一般的な北朝鮮の師団

北朝鮮は1個戦車師団、4個機械化師団、15個戦車旅団を展開していますが、朝鮮半島で米軍が直面する可能性の最も高い師団は歩兵師団です[7]。軍務に就く有効な朝鮮人民軍の師団は、27個歩兵師団、14個歩兵旅団であり、また予備に40個歩兵師団と18個歩兵旅団があります[8]。朝鮮人民軍の歩兵師団もしくは歩兵旅団はいくつか車両を保有しますが、基本的に歩兵の移動は徒歩です[9]。しかしこの事は朝鮮半島に見られる山林で師団が素早く移動できないことを示すものではありません。朝鮮人民軍の兵士は高い持久力、わずかな食料で生き残る方法、少ない物資で活動する、或いは敵から奪う術、そして徒歩での長距離の行軍について厳しい訓練を受けています[10]。

北朝鮮は攻勢作戦こそ決定的な戦闘要素であると考えています。朝鮮人民軍の主要な作戦戦略は敵の戦車と歩兵を回避し、米軍の後方地帯でCSCSSC2部隊を攻撃することです[11]。朝鮮人民軍は、米軍の前線部隊は兵站支援が無ければ物資不足で崩壊してしまうと信じています。この信念は、アメリカ軍は包囲されるか大規模な補給のアドバンテージが無ければ撤退するという朝鮮戦争の分析と、中国/朝鮮人民軍のアメリカ軍の部隊の評価に基づきます。

朝鮮人民軍は前線の正規歩兵師団が突破部隊の為の間隙を構築することを試み、その後1個の戦車もしくは機械化歩兵師団の突破部隊が米韓軍の後方地帯に突入します。この機動部隊による後方地帯攻撃は現在では機能しておらず、世界中からの制裁による大変な燃料不足に直面している現在となっては構想上の計画に過ぎません[13]。報告では軍用の燃料は2015年現在大量にブラックマーケットに流出しており、朝鮮人民軍の兵士が餓死を避けるために必死で燃料を食べ物に交換したことを示唆しています[14]。これに対して北朝鮮政府は最近農民に対し大豆の代わりに大麻を代替燃料として使用するために生産するよう指示しました[15]。その他、石炭を燃料に変えたものも車両用燃料として使用しているとみられ、これはナチスドイツが経済封鎖に対抗して第二次世界大戦中に行ったものと同じです[16]。

北朝鮮は戦時燃料の備蓄を未だに維持していますが、現在では車輛を長期間稼働させるためには米韓軍から物資を鹵獲するしかありません。推定では朝鮮人民軍はソウル南部への単一の攻勢を実施するのに十分な燃料を保有しておらず、攻勢の継続には敵の補給デポットから燃料を鹵獲する必要があります[17]。深刻な燃料の払底はまた朝鮮人民軍の機動部隊の訓練を妨害し、軽歩兵の訓練の大半を不可能にしています。燃料の不足は多くの戦車師団、機械化歩兵師団が韓国への攻勢作戦で燃料を鹵獲しない限り実質的に通常歩兵となることを示しています。

一般歩兵師団は北朝鮮で最も強力な部隊である特殊作戦群や、化学兵器を使用するミサイル砲兵もしくは遠戦砲兵に支援されます[18]。アメリカ軍は前線で正規戦闘を行う軍隊と直面するのと同時に全方位から行われる非正規戦闘とも直面するでしょう。

北朝鮮の歩兵師団の戦闘序列

次の歩兵師団の戦闘序列は機密解除された資料を用い、James M Minnich's中佐によって作成されました[19]。調整は類似の資料に基づき行われました[20]。その後選出された資料は様々な分野の専門家に送付され、レビューとコメントが求められました[i]。

いくつかの歩兵師団は恐らく更なる部隊が付属しています。これらは山林での作戦の為に160㎜迫撃砲が間接支援として配属されています。精鋭部隊は朝鮮人民軍の保有する最新の装備を受け取り、それらの中には、Fagot (AT-4 Spigot)、Konkurs (AT-5 Spandrel) ATGMもしくは、Strela-10(SA-13)、Strela-3(SA-14)、Igra(SA-15)地対空ミサイルが含まれます[編訳者5]。この節の後によく使われると推定される武器の一覧があります[21]。

[i]もし誤りが戦闘序列の中に発見された場合、ぜひ著者 H.David Pendletonに証拠と共に送ってください。将来の更新に活用させていただきます。

Figure 1. KPA Infantry division order of battle
Figure 2. KPA Infantry regiment order of battle

北朝鮮の歩兵師団の主要な武器システム

朝鮮人民軍は武器が足りない為、多様なTire 2, 3, 4の装備を部隊で使用します。精鋭部隊はより新しい武器を受け取り、そして低練度の部隊は古い武器を受け取るように連なっており、いくつかの武器や車輛は第二次大戦の時の物です。部隊は同じ兵器システムを展開することで補給の問題を低減することを試みます。次に示すのは朝鮮人民軍の歩兵師団もしくは歩兵連隊で主要な装備です。

