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まちづくり会社中条中学校社のあゆみ(中編その2)

胎内市立中条中学校3年生がまちづくり会社中条中学校「社」として地元商店街の活性化に取り組んできた本プロジェクト。
いよいよ中学生達が各課に分かれ、動き出したところで暗雲が漂ってきたのが前回まで。
今回は、アウトプットに至るまでを書き留められたらと思っている。


さらなる暗雲が

前回、学校から「現場NG」が出たことにより、どの課も一回も商店街を見ることなくアウトプットの制作がスタートしてしまったことを記した。
実はこのとき、さらにまずい状況になっていたのだ。
それは、新型コロナウイルス感染症の問題から、中学生達は参加者が大勢集まるイベント当日には出席できない、という事態である。

最もまずいのは、ガイド課のメンバーも当日はガイドできないという状況だ。

学校としても苦渋の判断であったし、正しい判断だと私も思った。だから、先生と私達でどうしたらプロジェクトを成立させられるか一緒に考えた。

悩み考えた末に、
大人がコースの道案内をやりつつ、ポイントポイントでの名勝等の解説は、中学生達が事前に現地で収録した動画をタブレット等で流して参加者に見せよう!
ということになった。

非常に残念だったが、天災では仕方がない。アウトプットまでのプロセスと当日のフィードバックを充実させようと関係者で誓い合った。

何とかして現場に!


現場を一回も歩いていないガイドが考えたまちあるきコース。
撮影は全て大人が代行して制作するプロモーションビデオ、ウェブサイ、フライヤー。

このままプロジェクトを進めて行くと、世にも恐ろしいことになるなんとか状況の打破が必要だった。

とそのとき先生から朗報が。
「120人一気には無理でも『各課単位』であれば、現場に出られそうです。」というもの。順繰りでもいい!何とか現場に出したい!それにはどうすればいいんだ!?
ということで、各チームのアウトプットまでの行程を検討し直し、「各課が重複せず」「作業の滞りを最小限に抑え」現場に出られるよう改めた。

当面はピンとこないままでも良いからアウトラインだけでも制作を進め、現地を見られた段階で各課とも巻き返しを図ろうと考えた。

ようやく本当の意味でスタートを切れた。と思った記憶がある。
以後はアウトプットまでの各課の制作過程を時系列に沿って記していきたい。

7月16日

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さて、夏休み前最後の時間だったのだが、ようやく現場に出られる目途がついたところで、制作工程2回目のこの日は、各チームには以下の作業をやってもらうことにした。

ガイド課
ガイド台本づくり

フードコーディネート課
お弁当企画書づくり

ウェブデザイン課・フライヤー課
ウェブ・フライヤーのラフづくり

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フォトグラファー課
現地で撮影!!

プロモーションビデオ制作課
構成表・絵コンテづくり

この日のトピックスは何といってもフォトグラファー課が現地に行くことができたことである。幸運なことに天気にも恵まれ、撮影日和となった。
生徒たちは、自分のクラスのコースの抑えるべきポイントを中心に撮影を進める。

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本町商店街界隈は、プロの大人達がさんざん撮影してまわっている地域である。しかし、生徒たちは大人が撮っていない独特な構図を抑えたり、先生をモデルに歩かせて撮影したりと、生き生きと楽しそうに撮影を進めていく。「あーやっぱり現場って良い」と強く思った。
と、ここで気づいたことがある。
本来であれば、この前段階で一度専門家から現地を案内してもらい、撮影に臨んでもらう予定だった。
生徒たちは、僕がつくった動画の解説と紙の資料でしか商店街を知らないはずだ。
それにしては、撮影すべきポイントでしっかり撮っている。そして何より、自分たちなりに何かを発見しカメラを向けている。

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(生徒たちがとってきた写真)


そうなのだ、「よく分からない」状態だったからこそ、彼らは商店街を自分たちなりに分かろうとしていたのだ。現地で専門家が1から10まで名勝地を案内していたら、もしかしたらこうはなっていなかったかもしれない。
前半によく分からない状態でコースづくりをやったことが、逆に良い影響をもたらしたのだと考えている。

