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データドリブン経営とは何なのか?【データ利活用の道具箱 #2】

今回より、データ利活用の道具箱として、企業のデータ利活用を推進するためのノウハウをお届けする記事をお届けします!

トップからデータドリブン経営の実現を託されている方、これからデータの活用を自社内に展開していこうとしている方、既に着手はしているもののうまく成果を出せず困っている方、次のステージへ進むための具体的なアクションに迷っている方などを対象に、データ利活用の推進について考えるヒントをお届けする予定ですのでお楽しみに。

私たちの経験が少しでもお役に立てれば幸いです。


データ利活用コンサルがこの記事を書くことにした理由


まずは自己紹介を。
私は、BtoBやBtoCの企業をお客様として、企業内のデータ利活用推進をさまざまな形で支援しているコンサルタントです。

この数年の間に、様々な案件をご支援したり、データ利活用の事例や技術進化を見聞きしたりするにつれ、ある一つの疑問が頭から離れなくなりました。

それは、企業横断でつかえるデータ基盤をつくり、企業内にあるたくさんのデータを連携し、BIダッシュボードで即座にデータを見られる環境を用意してもなお、いまひとつ成果らしい成果が見えてこないのはなぜなのか?ということです。
しかも、それは一社や二社ではなく、わりと多くの企業が同じ壁にぶつかっているのです。

もちろん、理由は様々でしょうが、突き詰めて考えていくと、企業でデータ利活用を推進する人たちはみな、「まずデータ基盤」という呪いにかかっているからではないか?と思い至りました。

呪いというと大袈裟かもしれません。でも残念なことに「まずデータ基盤」から始めたプロジェクトが成功しづらいのもまた真実です。

 データドリブン経営とは何か?

デジタル化、技術進化と共にビジネスの在り方が変わり、不確実性の高い環境の中で難しい舵取りが求められる時代には、企業の意思決定に対してスピードも精度も同時に求められるようになりました。

そういった背景から、『データドリブン経営』という言葉が注目されるようになりました。

『データドリブン経営』というのは、文字通りに読むと"データ"を経営の中心に据えること、となります。この言葉を聞いた読者の皆さんは、”なんとなく” こんなイメージをもつかもしれません。

例えば、経営陣が重要な会議の中でグラフの表示されたダッシュボードを見て議論しているシーンや、マーケティング担当者が自社商品の売れ行きを分析して今後のアクションを考えているシーン、などです。

では、店頭で従業員が接客しているシーンや、コールセンターでオペレーターがお客様の相談にのっているシーンについてはどうでしょう?『データドリブン経営』という言葉から連想できそうでしょうか?

“なんとなく”そうとも言えるし、違うような気もする・・ちょっとモヤモヤした気持ちになるかもしれません。

『データドリブン経営』はまやかしの言葉

私は、企業にあるデータを資産へと変えていく様々なプロジェクトに関わる中で、『データドリブン経営』という言葉の取り扱いはとても難しいと思うようになりました。なぜなら、言葉だけではいまひとつ実体を掴み切れないので、議論していても空中戦になりがちだからです。

そこで、”なんとなく”で終わらせずに、『データドリブン経営』とは何か?自分の言葉でしっかり説明できるようにしておきたいと思い至ったわけです。
言葉の定義をすることはコンサルタントの鉄則ですしね。

『データドリブン経営』→『データ利活用』に置き換えると分かること

あるときから私たちは、意図的に『データ利活用』という言葉を使うようになりました。データ活用も同じ意味ですが、より価値を生み出す意識が高い印象をもつのは”利活用”の方だと思っています。

データドリブン経営も、データ利活用も、意味は同じです。ただ、その言葉が伝えるイメージはずいぶん違うと思いませんか?

『データ利活用』という言葉の方が、データを資産に変える、データを使ってビジネスの成果をあげる、といったことをイメージしやすいのではないでしょうか?

『データドリブン経営』という言葉を使っていたときは、その言葉の意味合いを一生懸命に説明しなければいけなかったですが、『データ利活用』という言葉に置き換えただけで、こちらの伝えたい意図がかなり伝わるようになった印象を持っています。

例えば、先ほどの接客のシーンとコールセンター内のシーンを例に考えてみます。
お客様が店頭で、コールセンターに問い合わせをした件を持ち出して相談しているとします。このとき、店の従業員がコールセンターでのやりとりを把握できるのは、部署を横断してデータを共有し、かつそれを顧客サービスに活用する仕組みがあるからといえます。
これは、お客様が店頭で相談した内容を、コールセンターのオペレーターが把握した上で適切なアドバイスができる、と置き換えても同じことです。

つまり、企業の中でデータを活用してビジネスに活かすシーンはたくさんあるわけです。データドリブン経営という言葉を使うか、データ利活用という言葉を使うかによって、想定できるシーンがずいぶん違うと思いませんか?

それでもまだまだと感じる場面はたくさんありますが・・その辺の話はまたの機会に書いてみたいと思います。

次はもう少し丁寧に、『データ利活用』という言葉について定義してみます。


DXの文脈でデータ利活用を定義してみる

データ利活用の定義を考える中で、次の2つの文章は比較しがいのある良い定義だと思ったのでご紹介します。

1つは、経済産業省​が発信している「デジタルガバナンス・コード2.0」に記載されているDX定義の中の一文です。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、​
データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、​
製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、​
業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、​
競争上の優位性を確立すること

「デジタルガバナンス・コード2.0」より

これはDXに関する説明文ですが、この中に"データ"という記載があります。つまり、データを活用することでビジネスモデルを変革し​、企業の競争優位性を高められる、と書かれているのですが、これだと、分かるようで分からない・・かもしれません。


意思決定の文脈でデータ利活用を定義してみる

そこで私がおススメしたいのは、こちらの一文です。

『データ分析・AIを実務に活かす データドリブン思考』という書籍で紹介されている定義です。

データ分析やAIが「現場で活用される」とは​
現場の意思決定に活用されるということ。​
「意思決定に活用される」とは​
意思決定プロセスに分析結果が使われるということ。​

『データ分析・AIを実務に活かす データドリブン思考』より

つまりデータを活用することで、日々の業務における意思決定の精度を高め​、企業の競争優位性を高められる、ということです。先ほどのDX定義と似ているのですが、「意思決定」に役立てる、と明確に謳うこちらの定義の方が、納得しやすいように思いますがどうでしょうか?

私は、データ利活用の真の目的は「意思決定の精度を高めること」と考えています。​これは、経営レベルだけでなく、現場レベルでも同様です。データが示す情報の正しさや整合性が、意思決定の質に直結するからです。

​データ利活用というと、経営判断や新規事業開発に使うイメージで語られがちですが、実際には、企業のあらゆる業務での意思決定に影響を与えるものです。​

あれ?さっきの接客のシーンやコールセンターでのシーンは、意思決定と言わないのでは?と疑問に思われた方、鋭いです。
でもこう考えてみてください。
店頭やコールセンターにおいて、お客様のデータを参照し、従業員は何らかの判断をした上でお客様への対応をしている、と。
そう考えると、ここにも意思決定というプロセスがあると考えられませんか?

今後、データの具体的な活用法や、そのために作るべき組織、仕組み、システムのことなど、少しずつご紹介していきますのでお楽しみに。


おわりに

この「データ利活用の道具箱」では、データ利活用を推進したり、データをもっと活用したいと奮闘している皆さんに役立つ情報をnoteで発信しています。ぜひ他の記事もご覧ください!