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【禍話リライト】溶ける家族

 このリライトを読んでくださる人の中で、「禍話」を聞いたことのない人は少ないかと思う。しかし、耳にする状況は様々だ。ドライブの音楽代わりにかける人、イヤホンで聞きながらウォーキングをする人、寝床で流す人。
 今回、2022年5月14日の放送は、控えめに言って大当たりの回だった。どれをリライトするか迷うほどだが、まずはつかみのこの話を。

【溶ける家族】
 会社員のIさんは、禍話をスピーカーで聞いている。つまり、内容は分からないまでも同室にいる家族の耳にも入るということだ。
 ある時、4歳の息子が「昨日の夜、怖い夢を見たよ」と言ってきので、内容を聞いてみた。両親と三人で食事をしていると、父の目が、母の鼻や口がドロドロと溶けていくのだという。しばらくすると、二人とものっぺらぼうになってしまった。その様子がとても怖かったのだと。
 それを聞いて、Iさんは恐怖を覚えた。もちろん、内容が恐ろしいこともあるが、全く同じ内容の夢を同じ晩に見ていたのだ。

 夢の中でIさんは、温泉旅館で宿泊した後の朝食の席にいた。なにげなく隣に座る妻を見ると、顔が溶けだした。驚いて周りを見渡すと、まばらに座る他の席の客もどんどんと顔が崩れていく。そして、全くのっぺらぼうになってしまった後でも、変わらず朝食を食べ続けているのだという。
「どうなるのか」と状況が呑み込めず、混乱していると宿の女将さんがこちらに近づいてきた。彼女の顔は、溶けてはいないものの能面のように動きがない。
 女将は、「はい」と便箋のようなものを渡した、そこには、〇月21日とのみ書かれており、月のところの数字は、汚くて読めなかった。
 意を汲み取れずに呆然としていると、耳元でこうささやかれた。
「〇月21日じゃなくてよかったねぇ。〇月21日までは大丈夫だから」
 聞き終わった瞬間に目が覚めた。その朝に息子から似たような話を聞かされたのだという。
 結局、〇月のところは紙からも、女将さんの言葉からも分からなかった。
 Iさんは、怖いので禍話は一人で聞くようになったのだという。

 途中の禍話のコメントでもあったが、次回の放送が5月21日の予定なのが、不気味な一致だ。この話をそれまでに放送すれば安全だということなのだろうか。それとも。

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出典

元祖!禍話 第四夜(お前ら、攻めてんなぁ回)(2022年5月14日配信)

13:00〜

https://twitcasting.tv/magabanasi/movie/731713876


※本記事は、猟奇ユニットFEAR飯による著作権フリー&無料配信の怖い話ツイキャス「禍話」にて上記日時に配信されたものを、リライトしたものです。

下記も大いに参考にさせていただいています。

禍話 簡易まとめWiki
https://wikiwiki.jp/magabanasi

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