//TireはTRADOC内での武器の性能を表す指標。1が最も良い。

Figure 3 T-62
Figure 4 T-54/55
Figure 5 Type 59
Figure 6 M1937 D-20 152mm Howitzer
Figure 7 M1943 D-1 152mm Howitzer
Figure 8 M-30 122mm Howitzer
Figure 9 D-74 (D-30) 122mm Howitzer
Figure 10 M-1944 (BS-3) 100mm Anti-Tank Gun
Figure 11 BM-11 122mm Multiple Launcher Rocket
Figure 12 M-1942 (ZiS-3) 76mm Anti-Tank Gun
Figure 13 Type 63 107mm Multiple Launcher Rocket
Figure 14 ZPU-2 14.5mm Anti-Aircraft Gun
Figure 15 M-1939 37mm Anti-Aircraft Gun
Figure 16 S-60 57mm Anti-Aircraft Gun
Figure 17 M-37 (82-BM-37) 82mm Mortar
Figure 18 M-1943 160mm Mortar
Figure 19 AT-3 (Sagger) ATGM
Figure 20 AT-2 (Swatter) ATGM
Figure 21 AT-1 (Snapper) ATGM
Figure 22 SA-7 (Grail) SAM
Figure 23 B-10 Recoilless rifle
Figure 24 B-10 Recoilless rifle
Figure 25 AGS-17 (Plamya) Automatic Grenade Launcher
Figure 26 RPG-7 Rocket Propelled Grenade

第2節:北朝鮮の師団の攻勢もしくは防勢ドクトリン

次の比較表は師団レベルでの行動の細部を説明しています。この節では北朝鮮の用語が使用されます。これらはアメリカ軍の用語と似ていますが、正確に同じ意味ではありません。付随して朝鮮人民軍の用語はTC 7-100.2のOpposition Force(OPFOR)の用語と完全には一致しないことを明記しておきます[編訳者4]。

Table 1 KPA Terms (1)
Table 1 KPA Terms (2)

師団攻勢作戦

朝鮮人民軍は敵が現時点でどのような行動をしているかに合わせて3種類の攻勢作戦を実施します。それらは、防御中の敵に対する攻撃、攻撃中の敵に対する攻撃、退却中の敵に対する攻撃に分類されます。防御中の敵に対する攻撃では慎重な計画が必要です。防御中の敵全体に対する数的優位はあろうがなかろうが目標を達成できるとされます。人民軍は攻撃の際には実際の攻撃の焦点に対して2対1のアドバンテージだけがが必要であるとしており、人民軍のドクトリンは非常に狭い攻撃ゾーン(very narrow attack zone)を通して主攻を行うことを想定しています。またこの攻撃の最中には師団の残りの部隊が前線の攻撃の焦点の外の地域に広く拡散して敵を牽制する必要があり、敵部隊に実際の攻撃の焦点を支援させない為に重要です。牽制を実施する際に指揮官はは敵に自分の行っている活動が正しく他の部隊を支援しているのだと思い込ませるよう巧妙に演出することを目指します。

師団の4個の砲兵大隊は師団砲兵群(DAG)に配属されます。DAGは師団が行っている作戦が支援的な物か主要な物かによって、追加の間接砲撃支援部隊(砲兵やロケットなど)を軍団から受け取ることがあります。DAGは砲兵の間接射撃及びロケット砲兵により、前線だけでなく、戦線後方まで含む分散攻撃(dispersed attack)を実施し、敵旅団の司令部や旅団予備も同様に攻撃します。DAGの任務は敵旅団予備を無力化するのに十分な間接砲撃支援を提供することであり、また旅団や大隊の司令部を粉砕することであり、更には敵の前線の部隊を最低限攻撃によって"悩ませる"か、もしくは余裕があるなら無力化してしまう事です[22]。

朝鮮人民軍は7種の多様な攻勢機動を師団及びそれ以下のレベルの部隊で実施し、1個の部隊は同任務中に一つ以上の種類の機動を実施します。それぞれの概要が朝鮮人民軍の一般的な攻勢ドクトリンを説明しており、第3節の師団攻勢作戦図に記載される数値は以下の節に示された数値と一致します。

①突破(Penetration: 돌파)[23]
米軍のドクトリンとは異なり、"貫通 (Penetration)"は敵部隊を撃破する機動の事であり、朝鮮人民軍の突破は第一戦術梯団 (first tactical echelon)部隊により第二戦術梯団の通過するための回廊を作成する為に実施されます。これは敵後方地帯の指揮、CSCSSに対するDeep Attackを可能にするために必要なことです。

②尖入(Thrust: 촘잎)[24]
朝鮮人民軍の突入機動は狭い正面に集中し敵の重心点を貫きつつ、第二戦術梯団が次の4つの任務の内の1つを達成することを助けます。4つの任務とは、貫通した敵部隊の側面もしくは後方を攻撃する、隣接する単一の敵部隊の側面もしくは後方を攻撃する、旋回機動もしくは包囲機動を行う部隊の通行を支援する、もしくは封鎖されている運動回廊を開くこと、このいずれかです。

Figure 27. KPA offensive forms of maneuver

③牽制(Holding: 견제)[25]
朝鮮人民軍の牽制機動は陽動や広範な前線での示威を通じて少数の部隊でより大きな敵部隊を拘束するための活動であり、朝鮮人民軍の主力の貫通機動を支援したり狭い範囲での突進機動を支援するために行われます。最終的に敵の予備部隊を自軍の主力が活動している範囲から引きはがすことがこの機動の究極的な目標です。

④迂回(Turning: 우회)[26]
朝鮮人民軍の迂回は部隊が敵戦線を通過した場合と封鎖・包囲攻撃を後方部隊(大抵は予備隊)に実施する場合に方向転換する機動です。

⑤浸透(Infiltration: 침투)[27]
朝鮮人民軍の浸透は敵戦線の後方地帯での攻撃位置を確立するための隠密移動です。ほとんどの場合の師団レベルでの攻勢作戦では、6個の軽歩兵中隊の内4個を師団軽歩兵大隊に配属して敵の司令部や砲兵を攻撃するもしくは2TEが機動するために重要な施設を確保するために敵後方へ浸透させます。

⑥包秒(Besetment: 포초)[28]
朝鮮人民軍の包秒機動は敵の重心点もしくは部隊を破壊します。3対1の勢力優勢を得たうえで、朝鮮人民軍は、正面と一つの側面、正面と二つの側面、正面と後方、全方向、の4種の包秒を実施します。機動部隊もしくは直接射撃によってカバーされない面は砲兵によってカバーされます。

