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【禍話リライト】同じ場所の喫煙者

 場所につく怪異はポピュラーなものだ。曰く因縁付きの家、部屋、トイレなど禍話に有名シリーズがあるうえ、枚挙にもいとまが無い。
 この話はちょっと珍しい、曰く付きの電柱の話。

【同じ場所の喫煙者】

 Aさんの趣味は、深夜にコンビニに行くことだったという。大学近くの学生マンションからすぐにあるコンビニで新商品を物色するのがささやかな楽しみだった。ただし、日中は学生やサラリーマンでごった返すので、いい時間を探していたところ深夜になった。学生にありがちな夜型生活がそうさせたとも言える。
 Aさんの部屋は2階にあり、扉を開けてすぐの外廊下から、マンションの前の道路が見える。この道をすぐのところにコンビニはあった。道幅はそれほど太くはなく、少し大きい車が来れば、壁側に寄らなければならないくらいだった。
 ある晩、コンビニに向かおうと廊下に出て、何気なく道に視線をやると、道路沿いの電柱の下で中年の男がタバコを吸っていた。ベランダで喫煙する「ホタル族」よろしく、口元のタバコの火が赤い点に見えた。
 マンションの出口は、その道に面しているので、否応なくその電柱の前を通る。何の変哲もないくたびれたサラリーマンだった。
 そこでふと気付いた。
 この電柱の下でタバコを吸っている人によく出くわすことに。
 年齢は同じ大学生から老人まで、性別も今見ているサラリーマンのような男性から、水商売風の女性まで統一性はない。ただ皆一様に、その下で一服するのだ。
 前記したように、この道は狭く、喫煙スペースとして設けられているわけでは無い上、車の往来もある。わざわざこの場所を選んで、種々雑多な人々が紫煙を燻らすのだ。しかも、寒い冬にも見た記憶があった。数十メートル先にはちゃんとした喫煙スペースを備えたコンビニがあるというのに。

 ある時、件のコンビニで一緒になった友人にこの事を話してみた。何の気なしに場を繋ぐためのネタのつもりだ。すると友人は、意外に乗り気で、こう提案した。
「絶対その電柱何かあるって。調べてみようぜ」
 連れ立って、その場所に向かう。
 と言っても、何の変哲もない電柱だ。Aさんは内心「何もあるわけがない」と思っていたのだが、電柱の後ろっ側、目立たない陰に牛乳瓶が置いてあった。お供えの花的なものを供えるためのものに思えた。
 その日から、コンビニに行く前に電柱下に人がいないか確認してから出ることにした。やがて面倒臭くなって、夜中のコンビニ通いはやめてしまったのだという。

                       〈了〉

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出典

元祖!禍話 第23夜(2022年10月8日配信)

9:07〜

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※本記事は、猟奇ユニットFEAR飯による著作権フリー&無料配信の怖い話ツイキャス「禍話」にて上記日時に配信されたものを、リライトしたものです。

下記も大いに参考にさせていただいています。

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