【詩】箱。
夢をみた
わたしは死んで天国についた
神さまが箱をわたしてくれた
ひとかかえもある大きな箱
「なくしたものボックス」
わたしの字だった
「ゆっくりでいいからね 整理してごらん」
そういうと神さまはどこかへ消えた
とりあえずふたを開ける
箱の中にはいってみた
形や大きさの違う箱がごろごろしてる
一番大きな箱から開けてみる
片方だけの靴下がつまっていた
学芸会で履いた天使の羽根がついた靴下
憧れの先輩とこっそりお揃いにしたテニスソックス
はじめて母の日にもらったミニーちゃんの靴下
こんなところにあったんだ…
となりの箱は日用品だった
タッパーの蓋
おはしの片方
建て替える前の家の鍵
次の箱はアクセサリーや小物
ピアスの片われ
bluetoothの右側
最初の結婚の指輪
だんだん箱をあけるのが
おっくうなっていく
つまらない人生だったのか・・
いや 死んだのだ
少しつかれているのかもしれない
これみよがしにためいきをついてみると
目の端っこで小さなものが光った
深海の底に沈んだように
へばりついている薄っぺらの箱
目を凝らすと
朱色で「大欲」と書いて
マルしてある
わたしの字ではない
誰が書いてくれたものなのか
記憶とともになつかしい「あの顔」が浮かんできて
泣きそうになった
ふたをひらく指先がふるえる
一瞬だけそれを観て
すぐ閉じた
帰る
帰らなきゃ・・
戻ります!
必死で神さまを叫んだ
目が覚めて
泣いていた
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