⑦包囲(Encirclement: 포위)[29]
朝鮮人民軍の包囲は敵の後方地帯にて退却中の敵に対して行われ、取り囲み、撃破することが可能な場所で行われます。朝鮮人民軍はもし突進もしくは貫通が敵前線で成功した場合、敵は撤退しそれが敵の後退作戦の中で最も脆弱な体勢であると考えており、師団は恐らく全ての部隊をその包囲の成功の為に投入します。朝鮮人民軍は次の4種の包囲を実施します。
・大部隊に対する細分割による破壊
・小部隊に対する圧縮による破壊
・狭い区域にいる部隊に対する火力による破壊
・市街地にいる部隊に対する襲撃による破壊。

その他の朝鮮人民軍の歩兵師団を支援する部隊

その梯団や任務に合わせて、いくつかの師団は追加の部隊を受け取ります。

憲兵大隊
通常、師団の攻撃部隊の第一梯団だけに配属され、任務は、交通整理、捕虜の管理、脱走者の管理、後方地帯で活動する米韓軍の特殊部隊の作戦を発見する、そして一般的な後方地帯での保安任務です。

砲兵
航空優勢を喪失することが予測される為、朝鮮人民軍は自軍の歩兵を支援するために砲兵を大規模に使用することに重きが置かれており、北朝鮮は14100門以上の砲兵・MRLsを展開しています[30]。2010年の初めに、朝鮮人民軍はDMZ近辺に展開していた107㎜MRLsを270㎜MRLsに転換し始めました[31]。置換された武器は予備隊に移管されたか、将来の戦闘で使用するために備蓄されたと考えられています。これは北朝鮮の旧式の兵器システムでも廃止しないという傾向によるものです。朝鮮人民軍は攻勢の最中に通常砲弾に化学砲弾を混ぜて使用することが予想されており、北朝鮮は恐らく2500から5000トンの化学兵器を備蓄しています。そして前進陣地の砲兵による射撃の20%が化学弾頭であると推測されます[32]。

第一梯団と大抵の現役歩兵師団は、12門の152㎜榴弾砲を装備する2個の大隊と、18門の122㎜榴弾砲を装備する1個の大隊の3個の有機的な砲兵大隊を保有しており、合計42門の大砲が全般の支援を行います。また最前線の師団は追加で1個の122㎜ M-1992 MRLsの大隊を付与されます。またどの歩兵連隊も有機的な122㎜砲兵大隊によって支援されている為、師団の保有する有機的な砲兵の総数は96門となります。歩兵師団がDAGを編成する際には、普通は軍団から更なる最大2個の砲兵大隊が付与されます。また部隊が川か海に隣接する場合には、恐らく107㎜MRLsが付与されます[33]。

第二梯団の師団はその特別な任務の為に4個から6個の砲兵大隊が付与されます。この砲兵は大抵は152㎜自走砲、130㎜自走/牽引砲、122㎜自走/牽引砲、122㎜MRLsによって構成されます。放列(batteries)は同じ種類の装備で統一展開されるでしょうが、大隊規模では自走砲と牽引砲が混ざって展開されうるでしょう[34]。

予備師団は通常4個の砲兵大隊が配属され、部隊の任務に合わせて有機的もしくは直接支援的な役割を担っています。この砲兵は大抵152㎜牽引砲もしくは130㎜牽引砲、あるいは122㎜牽引砲、そして(もしくは)100㎜牽引砲によって構成されます[35]。

特殊部隊(Special-Purpose Forces SPF)
朝鮮人民軍は世界で最も大規模な特殊作戦軍を展開しており、特殊作戦軍は、総参謀部偵察局(Reconnaissance General Bureau: RGB)のRGB偵察大隊を8個、17個の偵察大隊からなる偵察旅団、12個の軽歩兵旅団と3個の狙撃旅団からなる軽歩兵群、3個の航空陸戦旅団(北朝鮮での空挺部隊の呼称)と1個の空挺大隊及び2個の狙撃旅団からなる空挺機動群、3個の狙撃旅団と2個の特殊海兵旅団からなる水陸両用群です[36]。多くの戦術・作戦レベルのSPF部隊は単一の指揮であるⅪ軍団(暴風軍団)に配属され、3個ずつの軽歩兵旅団が朝鮮人民軍のDMZに沿って展開する軍団直下に配属されます。

8個のうち4個のRGB偵察大隊はDMZを浸透することに専門化されており、1個の大隊がそれぞれ4個の前進展開する朝鮮人民軍の軍団に配属されています[37]。前進展開する軍団と機械化歩兵軍団は偵察群より追加の偵察部隊を付与されます[38]。軽歩兵旅団に配属される兵士は通常軍役に4年から7年勤め、なおかつ政治的に問題が無いとみなされた者だけで構成されます。これは軽歩兵は敵戦線後方の35㎞~70㎞で活動する為です[39]。狙撃旅団は朝鮮人民軍の最精鋭の特殊部隊です。この部隊は3300人から4600人の範囲の規模であり、配属された下位の大隊の数によって異なります[40]。狙撃旅団は5人から10人の少人数部隊で、司令部、通信司令部、物資集積所、重要な中継地点、その他投入するのに見合うと思われる重要目標に対して襲撃を実施するために特化されています[41]。航空陸戦旅団は空からの浸透を実施します。通常はAn-2 Coltのような小型機を用い、200機の輸送機で朝鮮人民軍空軍(KPAAF)は一度の飛行で3500人の特殊部隊の人員を投射することが可能です[42]。また朝鮮人民軍空軍はMi-2やMD-500のようなヘリコプターも運用しており、これらも特殊部隊の兵士を韓国に空から浸透させることが可能です[43]。特殊海兵旅団は海から韓国に侵入する訓練を専門的に受けています。そして朝鮮人民軍海軍は370隻の水陸両用艇を保有しており、小さい順に列挙するとゴムボート、ホバークラフト、350トン揚陸艇です[44]。これらは両海岸にある特殊海兵部隊を1度に7000人投射することが可能な量であり、全ての特殊海兵隊員を投射することが可能な規模です[45]。

