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私たちの執着(2024年4月12日(金)の300字小説)

 同僚の木下さんが午前中調子悪そうにしていた。なんだかミスも多いし、心なしか顔色も良くない。
 昼休みにお弁当を一緒に食べながら理由を聞いてみた。
「家のHDDレコーダーが壊れてしまって……」
 なんでも、まだ見てないドラマやアニメがたくさん入っていたそうで、聴いている私も恐ろしくなった。
「それは無念だったね」そんな言葉くらいしかかけられない。
「今週末、新しいのを買いに行くんですが、何分今まで溜めてたドラマなどは元に戻らないことを考えると、辛くて……」さめざめとした木下さんが可哀想だった。
「三島さんも覚悟した方がいいですよ。お別れは突然来ますから」と怖いことを言われた。
 私たちは執着することとどう付き合っていけばいいんだろう。
おしまい

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