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一度失敗したゲームが復活する可能性は1%未満 〜 失敗は取り戻せないのか? 〜

これは非常に残酷な事実ですが、実体験、そして事実として、一度商業的に失敗したゲーム、リリース前にこけてしまって再開発をするも、正常にリリースできて安定的に運用が継続できている、再度復活するという事例はごくわずかです。

私自身も、再生プロジェクトに関わる事や、自分自身が手がけてきたサービスの再生計画、その他、開発に失敗したタイトルの再開発計画などを行った事も数多くあります。

しかしながら、いろいろな理由で復活は厳しいというのが正直なところであり、過去、失敗から大再生=復活をしたサービス、できたサービスは1%にも充たないという見方をしています。

この記事内での「復活」の定義は、
一度リリースするも思うように商業的、ゲーム評価がふるわず、このままいけば間違いなくクローズ案件だったが、ある意図的な取り組みで商業的にもゲーム評価も大再生したタイトルとします。
この記事内での「失敗」の定義は、
対外的に告知をしてしまった(されてしまった)が、リリースされなかった、または開発中止となったタイトル。リリースされたが即サービス終了になったケース。
擦ったもんだして結局世の中に出てこなかったタイトルは含みません。

ちなみにですが、復活できない理由は大きく下記の自由が大きいです。


一度失敗したゲームが復活できない理由


大きくは事業的な継続が判断という場合と、
物理的な修正が無理という事例です。


1◆事業視点での継続が困難
金銭、改修期間、面白さが見えずに、事業見込みが立たずに会社としての中止決定。
2◆改修するぐらいなら作り直したほうがいい場合
ソースや基礎設計、企画含めて全体的にヤヴァくて、目標内での改修不可とした場合(人の離脱、ソース解読不可、IP元と揉めるなど)。作り直したほうがいいんじゃね?ってなることもよくありますが、その場合は改修はいずれにしてもしないことになります。
3◆プライドが高いプロデューサーが複数いる場合
たまにありえるレアケースです。IP(版権)を利用したサービスでたまにある事例です。自己顕示欲と利権の塊みたいな強欲プロデューサーが数名重なるとここに落ち着く場合が高くなります。
特徴としては、開発に協力的でない。お金にうるさい、接待を求める。結果は横取り、責任はなすりつけ、陰口が多い。です。
こういう人がいるとプロジェクトが進まない上に、その人のためにクソモック(テスト用ROM)が延々と作られるので面白くなるわけがない。予算を食い潰して終わりです。
あとこういうタイトルほどマーケティングだけ派手。一般芸能人を使ったり謎のアイドルユニットが排出するのも特徴です。


リアル人狼ゲームがはじまる


うまく行かないプロジェクトはチームが殺伐とします。結果ストレスを抱えまくって病んでいく人が本当に多くなります。

ひどいのはその責任のなすりつけ合いなども起き、一人、そして一人と精神的に追い詰められて離脱していく人も本当に多く見てきています。

プロジェクトは成功する確率が低い事も確かなので、そもそも責任を自責してしょいすぎないことも大事です。なすりつけるやつは言語道断ですけども、そういう人ほど権力を持っている事も多いのでちょっと厄介ですね。

その傾向がある人とは一緒に仕事をしないことがオススメです(根本)。

ほんと、ゲームはチーム開発なので、うまくいくように組み立てたいですね。パワーバランスがおかしいとプロジェクトが崩壊します。



大失敗からの大復活事例の世界代表

では世間から事業的に失敗と言われたけれども、大成功へと導かれたタイトルについて触れていきたいと思います。


◆ファイナルファンタジーXIV

個人的には前石井Pの功績が大きいとは思いますが、世間的には厳しい評価を受けた本タイトル。

その後、倒壊寸前のタイトルを大リニューアルして、商業的にもサービス的にも大再生をなし得た「吉田直樹P」が立て直したご存知の神作。

再生への道のり、開発の苦労は各所の各記事を検索してもらえるとお分かりの通りだが、個人的に一番驚いたのは、世界を跨いでの開発規模だったにもかかわらず、連日深夜からのテレビ会議を行いながら、数百名の規模を統率してきたクオリティコントロールを徹底した驚異のディレクション力とナレッジ