Table 2. KPA SPF units

北朝鮮はSPFを非対称の"第二戦線"を構築するために使用し、韓国の民間人及び米韓連合軍司令部と国連司令部の戦闘インフラに、混乱、パニック、麻痺を巻き起こすことを狙うでしょう[46]。いくつかの特殊部隊員には、女性、英語話者、もしかすると戦術的ゲリラ活動を可能にするために米軍やその同盟国の制服を着ている可能性があり、追い詰められたとしてもほぼ(もしくは決して)投降することはありません[47]。これらの特殊部隊の構成員は、空、海、または南侵トンネルを経て侵入してきます[48]。米軍は前線で正規の朝鮮人民軍部隊と戦闘しながら友軍の後方地帯で特殊部隊構成員を処理する事に備えなければなりません。2017年11月のRed Diamondを見ることで朝鮮人民軍特殊作戦軍の更なる情報を見ることができます[編訳者1]。

師団防御作戦

地帯防御は朝鮮人民軍の主要な戦術です。この戦術は敵の戦車を止めることを中心に設計されています。朝鮮人民軍の司令官は戦車を敵の最も致命的な地上攻撃兵器と見なしている為、縦深防御は朝鮮人民軍が保安地域(Security Zone)と呼ぶ主要な防衛線の前面にある地域で敵を粉砕することに始まります。統合保安地区(General Security Area)では、前進観測者が砲兵と連携することが可能で、後置部隊は待ち伏せを実施します。一般保安地区は第一階層の前方にあり、師団の3分の1が地雷原の背後に陣地を構築し、設計されたキルゾーンに直接火力を発揮します。師団の約9分の5は第二階層の防御陣地で戦います。師団の保存されていた部隊は師団の逆襲部隊と対戦車機動予備を務めます。もし防勢の最中にあっては、朝鮮人民軍は敵の車両類、特に戦車が最も通行すると思われる道に沿って対戦車戦闘を展開することを試みます。朝鮮人民軍はその複合対戦車防御陣地にて対戦車障害物、対戦車火力計画、対戦車防御陣地、対戦車交戦地帯、対戦車予備、逆襲部隊の6個のフェイズを用いて敵を破砕します。[49]。第三節にそれぞれのフェイズで何が起こるかの概要を示しています。

Figure 28. KPA field army area defense-zone formation
Figure. 29 KPA Antitank defense system

北朝鮮の地下施設・地下陣地(UGFs)
軍用の地下施設は戦場で遭遇することが一般的です。しかしながら我々の脅威国らは地下施設を民間工場を支援するために建設するかもしれませんし、より洗練された脅威国ほどそれぞれの地下施設に防衛計画を持つでしょう[50]。朝鮮戦争以来、北朝鮮は11000以上の地下施設を国内中に建設しました[51]。これらの多くはDMZより50マイル以内で確認でき、南浸トンネル、硬化砲兵陣地(Hardened Artillery Sites HARTS)、C2サイト、朝鮮人民軍空軍の滑走路、地下核実験施設が含まれます[52]。南浸トンネルは恐らく小型戦車が通過可能であるか、1時間当たり1万人から3万人の兵士が通過可能で、半島全域のDMZを潜り抜けて米韓軍の前進配置された部隊の後方に到達することが可能です[53]。

もし朝鮮人民軍が防勢を強要されDMZの北方で防御をした場合、兵士は計画に沿って既に建築された戦術的地下施設を使用します。最も多く且つ危険なこれらの地下施設は北朝鮮の西部から中部にかけて存在すると思われる200個から500個のHARTSであり、東海岸にもHARTSが同様に存在します[54]。HARTSは人工もしくは自然の洞窟を砲兵が使用できるように改造したものです[55]。朝鮮人民軍のHARTSの中には射撃指揮センター(Fire Direction Center FDC)が存在し、統合火力司令部(Integrated Fire Command IFC)、弾薬備蓄設備、UGFの兵舎の兵士と通信連絡していると思われます[56]。朝鮮人民軍のHARTSは塹壕網、トンネル、強化壁、地上攻撃に対する内部自衛機器が内容されています[57]。航空攻撃に対抗する為、HARTSは隠蔽された対空システムを配備される可能性があります。またそれはZPU-2やZPU-4のような装備であり、エレベーターシステムに載せられる可能性があります[58]。Figure 30は典型的な朝鮮人民軍のHARTSの例です。

Figure 30. KPA HARTS

敵近接航空支援に対する防御

攻勢作戦の最中:朝鮮人民軍は、米韓軍の優勢な空軍とより高精度な砲撃による統合攻撃を攻勢作戦の間に和らげ、その地上部隊を防護するために様々なテクニックを使用します。テクニックは以下の通りです:

・朝鮮人民軍の部隊を攻撃の直前まで集中させることを避け、敵の安易な目標とならないようにします[59]。
・主力部隊の機動を夜間に行うもしくはその他の視界が制限される間に行うことで、敵航空機もしくは間接火力火器からの発見や破壊を軽減します[60]。
・部隊や車輛を機動の最中や休憩中に偽装します[61]。
・1度接敵した場合は敵の近辺に居続けることで、敵に航空機もしくは間接支援火器の使用を自軍に命中させないためにためらわせるでしょう[62]。
・機動の最中に小火器しか使用しないことで、他部隊に存在を露呈しないようにします[63]。
・特殊部隊を飛行場や砲兵陣地、もしくはC2施設の攻撃に投入することで、これらを破砕するもしくは朝鮮人民軍の通常部隊への航空攻撃や間接火力支援に影響を与えます[64]。