この「分かろうという欲求」はフォトグラファー課だけでなく、この後、他課でも多く見受けられた。「分からない」から生まれた「分かろう」とする主体性だったと思う。

というわけでこの日のフォトグラファー課は撮れ高も十分。次回以降にウェブやフライヤー課に良い写真を供給できる目途がたった。

8月27日

夏休みが明けて制作工程3回目。
この日は現場にでる課はなく、各課とも教室での作業となった。

ガイド課
ガイド台本づくり

フードコーディネート課
お弁当企画書づくりの直し

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ウェブデザイン課・フライヤー課
フォトチームの写真を用い、ウェブはgoogle siteをフライヤーはgoogleスライドを用い、入稿データ作成。

フォトグラファー課
前回撮影した写真をウェブ、フライヤー両課に供給
写真編集ソフトを使用し、写真のレタッチ作業

プロモーションビデオ制作課
構成表・絵コンテづくり

ウェブ・フライヤー両課は募集スケジュールの都合上、他課よりも若干早めにアウトプットしなければならない。この段階でソフトを使用した段階に移行できたのは良かった。


9月3日


制作工程も4回目。この日は

ガイド課
台本を基にガイドの練習(学校でchromebookで撮影してみる)

フードコーディネート課
お弁当の巻紙(パッケージ)をイラストで制作

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ウェブデザイン課・フライヤー課
アプリケーションソフトを使用しての制作作業

フォトグラファー課
まちあるき当日に参加者に配布するコースのパンフレットを制作
フォトグラファー課は制作工程冒頭に作業が集中してしまい、素材撮りが一旦おちついたところで、当日配布するパンフレットづくりを新たなミッションに加えたのだが、募集告知用のSNS投稿等の運用を彼らにまかせ、投稿の計画づくりや、文面案を考えてもらうなどの選択肢もあったと省みている。

プロモーションビデオ制作課
現地で撮影!
この日はプロモーションビデオ制作課が現地に出て、動画の撮影を行った。
事前に絵コンテを作っていたためか、どの班も比較的順調に撮影していたと記憶している。

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PV班のメンターである神田も同行してくれ、画角の決め方など細かにアドバイスを出してもらった。
時間内に取り切れなかった動画のあるクラスもあったが、新型コロナウイルス感染症もだいぶ落ち着いてきたこともあり、日を改めて再度収録しよう!ということになった。
このころになると、課単位であれば現場に行くことが許容される様になる。
「もっかい現場いきたい!」という課も現れ、生徒の主体性の芽生えが感じられるようになる。「お店でラーメン食べてる映像が欲しい!」など、商店街の大人達に協力を取り付け、撮影に臨む班も出てきた。
以後は、まさに会社のように、各課が自分たちの進捗に合わせて、教室で作業をしたり、現場に出たりしていた。
私はこの日以降、4クラス内のそれぞれの課が総合の時間にどこで何をやっているか、正確に把握することができなくなった(笑)。

とは言え、生徒たちだけで外出させる訳にはいかないから、先生や地域連携コーディネーターさんが付き添ったり、商店街の各お店と調整したりなど、子どもたちの活動を支えていたのだ。

9月17日


制作工程5回目。この日は

ガイド課
現地にてガイド動画撮影!

フードコーディネート課
お弁当の巻紙(パッケージ)をイラストで制作

ウェブデザイン課・フライヤー課
アプリケーションソフトを使用しての制作作業
この日にフライヤー課は初校をメンターである僕に送って来たが・・全てのクラスでやり直しに。


フォトグラファー課
まちあるき当日に参加者に配布するコースのパンフレットを制作

プロモーションビデオ制作課
いよいよ編集作業!

満を持してガイド課が現場に出た。
なんせこれまで1回も外に出ず、ガイド原稿等を制作してきたのだ。
時間の許すかぎりギリギリまで撮影していた。

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ここでも、生徒たちの主体性が垣間見えた。僕が撮影に同行していた班はこの日、順調に撮るべきものをとり、撮影を終えていた。
ところが数週間後に僕が見た彼らの完成版のガイド動画が、この日撮影したものよりも工夫を凝らしたすごく分かりやすく、そして楽しいものになっているではないか!
これは予想でしかないのだが、彼らは、この日撮影した映像に満足せず、撮り直している。「現場に出て撮影してみたら、ちょっと思ってたのと違った。もういっかい撮りたい!」ってなったのではないかと考えている。もしかしたら1回の撮り直しではなく、2回、3回繰り返しているチームもあるかもしれない。