クオリティコントロールの技術は世界レベルであるのは間違いないですが、誰に聞いても吉田Pの人柄の良さが滲み出ているのが成功の大きな要因だったのではと考えている。

聞いたところによると、「この人ならばついていきたいと思える、一緒に仕事をしたいと思える人」という声も多くて、ドラクエXのスタッフも吉田Pファンが多かったと聞いた。

FFXIVがうまく行った理由は、関係社の声やインタビュー記事を読み解きつつ、 Google のプロジェクトアリストテレスのレポートと照らし合わせるとよくわかることが多い。

プロジェクトアリストテレスの日本語訳はこちらをご参照。



復活したPCタイトルの事例を一部ご紹介


ではそれ以外の復活タイトルについても一部ご紹介したいと思います。


◆「真・三國無双ONLINE」

PCオンラインゲームでは上の「FF XIV」が代表だが、「真・三國無双ONLINE」もその1つ。

こちらはサービス開始が2007年11月にスタートしたタイトルで私の経歴にも書いているけど、立ち上げとマーケティングに関わったタイトル。

リリース初期は大失敗したわけだが、理由は自明で、SoftbankのYahoo! BB専用コンテンツとなっていたことだった。

これは今で例えれば、特定キャリアの回線でしか遊べないアプリみたいなもので、縛り方が「ありえない」わけだが、当時はsoftbankのブロードバンド事業を推進させるためにいくつかの専用コンテンツがあったのも事実だった。

結果としては鳴かず飛ばずの状況となり、回線の制限を外し、コンテンツも大改修。後に海外サービスの権利を CJグループ が取得して海外運営の知見を元に、より対戦型を強化するべくゲーム設計とビジネスモデルも大改修して大復活を遂げた。そして今も現役のサービス13年目。


◆ファンタジーアース
2006年12月21日/スクウェア・エニックス

こちらも初期のリリースをご存知出ない方が多いのかもしれないが、出どころは、プレイオンラインタイトルの一つだった。

PlayOnlineは、スクウェア・エニックスが提供する独自のネットワークサービス。当初は自社のオリジナルコンテンツ、ゲームなどが多数リリースもされていた。

そこから2006年2月3日に「FANTASY EARTH 〜THE RING OF DOMINION〜」として正式サービス開始。運営元はスクウェア・エニックスでパッケージ購入(オープンプライス6000円前後)+月額料金(1,350円)。

その後、2006年11月1日に運営がゲームポットに移管。この時にゲームタイトルを「FANTASY EARTH ZERO」に変更し、クライアントソフトと基本プレイ料金を無料とし、一部のアイテム購入時に課金する方式へと変更。

そこから大躍進が始まった事例。

成功転換のポイントは、
プレイモデルの変更が大きな要素。だがゲームサービスの舵きりも大きく行われたことだった。そこからは、課金設計。運営体制の巧妙さ。ユーザーと運営の距離が近かったなど、当時のゲームポットは神運営で有名だった。


◆Master of Epic 
・2005年4月1日/元ハドソン、現在は株式会社MOE

実はこのタイトルも開発初期から拘らせてもらったタイトルその2。当時はハドソン単体で御存命だった頃でしたが、一度0から作り直した経緯があり、よりライトでキャッチーなビジュアルになって再リリースしたMMORPG。

当時はリネージュIIなどが全盛期のころで、ちょうど大航海時代ONLINEがリリースされて大ヒットされた後のリリースでした。

当時はパッケージ販売が主流だったのでパッケージ販売をやりつつ、ダウンロードも行って、月額980円〜リリースを展開していた。

ゲームはLv制ではなくスキル割り振り性を採用していたり、クラフト要素を多数盛り込んだりと、当時は和製UOを目指していたりして頑張っていたタイトルだった。

しかし月額課金性という敷居の高さもあってユーザー数が思ったように伸びず、無料サービス+アイテム課金性にサービス転換。もともとゲームの評価は高かったため、運営元を移管してからは広告展開もはまり、見事に大復活を遂げた。

そしてなんやかんやで今もサービスを継続しているサービス15年目の長寿タイトルである。


復活したアプリ編

こちらは詳細は端折りますがこのタイトルが大復活事例。

メギド'72 /DeNA

DeNA本社が根性入れて見守ったタイトル。地道な改修活動と運営を並行して行い、大復活。リリース当初からセールス的には勢いを失ったものの、地道なユーザーフォロー活動やゲーム愛のロビー活動を地道に繰り返してファンを育成。