防勢作戦の最中:朝鮮人民軍は攻勢作戦の最中に米韓軍の火力優勢を軽減するために多くのテクニックを使用しますが、付随して朝鮮人民軍の防御計画では次の物も含みます。
・過度の集中を避け、防御陣地の部隊を無差別に分散します[65]。
・効果的な迷彩や全てのレベルの部隊の隠蔽を確実にし、航空機からの発見や航空攻撃と間接火力攻撃を回避します[66]。
・地下陣地を使用することを重視します。DMZから50マイル以内では部隊の生存性を敵の航空もしくは間接火力攻撃から改善するために特に重視します[67]。
・偽装陣地を建設し、敵の航空、間接火力攻撃を誘導し、敵が弾薬を浪費する様に仕向けます[68]。
・兵器廠から11000門以上の14.5㎜から100㎜までの様々な口径の対空砲を展開し、定められた反撃部隊を含む、重要な部隊や設備を防護します[69]。これらの防空兵器は高価値目標の周囲に円を描くように配置されます[70]。
・単一の防空警報ネットワークを確立し、朝鮮人民軍の部隊に敵機の接近を警報します[71]。
・他の防衛部隊の存在が露呈することを避ける為、指定された武器のみを使用します[72]。
・敵砲兵の間接火力攻撃を減衰するために、特殊部隊もしくは迂回した部隊により朝鮮人民軍の防御地帯を射程に収める敵砲兵もしくはC2部隊を攻撃します[73]。

第3節:朝鮮人民軍対米韓軍

根本的に、朝鮮人民軍の師団は将来米韓連合軍と朝鮮半島で戦闘する可能性が最も高く、現行の朝鮮人民軍によって計画されている戦術やテクニックがそのまま使われる可能性が高いです。朝鮮人民軍のドクトリンは古いソビエトのドクトリンと似ており、大規模な砲兵攻撃と迂回部隊による敵CS・CSS部隊への後方地帯での攻撃がそれに当てはまります。朝鮮人民軍の展開する装備は将来には現在と異なるでしょうが、朝鮮人民軍の師団は将来の戦争でも基本的に現在彼らが使用するものと同じような攻撃と防御の方法が使われるでしょう。

Figure 31. Legend for Section 3 Diagrams

付随して、朝鮮人民軍の特殊部隊は米韓軍の後方に第二戦線を構築することを試みますので、朝鮮人民軍は非正規戦にいくつかの師団を投入すると思われます。2001年以来のイラクやアフガニスタンでの米軍の活動を観察したのち、朝鮮人民軍はこれらの国々でどんなテクニックが米軍に対して成功を収めたかを注意深く観察してきました。2003年の初めには、朝鮮人民軍は7個の歩兵師団と機械化歩兵師団を非正規戦闘の戦術とテクニック向けに専門化し、これらの師団から砲兵、戦車、防空、輸送装備部隊の殆どなどの有機的な支援部隊のほとんどを取り除きました。代わりに米軍に対して中東で成功を収めた軍事行動を元にした山林と市街地での非対称戦の特殊訓練を施しました[74]。これらの変更は恐らく、慢性的な訓練の燃料の不足、劣悪な整備環境、もしくはならず者国家として受けてきた何年もの制裁の結果としてのスペアパーツの払底、等々も関係している可能性があります。

朝鮮人民軍の貫通機動(Attack to Gain Freedom of Movement)

Figure 32. KPA Division attack against an enemy brigade to gain freedom of movement

次の記述では、カッコ内の数字がFigure 32内に振られた数字と第2節で説明された機動の番号に一致します。朝鮮人民軍の用語は同等の米軍の用語が無い場合や十分に説明できない場合に編訳者によりカッコ且つ英語で表記されます(翻訳によって原意が崩れることを避ける為)。朝鮮人民軍の師団は通常、指定/規定されたレベル(作戦レベルの師団攻撃)で包囲機動を行いますが、その下位部隊の多くは、朝鮮人民軍の攻撃ドクトリンが下級部隊に定めている他の軍事的機動を同時に行います。また東側面の突撃部隊は旋回機動(4)を包囲/分断機動(6)を実施する前に行っています[75]。

師団の攻撃では、開始と同時に司令部や重要な敵部隊に対しての砲兵攻撃が加えられます(わかりやすくするため、図には1発の弾道のみを表示しています)。師団の火力支援調整司令部(FSCC)はDAGをを通して十分な間接火力支援を次の目標に対して投射する任務が課せられており、敵の旅団予備の無力化、敵旅団もしくは大隊の司令部を妨害する、もしくは敵の前線部隊に対して最低でも妨害を行うか可能なら無力化します[76]。

朝鮮人民軍の師団は保有する軽歩兵部隊を浸透任務の為に使用します(6個中隊で1個大隊を構成)。軽歩兵の活動は暗い時間、悪天候の時、険しい地形で開始され、今回の例は師団の保有する6つの全ての中隊が活動し、2個の中隊だけが実際の主要な包囲機動に参加し、重要な地形、人員、装備を獲得しようとしています。人民軍右翼では、2個の軽歩兵中隊と師団工兵中隊が歩兵大隊を支援し、大隊が地形上の重要地点である渓道を制圧するのを支援しています(2)。この歩兵大隊と軽歩兵中隊の任務は、渓道において機動の自由を獲得する事、そして後続の部隊による進出を可能にすることです。同じく右翼にいる2個の更なる軽歩兵中隊は、敵の旅団司令部を攻撃するために南方に浸透し、もし司令部が砲兵攻撃によって破壊されていなかった場合、司令部を破壊するために火力による攻撃を行います(5)。人民軍左翼では、残りの軽歩兵大隊(2個中隊)が山の尾根を越えて浸透し、のちの作戦での交戦地帯(engagement area)を東側から支援します(5)。師団が攻撃している最中は師団の偵察中隊が主攻の左側面を防護し続けます。特に主攻部隊の西に旋回し再び北に移動して敵部隊の移動を強制するか分散させようとする間を防護することに集中します(4)。また単一の小隊が師団の西側面を防護し、作戦区域に隣接する地域から接近する様々な敵部隊からの奇襲を予防するために捜索します。

