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スタンリー・キューブリック「時計じかけのオレンジ」(1971)

 ううむ、これぞ悪の芸術なのだろうか?久々に背徳を堪能させてもらった。しかも、137分はまあまあ長かった。とにかく主演のマルコム・マクダウェルの不敵な笑顔がなんともチャーミングで不気味だ。少しハリー・スタイルズにも似ている。これが英国の美男子顔なのか。

 前半の主人公の悪事の数々は痛快だが残酷で、不良少年たちの隠語も行動もリアルで怖い。もはや自分が襲う方でなく、襲われる方に感情移入してしまうのも年齢的に致し方ないのだろう。つまり、若者ならまったく違う感想を持つのではないだろうか。ちょっと残念だ。
 結構ショッキングな展開なので、大学の講義には適さないのだろうなあ。と、途中からイマドキのコンプライアンスとの整合性について考えていた。しかし、実際の人生はおそらくこの映画に近くて、正義が勝つなんてことは滅多にないし、この映画が暴いているように権力者の偽善も悪なのだ。2020年に米国議会図書館に半永久保存が決まったそうで、つまり名画という評価がされている。

 映像については独特の色彩感覚とセットデザインが、現代アート風で面白い。部屋もバーも牢獄も病院も、とにかくインテリアデザインが素晴らしい。そして会話をしている登場人物の撮り方が教科書通りでわかりやすい。威圧してくるもの、腹に何か企んでいるもの、怒っているもの、拒絶しているもの。。。

 主人公を見て感じたのは、どんな状況であっても「不屈なるものは強い」ということだ。アレックスの爪の垢を煎じて飲まなきゃならんのは、私なのかもしれない。

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