コンテンツをためてためて1周年直前ごろからTVCMなども含めてプロモーションあわせて爆発させた社の起死回生の一作となり、その年のゲーム賞ではゲーム大賞を受賞するまでなったドラマチックなタイトルだった。

でも何より成功要因は、会社が見守り続けたこと、製作者の愛が強かったことによるチームを引っ張れたことではないかと想像しています。

が、落ち込んでいるタイトルで赤字を相当出していたにも拘らず、会社がTV CMまでを展開したこのタイトルの責任者の営業力なのか、数字の説得性なのかがどうやって算出したのかは内部事情を知りたいところです。


プリンセスコネクト ReDrive / Cygames

こちらは少し番外編ですが、プリンセスコネクトは一度サービスを終了したものを新しい形で新作リリースして大ヒットしたタイトル。

ゲームを高品質かつ快適、ユーザー体験のフロー化をどのように導いたのかはCEDECなどの講演内容から片鱗をうかがえるが、なによりCygamesの本気がどうしてもすごいとしか言えない点、プリコネを復活させようと、IPを育成しようという、ある種キャラクターやプロジェクトを大切にするバックボーンが安心して注力できた背景なのではないかとこちらも想像しています。

ゲームをプレイすればお分かりの通りだが洗練されたHeroes Charge系のタイトルだがどの部分をきりとっても群を抜いてクオリティが高い。Cygamesのタイトルはどれをとってもパッと見がよく、遊んでいてストレスが少ないのが素晴らしい。


まとめ


ゲームプロダクトは基本的に極めて難易度が高いビジネスです。それは開発側もユーザー側も介在する要素が大きく、「おもしろさ」というファジーな体験が多く、かつ運営という継続性も必要になってくるからです。

また、商業的な法人開発を行うものは規模も大きく、スタッフの関わり合いも大きくなるのでさらに難易度は跳ね上がります。

それをまず完成させるだけでもハードルが高いため、できる限りそれぞれの要素の定義や共通認識と言語を確立させることが極めて重要です。

また、スタッフが安定して力を発揮できるよう、安全安心の場を作り上げることもとても重要なのは言うまでもない要素だと追加で添えておきます。


補足

一度失敗事例を経験したものの徐々に成功した事例をここで一部だけピックアップしましたが、復活要因の1つはビジネスモデルのチェンジ。これは事例としては、月額性からフリーミアムにしたり、買い切りからサブスクにしたり、PCだけの配信だったのがマルチプラットフォームにしたり、海外展開したりといった大きなチェンジが伴うことも同様です。

純粋に露出媒体や流入経路も大きく増やせますので、コンテンツ内容がしっかりしていて課金要素が揃っていれば復活できる可能性は高くなります。

ただ同様に、月額からフリーミアムにして爆死していったゲームは根本のゲームがフリーミアムモデルにくこみまれていないことが多く、そこを見誤ったために開発指針も収益も総崩れしていったタイトルも見てきました。

そもそも月額モデルとフリーミアムのアイテム課金ではユーザーがフローを感じる部分も違えば、開発指針も異なりますので、一長一短ではい無料モデルにして復活!ってことにはなりません。


2つ目の復活要因はコンテンツの創り込みを総力上げて行うケース。

事例ではメギド72、プリンセスコネクトは実質作り直し+新規リリースですが、それに近いぐらいの開発投下量と大きなバージョンアップを粘り強く行うケースです。

しかしこれを行ったからといって必ずしも復活、成功するとは限りませんから、だいたいは下火になり始めたら企業側がストップをかけます。故に赤字ながらも粘り強く開発して復活できる事例というのが少ないのですが、それでもやりきった事例としてはメギド72、逆転オセロニア、ドラゴンエッグ、クラッシュフィーバー辺りはそれに近いのかもしれません。

この辺りは会社側の判断もよく粘りきったなというところもありますし、そこを愚直にやり続けた開発陣にも敬意を評したいところです。


PS

いずれにしても、一度死んだゲームを復活させるにはどうしたらいいのか? それに直面した開発陣、スタッフは本当に大変だと思いますが、まずは各種数字の見直し。ボトルネックのあぶり出し、成功、復活したタイトルの取り組み事例の調査、研究、ヒヤリングをするところから開始するほかないですね。

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