軽歩兵大隊の活動と主攻部隊から少し離れた場所で、3個の他の攻撃がほぼ同時に行われます。これらには前述の通り、第二戦術梯団の機動の自由を獲得するための予備の攻撃として突入機動が西側面で行われ(2)、敵を欺瞞し破砕するために拘束部隊によって主攻の東西で拘束機動を行い(3)、そして主力である後続の第二戦術梯団の機動の自由を提供するための師団の前進の中央部での貫通機動(1)、が第一戦術梯団(First tactical echelon)により行われます。師団工兵大隊と戦車中隊は東へ向かう主要な道路もしくは副次的な接近路に沿って主攻に追従する準備をします。工兵大隊はどちら突破行動でも支援するよう準備され、恐突撃部隊(1)の支援を行うか、主軸の前進か東の副軸(4)に伴います。

1個戦車中隊と歩兵連隊(1個大隊欠く)からなる第二戦術梯団はあらゆる輸送手段に搭載され、かなり後方に位置し、敵の防衛を突破することに成功したどの突撃部隊に追随することも可能なようにしてあります。計画された戦果拡張は図の中央の前進の主軸に沿いつつ、西のチョークポイントが制圧された時にはそちらに向かう事も可能なようにしてあります。あるいは主攻より東部の攻撃がより成功した場合には第二戦術梯団がそちらに向かう可能性もあります(4)。

主攻は多くの諸要素を統合しており、1個戦車中隊、1個歩兵連隊(1個大隊欠く)からなり、そして大抵は1個対戦車大隊も参加します。これらの主攻部隊は敵旅団予備を攪乱させるために東方からほぼ同時に旋回機動を実施します(4)。この機動部隊の任務は計画されたキルゾーンに敵の旅団予備を攻撃して押し込むことです。もし可能なら、攻撃のタイミングを敵旅団予備が前線のギャップを埋めるために集結地点から北に移動し始めた時に攻撃することが望ましいです。朝鮮人民軍の分断(besetment)の為の計画されたキルゾーンは敵前線部隊と敵旅団予備部隊の間にあります(6)。もし正確に実行されれば、部隊が火力による攻撃を南から行い、1個歩兵大隊といれば1個戦車中隊が火力による支援を北から行うことができます。意志は敵の旅団予備を最も脆弱な瞬間である集結地点から移動し始める瞬間と同時に主要な突撃部隊によって撃破することに向けられています。2個の軽歩兵中隊が早期に浸透し火力による支援を東から行い、敵予備がキルゾーンから逃走することを予防します。キルゾーンの第4の側面(西)は高地によってブロックされています。もし西側が味方部隊の射網によってブロックされていなかった場合にはFSCCによって調整された砲兵とロケット砲兵による間接火力によってカバーします。また更に第二戦術梯団では、戦果拡張部隊は成功した突撃部隊についていくことを試み、師団は約1個大隊と対戦車部隊を万一の事態に備えて保持しておきます。この間師団の有機的な防空大隊は作戦地域全体に防護を提供します[77]。

完全な敵旅団予備の撃破とどれか1個の敵前線部隊をキルゾーンに追い込むことに成功した後、朝鮮人民軍の部隊は南に前進し続けるでしょう。彼らは朝鮮戦争中の経験に基づき、もし重要な貫通が敵前線に起きた時、隣接する敵部隊は恐らく分断されることを避けるために側面の部隊と接触を維持し続け、そのために撤退行動を実施するだろうと考えています。もし朝鮮人民軍の先頭の戦闘部隊が十分な強さと推進力を維持していた場合、彼らは南への攻撃を続けるでしょう。状況によりますが、もし先頭の戦闘部隊が戦場で有意な行動をとる為に十分な強さが不足していた場合(つまり消耗で戦力不足であった場合)、朝鮮人民軍の師団の第二戦術梯団(Exploitation force)が師団もしくは軍団の後方地域で敵のCS、CSS、C2部隊を攻撃するために超越前進するでしょう。ソヴィエトの古いドクトリンを受け継ぎ、朝鮮人民軍は成功を強化し、どの師団の計画も第二戦術梯団と予備部隊が通るための様々な道の選択肢を用意し、先を行く前進部隊の嚮導の成否に依存しています[78]。

師団防御作戦

Figure 33. KPA Division area defense

もし防勢を強要された時、朝鮮人民軍は計画に応じて敵の最も致命的な兵器である戦車を破壊することに注力します。前進師団は朝鮮人民軍の複合陣地システムで重要な役割を果たします。またこの節の番号はFigure 33の番号と一致しています。この項のより抽象的な解説がFigure 29にても行われていますので、理解の助けとして使ってください。

朝鮮人民軍の複合対戦車陣地の第1フェイズは対戦車障害物で、接触部隊(Contact force)陣地の前方とそれぞれのキルゾーンの中に配置された対戦車地雷です(1)。彼らはこれらの障害物ベルトを道路上に設置し、対人地雷(AP)と対戦車部隊の組み合わせの効果範囲内と地形に敵を拘束します。朝鮮人民軍は隠蔽されたAT/AP障害物ベルトに観測者を合わせることで直接火力火器だけでなく間接火力火器も活用します。障害物ベルトは朝鮮人民軍の対戦車兵器の様々な射程に合わせて適切なアドバンテージを得られるようにいくつかの層に分かれて構成されます[79]。

