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岩井俊二「スワロウテイル」(1996)

 空前の円安の今、「円高で世界中の人々が『円』を稼ぎに来る日本」という舞台設定が、もうシュールというかSFのようだ。そうか、そんな時代もあったんだね。

 ストーリーはともかく、日本語、英語、中国語がちゃんぽんで出てくる会話は、ユニークだった。大学時代の恩師の鈴木孝夫先生が「日本語を話すのが、日本人だ」とおっしゃっていたと記憶するのだが(間違っていたら、ごめんなさい)。

 そういう意味では、日本語しか話せない設定の外国人顔とか、日本語が話せない設定の日本人役者とか、「言語」と「容姿」のアンバランスが生み出すカオス感はちょっと面白かった。
 役者も発音をよく練習している。特にCHARAの中国語の発音は、すごく上手だと思った。音楽と語学(発音)には接点があると昔から感じているが、本作でもそれが証明された気がする。

 映像は手持ちカメラが多用され、ドキュメンタリー風に色々動かしているのだが、監督の目線というか「狙い」が伝わってこない。行き当たりばったりに撮っている感じが半端ない。スコセッシの映像からは、監督の強烈な「狙い」「見せたいもの」「計算」が伝わってきてわかりやすかったのだけれど。

 役者は当時のビッグネームが勢揃いしていて「岩井俊二」というブランドがすごかったことはよくわかった。でも、それだけでは良い作品は作れない、そういう一例なのだろうか。

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