10月1日


制作工程6回目。
ここまで来ると各課ともアウトプットに向けて詰めの作業である。
現場に行かなければ行けないチームは現場に行き、教室で作業しなければ行けないチームは教室で作業するなど、画一的な動きはしていなかった。まさに会社の様に、自分たちの課のタスクをこなしていた。

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(作業が煮詰まると私たちもよくやるやつ。)

ガイド課撮影のやり直し、ガイド動画の編集作業


フードコーディネート課
お弁当巻紙の修正、お弁当に込めた思いのパンフレット制作

ウェブデザイン課・フライヤー課
アプリケーションソフトを使用して制作作業
フライヤー課のフライヤーがついに校了。印刷工程に回し。
ウェブデザイン課のウェブページは、僕から直しの指示が出て完成はこの1週間後の10月8日になった。

フォトグラファー課
まちあるき当日に参加者に配布するコースのパンフレットを制作

プロモーションビデオ制作課
撮影やり直し、動画編集

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ここで、ウェブとフライヤーがついに完成にこぎ着けた。
両課とも彼らの完成度によって参加者が集まるか集まらないかを左右する重要なセクションだった。
誤解をおそれないで言うなら、本町通り商店街は中学生にとっては「映え」ない地域である。そうしたなか、ガイド課とコミュニケーションをとりながら何とか魅力を伝えようと、考えを巡らせ、作業をやりぬいた彼らの努力は結実する。
彼らが制作したウェブとチラシによって、大勢の参加者が集まるのであるが、それはもう少し先の話。

10月8日

制作工程7回目。
ウェブとフライヤーのチーム以外は各自必要な作業を実施。
ウェブデザイン課・フライヤー課
刷り上がったパンフレットを持って、商店街・駅・市役所などを手分けして訪問し、本番である11月21日のPRを開始。まさに営業マンである。ウェブ・チラシともローンチし、ついに本番のイベントへの参加者募集がスタートした。
そして、この1週間後にはプロモーションビデオ制作課の動画が完成し、SNSを通じて配信されたほか、募集WEBページからも閲覧できるようになった。


怒涛の終盤。いざ本番へ!

ここからは一気に本番である11月21日までの主なトピックスを記していきたい。

ガイド課の動画が仕上がったのは11月18日(木)だった。撮り直しがあったり、自己紹介動画を入れたりと、昼休みや放課後の時間も活用し最後の最後までクオリティを上げる努力を怠らなかった。

まちあるきとセットとなるお弁当が完成したのは、11月12日。
生徒たちはパートナーとなった割烹料亭さんの元をおとずれ、現物を見る。

他の部署は本番の準備として、受付看板の制作、まちあるきの感想を聞くためのアンケートの制作等に取り組んだ。

さて、ここで完成にこぎつけたお弁当のチームについて、本番前に少し触れておきたいと思う。
実は、今回お弁当を作っていただく上で料亭・割烹様に1点お願いをしていた。
それは

「中学生のプロジェクトだからといって特別サービスしないで欲しい」


ということ。金額を2,000円(税込)に設定し、原材料費、人件費等を含めても各料亭割烹さんにしっかりと利益が出るお弁当にして欲しいとお願いした。実際の商売がシビアであることも中学生達に伝えたかったのだ。
料亭・割烹さん達は、この意図を汲んでくださり、プロジェクトの終了までずっと伴走をしてくださった。中学生がお弁当の企画書を料亭・割烹さんに提出→料亭・割烹さんから修正指示→中学生が企画書を提出・・・といったキャッチボールを何回も交換していただいた。
各課の中で最もOKが出なかった部署になったが、それが生徒たちの学びと充実感に繋がったと思う。暖かく導いていただいた料亭・割烹様に心から感謝である。
そして、何度ものやり直しを経て完成にこぎ着けたフードコーディネート課の頑張りを称賛したい。

次回はいよいよ本番!

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すべての課のアウトプットが出そろい、あとは本番を残すばかり。
この会社の使命「本町通り商店街に賑わいを創出せよ!」は実現できたのか?
そして、気になる各課のアウトプットの出来は!?ガイド動画が受け入れられるのか!?
長くなったのでそれはまた次回。
今回も長文にお付き合いいただき、感謝申し上げる。

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