複合対戦車陣地の第2フェイズは対戦車火力支援計画です。これは破砕部隊(今回はDAG)によって実施される4個のサブアクションが含まれます。

・まず第1のサブアクションは朝鮮人民軍の戦闘保安前哨陣地(Combat Security Outpost CSOP)によって観測された敵の位置に基き間接火力支援を行うことで、CSOPは接触部隊の前方の破砕地区に位置し(2)、敵の効果的な攻撃を防止することが任務です。朝鮮人民軍の間接禁止射撃(Indirect Interdiction Fire)は敵の接近路と思われるチョークポイントに向けて行われ、普通は主要な道路にて行われます(2a)。この為に彼らは接近してくる敵1個中隊に対してそれぞれ2個の砲兵大隊を敵中隊に割り当て、迫撃砲、大砲、ロケットをこれらのチョークポイントに対して射撃します。放列レベルの目標範囲は通常、幅100m、奥900mの範囲です。

・第2の対戦車火力支援計画は計画された近接支援射撃(Close support fire(朝鮮人民軍の用語では順次発射"Rolling fire"))が地帯をカバーし、朝鮮人民軍の前進陣地から約2000m以内の敵を攻撃します(2b)。これは移動する敵機甲部隊が機動向けの隊列から戦闘隊形に移動する際を狙い、混乱させるもしくは撃破することを目的であり、通常このような弾幕(バラッジボックス)の幅は400mから700mであるものを恐らく500mから800m毎に断続的に4個の目標エリアの限度まで配置します。

・第3の対戦車火力支援計画は近接支援射撃(Anti-armor rectangular target fires)で、通常他の間接砲撃の直後に投射されます(2c)。両種の近接支援火力のカバーする幅はほとんど同じ(400mから700m)ですが、第一種の奥行きは300mから500mと浅く、敵の障害物ベルトへの接近に合わせてロケット、大砲、迫撃砲の順に集中して3斉射が行われます(2b)。第二種近接支援火力は前進陣地の前方の対戦車障害物ベルトで停止させることに主眼が置かれています(2c)。

・第4の対戦車火力計画は直接射撃戦闘です。直接射撃戦闘は前方の障害ベルトから始まり、戦車、対戦車砲、無反動砲、RPG、をそれぞれの最大射程で発射し、味方兵士が敵歩兵と戦っている間に敵機甲部隊を攻撃します(2d)。最後に、前線部隊から300m以内に敵が接近した時には間接射撃による最終防護射撃を行います[80]。

対戦車複合陣地の第3フェイズは対戦車防御陣地です。これは連隊指揮官によって計画され、大隊指揮官によって実行されます(3)。対戦車防御陣地は今回のMAPには掲載されていませんが、2015年10月のNorth Korea Threat Tactics Report[編訳者2]に対戦車大隊により行われる連隊の対戦車防御陣地の様子が載っていますので参照してください。対戦車伏撃は歩兵連隊の陣地への戦車の接近路に沿って確立されます。もし突破されて部隊が壊滅しても生き残った兵員は潜伏を続け、敵のCS、CSS、C2部隊が自部隊の作戦区域に入れば撃破できるよう伏撃を続けます[81]。

対戦車複合陣地の第4フェイズは対戦車交戦地帯(Anti-tank engagement area)です。これは対戦車伏撃と似ていますが、連隊レベルもしくは師団レベルで計画される点で異なります(4)。連隊の前進大隊陣地を突破することに成功した敵部隊は、次なる部隊の対戦車交戦地帯に遭遇します(4)。可能ならば、朝鮮人民軍の司令官は2個のSU-100小隊を直接射撃に、2個以上のRPG-7小隊を連隊や師団の対戦車交戦地帯の支援の為に配置し、その他戦車や無反動砲などの使用可能と思われる武器ならなんでも使用します。また、これらの連隊もしくは師団の対戦車キルゾーンを設置する場所は、敵部隊が広く展開できない、3方向以上から攻撃できる場所を目安に選定されます。以上の対戦車交戦地帯は、文書:North Korea Threat Tactics Report 2015年10月刊行[編訳者2]より、近いもの(上述の文書内では対戦車伏撃について書かれており、対戦車交戦地帯より規模が小さい点以外はほぼ同一です)の詳細な解説を読むことができます[82]。

対戦車複合陣地の第5フェイズは対戦車予備です。対戦車予備は防御システム内の予期せぬ地点、特に致命的な後方地域に現れた敵戦車を撃破するために用意されており(5)、対戦車伏撃、連隊キルゾーン、師団キルゾーンを突破してきた敵と最後の対決を行うことが任務です。どの朝鮮人民軍の師団も通常2個の対戦車中隊を対戦車予備に割り当てており、戦闘を行う部隊と防護される部隊の中間に控置されています[83]。

対戦車複合陣地の第6フェイズは逆襲部隊によるカウンターアタックです(6)。全ての連隊もしくはそれ以上の部隊は敵の突破を撃退するために逆襲を行う計画を持ちます。今回は師団の逆襲部隊(2個戦車中隊、1個歩兵中隊(使用可能な車輛があれば自動車化します))のみが図に示されていますが、通常どの大隊、連隊、師団、軍団も逆襲部隊を持ちます。突破される可能性が発生した時、司令官は敵部隊が突破後にどこに向かうかを予測します。通常、逆襲部隊のポジションは突破された部隊の1キロ後方に選択されます。

司令官の選択するカウンターアタックのタイプは危機にさらされている部隊の位置の深さと突破された場合の危険性に基きます。通常、朝鮮人民軍の行う逆襲は、中隊レベルの突破に対する急速逆襲、大隊レベルの突破に対する標準逆襲、連隊レベルの突破に対する遅延逆襲の3種が行われます。それぞれの逆襲の違いは任務をいかに早く実施できるかという違いであり、逆襲を行う組織のレベルが小さくなるほど必要な時間は多くなります。逆襲の選定についてTable 3にまとめられていますのでご確認ください。またTable 3の軍団や師団の防御区画の用語はFigure 28とリンクしていますので遡って確認してください。

Table 3. KPA counterattack type/criteria[85]

例えば、ある第一階層の大隊(Table 3.赤字)が敵の突破に直面しておりこれを止めるために逆襲が必要な場合、連隊が対応を任ぜられた場合は遅延逆襲を以て対処しますが、時間がかかります。代わりに師団がこの突破に対応する場合はより素早く標準逆襲を実施することができ、軍団が対応する場合は最も早く急速逆襲を実施することが可能です。いずれにせよ同時に地上で進行する様々な状況や、利用可能な逆襲部隊の状況も逆襲作戦の資源の配分の決定に影響を及ぼし、また敵の戦線への侵入の深さによって逆襲部隊はどのようなカウンターアタックを選択するかを考慮します[84]。

//より大きな主体が対応する場合にはより大きな部隊資源が必要であり、より小さな主体が対応する場合はより経済的です。ですが逆襲に失敗することは最も避けるべき事ですし、小さすぎる主体による対応の負担がその後の作戦に影響を与える可能性についても考慮しなければなりません。

まとめ

朝鮮人民軍は防御より攻撃を好み、防御を選択するときは再度攻撃するために必要な戦力を集める間だけです。彼らは米韓軍の戦闘部隊を避けることを試み、また米韓軍の戦力を減退させるために後方地帯のCS、CSS、C2部隊や高価値目標を攻撃することを試みます。さらに特殊部隊も同様に米韓軍の後方でCS、CSS、C2部隊、高価値目標を攻撃することで第二戦線を構築し、これらの活動が米韓軍の戦闘効率を低下させ、いずれ朝鮮人民軍が火力で優る時が来ると考えています。

朝鮮人民軍が防御を強いられた時には、彼らは敵の戦車を倒すことに注力します。また敵に迂回されて孤立してしまった部隊(全ての兵科)は、部隊として戦闘を継続し続けるもしくは部隊が戦闘不能になったとしても兵士個人が最後まで非正規戦を行うことで抵抗を続けることが期待されています。UGF(地下施設)は北朝鮮全域に存在し、特にDMZの50マイル以内に集中して存在します。もし朝鮮人民軍が防勢をこの範囲内で強要された場合、これらの陣地を活用して戦闘するでしょう。

米韓軍は化学砲弾を含んだ強烈な間接射撃に前線の正規部隊と特殊部隊の活動する後方で直面するでしょう。米韓軍は攻撃してくる朝鮮人民軍の師団を撃破すると同時に後方で暴れる特殊部隊から全ての部隊を守る必要があります。

関連文書

次のリンクを踏むと関連文書を見ることができます:

North Korea Threat Tactics Report V1.1 2015
//本物のリンクはコモンアクセスカード(CAC)が必要なやつなので、以下代用リンクを貼ることで対応します。

・North Korea Threat Reports
//代用リンク発見できず

また、Red Diamond Newsletterは市民と兵士の両者に有用な様々なトピックスの記事を掲載しており、敵の戦術やテクニックから様々な脅威の主体に関する性質や分析まで幅広く対応しています。北朝鮮に関する記事は2012月6月号、2013年8月号、2014年11月号、2015年1月号、2015年3月号、2015年4月号、2015年5月号、2015年6月号、2015年9月号、2015年10月号、2016年10月号、2017年11月号にて見ることができます。

Red Diamond Newsletter

武器や装備の詳細については、Worldwide Equipment Guideをご覧ください。

Worldwide Equipment Guide 2016 Vol1 Ground Systems

Worldwide Equipment Guide 2016 Vol2 Air and Air Defense Systems

Worldwide Equipment Guide 2016 Vol3 Naval Systems

更なるTRADOC G2 ACE Threats Integrationの刊行物を見たい場合は、Army Training Network(ATN)にアクセスし、その後CACにアクセスしてください。

著者

H.David Pendleton
913-684-7946(COMM)
552-7946(DSN)

TRADOC G-2 Analysis and Control Element Threats Integration(ACE-TI)
803 Harrison Drive, BLDG 467
Fort Leavenworth, KS 66027

Jon Cleaves, ACE-TI長官
Angela Williams, ACE-TI長官代理

参考文献

Allmond, Samuel M.
"Can North Korean Airborne Special Forces Successfully Conduct Military Operations Against the United States and South Korea?"
Defense Technical Information Center. 2003.より
元URL

Bermudez, Joseph S. Jr.
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朝鮮人民軍の部隊編成
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1982年2月5日

差し得と表のクレジット

この項に関しては原文を参照ください。

注釈

[編訳者1] Red Diamond 2017年11月号

[編訳者2] North Korea Threat Tactics Report 2015年10月刊行

[編訳者3]TRADOC G2 ACE-TIの公式の刊行物の公開場所

[編訳者4]TC 7-100.2 Opposing Force Tactics

[編訳者5]興味深いことにこの文章では恐らく火鳥3の実態を9M113 Konkursであると見なしています。一方Olyxの書籍である"朝鮮民主主義人民共和国の陸海空軍"では火鳥3を9M133 Kornetと見なしています。
参照:朝鮮民主主義人民共和国の陸海空軍 30ページ

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URL リンク切れ

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